12AV5PPアンプ   平成24年12月25日 


12AV5PPアンプ
このアンプは平成27年2月にOPTをCRD−8に変更して改造した。改造後のページはここ


《 はじめに 》
 島根県のTS氏が使用していた12AV5×4SEPPOTLアンプの点検を依頼された。 とりあえず1KHZサイン波を入力して測定を実施したところ、まともな波形を維持できているのは1W程度であり、最大出力1.5Wであった。
 そこで、このアンプの部品を出来るだけ流用してPPアンプを製作することになった。

《 使用部品 》
 使用されていた電源トランスの2次側巻線は340V500mA、14V1A、25.2V1.2A、25V50mA×3、160V100mA(電流値はいずれもAC推定値)である。 このトランスを使用して12AV5PPを製作する場合、B電源の容量は十分であるが、前段用のヒーター電源が確保できない。 14Vをブリッジ整流してDC12.6Vとして供給することも可能であるが、今回は別にヒータートランスを使用した。
 OPTは春日のKA6635Q(1次側インピーダンスPP間5KΩカソード巻線付)を採用することにしたが、これには理由がある。マルチの低音用として使用する予定のため、DF値をある程度大きくする必要がある。 しかし、12AV5のSG最大電圧は175Vであるため、3極管接続、あるいはUL接続とするには上記PTではB電圧が高すぎる。 そこで、出力段は5極管接続でカソード帰還を併用することにし、カソード帰還用巻線がついている手ごろな製品を探したところ、KA6635Qが見つかった。 ただし、このOPTは1次最大インダクタンス30Hの定インダクタンス型と思われるので、低域特性がどの程度になるか不安もあった。
 CHコイルはノグチPMC-228Hを使用、シャーシーは奥澤のO−4の両サイドに水性ニスで仕上げた木板を、底部には通風口を空けた1.5oアルミをゴム足とともに取り付けた。

《 回路構成 》
 初段は6EJ7(3結)、位相反転段は12AU7によるカソード結合型で平凡な回路となった。 前段用B電源は340Vブリッジ整流コンデンサー入力により446Vを供給、出力段は340Vブリッジ整流CH入力で307Vを供給した。 12AV5のSG電圧は6CW5(3結)による定電圧回路により160Vまで下げて供給した。
 前段のB電源はこれほど高くする必要はないが、12VA5のドライブ電圧は自己バイアス分が23V弱、固定バイアス分が3V弱、カソード帰還電圧のピーク値が18V強、合わせて44V近くが要求されるため、300V未満では苦しくなる。
 出力段のバイアスは10%固定バイアス、90%自己バイアス折衷方式で、実質バイアス電圧は約25Vである。 また、プレート電流測定用としてカソードに3Ω2Wを挿入した。

《 最大出力、測定結果 》
 入力0.54Vで17W強の最大出力が得られたが、最大プレート損失11Wの球にしてはまずまずである。 無信号時における実質プレート電圧281V、SG電圧137V、プレート電流33mAで、プレート損失は9Wである。 片CH最大出力時のプレート電流は50mAに増加するが、プレート電圧、SG電圧の低下は3Vに収まっている。これはPTの容量とCH入力の効果と思われる。
 周波数特性は90KHZで−3dBとなり、まずまずの特性である。パワーバンドワイズは50HZ〜20KHZで10Wを超えているが、20HZでは中域の15%程度まで低下し、シングルアンプと同じような傾向を示している。
 NFB10dB、残留雑音は0.11mV、DFは9.5であった。100HZにおける雑音歪率があまり芳しくないがOPTのインダクタンスが小さい影響と思われる。
 使用したOPTは個々の特性にバラツキがあり、しかも高域のバランスが少し悪いと思われる。 今回はドライブ上段のプレート回路に積分型位相補償回路を挿入して調整したが、左右でその値が異なっている。また初段プレートに挿入した積分型位相補償回路も左右で異なっている。 その結果、10KHZ歪率は左右で同じようなカーブを描いているが、矩形波応答でははっきりと差が出ている。

《 ロードライン、対カソードSG電圧の検討 》
 下図は12AV5のSG電圧をパラメーターとしたプレート特性である。 カソード帰還巻線による負荷の増加(1250の平方根と8の平方根の和を2乗した値:1458Ω)を考慮した無信号時のロードラインとEC1=0Vのプレート特性を赤線で示している。
 この図では137Vの対カソードSG電圧は少し高過ぎ、130V程度が丁度良いと思われる。 しかし、最大出力時の対カソードプレート電圧、SG電圧の低下(どちらも3V)とプレート電流増加によるカソード電圧の上昇(11V)を考慮したロードラインは青線の位置に移動する。 その時の最適対カソードSG電圧は125V程度と考えられ、実機では最大出力時の対カソードSG電圧は124Vとなっている。
 青線のロードラインに基づいて計算した最大出力は(268−37)×0.16/2≒18.5W、OPTの効率を90%とすれば2次側最大出力は16.6Wとなり、実測値を少し下回っている。 その理由については次の《 その他 》の項を参照。




《 その他 》
 カソード帰還回路は通常の5極管接続と異なり、対アースSG電圧は一定値であるが対カソードSG電圧はカソード帰還により変動する。 マッキントッシュアンプではSG電源が反対側のプレートに接続されているため、対カソードSG電圧は一定に保たれて通常の5極管動作をしている。 このときSG電源をB電源に接続したものがBogenアンプであり、50%のUL接続となる。
 今回のカソード帰還型PPアンプはBogenアンプと比べてカソード帰還用巻線数がかなり少ないがUL動作をしていると見做すことが出来る。 巻数比から計算すれば7.4%のUL接続と考えられる。(8の平方根÷1458の平方根×100=7.4%)
 25%程度以下のUL接続ではSG電流による出力増が期待できる。 今回のアンプでは計算上の最大出力16.5Wが17W以上に増加していることから5%程度の出力増加となっている模様である。



内部配線



背  面

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