12AV5(3結)AB1級PPアンプ2号機   令和2年6月28日 


12AV5(3結)AB1級PPアンプ2号機


《 はじめに 》

 平成28年に試作機として製作した12AV5(3結)PPアンプは長期安定動作するか十分検証する前に分解してしまった。 そこで再度検証するため12AV5(3結)アンプ2号機を製作する。
 下表は6AV5の最大定格(設計中心値)であるが、スクリーングリッド電圧の最大値は175Vである。 また、水平出力管としてのプレート損失は11W、スクリーングリッド損失2.5Wである。 前作は、プレート損失が11W以下となるように調整したが、プレート面積から考えて最大11Wは明らかに小さすぎる。
 前回は気が付かなかったのであるが、A1級増幅の規格ではプレート電圧250V、SG電圧150V時のプレート電流57mA、スクリーン電流2.1mAとある。 この動作例で計算すればプレート損失は14.25W、SG損失0.315Wとなり、プレート損失は11Wを超えている。
 また、2A3と6AV5を比較すると、3定数がほとんど同じで、相違点はプレート損失とスクリーングリッド電圧である。

  2A3  Ep/Pp=300V/15W、 μ=4.2、gm=5250、rp=800Ω
  6AV5 Ep/Pp=550V/11W、 Esg/Psg=175V/2.5W、 μ=4.3、gm=5500、rp=782Ω

 プレート損失についてはプレート面積から推定して 6L6、6L6G、6L6GA などと同等の19W程度まで許容されるのではないかと思われる。少なくとも15Wは問題ないであろう。 


《 使用部品 》

  
 シャーシーはKMQ−60の再利用であるが、ボンネットは無しである。 アルミ製シャーシー天板に錆が発生していたのでサンドペーパー処理後、シルバーメタリック塗装を施した。 電源トランスは黒色つや消しスプレーで再塗装、チョークコイルはラックス製4BC−1.3のケースにノグチトランス製PMC−0930H(0.9H300mA)をシリコンシーラントで封入して使用する。 電源トランスと同じく黒色つや消しスプレーで再塗装を施した。残念ながら、ラックスの銘板はない。
 12AV5は前作ではシルバニア製を使用したが、今回はRCA製を使用する。ガラスサイズと内部電極サイズはほぼ同じであるが、見た目が少し異なっている。

《 回路構成 》

 B電源は250V220mAをセンタータップ整流し327Vを供給する。 また、固定バイアスは65〜70Vが想定されることから工夫が必要である。 2組ある6.3V1.2A巻線を直列にし、両波6倍圧整流して−86Vを供給する。
 初段は12AU7を使ったSRPP、位相反転ドライブ段は6FQ7を使ったカソード結合型とする。 出力段はHVTC理論に基づいて3極管接続とする。

《 最大出力、測定結果 》

 無信号時のプレート電圧325V、バイアス電圧67〜70Vの条件で約15W(1KHZ)の最大出力が得られ、2A3の動作例とほぼ同等の結果が得られた。 その時の入力電圧は1.1V、最大出力時のプレート電圧は314Vであった。
また、無信号時のプレート入力は12.35W、スクリーングリッド入力は0.75Wであった。 最大出力時のスクリーングリッド入力は1.1Wどまりで最大損失の50%未満に収まっており、全く問題ない。
 周波数特性は90KHZで−3dBとなり、まずまずの特性である。それ以上の帯域でも目立ったピークやディップは発生していない。 パワーバンドワイズは30HZ〜35KHZで10Wを超えている。 100HZ、10KHZのひずみ率が少し悪化しているが、10Wまで0.8%未満であった。1KHZは0.35%未満。
 NFB6.3dB、残留雑音は0.2mV未満、DFは3.5〜3.7であった。クロストーク特性も問題ない。 前作と比較してNFBが少ないため歪率は少し悪化し、DFも小さくなった。

《 その他 》

 完成してから1か月間、全く問題なく動作している。 12AV5は廉価で入手できるので3極管接続シングルアンプに挑戦したいと考えている。



内部配線



背  面

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