2A3 AB1級PPアンプ3号機  令和3年3月22日 


 2A3 AB1級PPアンプ3号機


《 はじめに 》

 このアンプは岡山のH氏からの依頼で製作したもので、私自身にとっては3台目となる2A3PPアンプである。

《 使用部品 》

 シャーシーはゼネラルトランス製S−283(400×250×60)にシルバーメタリック塗装を施し、両サイドには水性ニスを塗った木板を取り付る。
 OPTはハシモトトランス製HW−40−5、電源トランスはタンゴ製MS−360、CHコイルはタンゴ製MC−3−350とゼネラルトランス製PMC−1006Hを使用する。 MS−360は2A3PPアンプに特化したトランスである。
 出力管はプスバン製2A3B、初段はソブテック製ECC83、ドライバー段はUSA製5814Aを使用する。

《 回路構成 》

 初段はECC83のSRPP、位相反転段は5814Aによるカソード結合型とする。
 2A3の固定バイアス動作例ではP−P間3KΩ負荷、プレート電圧300Vの条件で最大出力15Wとなっている。 PP間5KΩのOPTでは最大出力が少し低下すると思われる一方、ひずみの低下が期待できる。
 出力段用B電源は240Vをブリッジ整流して327Vを供給する。 前段用は330Vをブリッジ整流して464Vを供給する。 バイアス用マイナス電源は80Vをブリッジ整流してマイナス87Vを供給する。
 無信号時、2A3プレート電圧は324V、プレート電流は40mAでプレート損失は12.96Wである。 2A3Bの最大定格は最大プレート電圧320V、許容プレート損失20Wと推定できるので、十分余裕の動作と思われる。
 直熱管PPではプレート電流測定用の低抵抗がカソード側に取り付けできないので、DCバランスの検出が難しい。 B1とB2が分離されているOPTではB電源とOPTのB端子間に低抵抗を挿入することができたが、HW−40−5のB端子は分離されていない。 HW−40−5の1次巻き線抵抗は良く揃っていたので今回はB端子、プレート端子間の電圧を測定して調整する方式とする。 カタログ値では61Ωとなっているが、実測したところB−P1間58Ω、B−P2間57.4Ω(気温10℃)であった。 使用時は温度上昇に伴い61Ω前後に落ち着くと思われる。
 B−P1巻線抵抗値、B−P2巻線抵抗値の差が0.6ΩであることからP1−P2間電圧差を0.024V(P1<P2)に設定すればアンバランス電流0mAとすることが出来る。 0Vに設定した場合でもアンバランス電流は1mA未満となるので十分である。

《 最大出力、測定結果 》

 1KHZにおける最大出力は入力0.6Vで14.2Wが得られた。 OPTの効率を考慮すれば15.8W程度が得られている計算である。 負荷抵抗を3KΩではなく5KΩとしたことによる出力低下よりもプレート電圧をかさ上げしたことによる出力増加が上回る結果となった。
 20HZにおける最大出力は中域の約92%程度得られている。さすが40W型OPTである。 NFBは11.7dB、残留雑音はLch0.75mV、Rch0.95mV、DFは9.5であった。
 残留雑音が少し大きいが、残留雑音は比較的きれいな60HZ波形を示しているためかSPに耳を近づけてもほとんど感知できないレベルである。
 ハムバランサーを調整したとき、残留雑音最小位置と歪率最小位置が異なっていた。直熱管PPアンプではよく見られる現象である。 今回は歪率最小位置にセットした。
 残留雑音最小位置にセットした場合、100HZの歪率は3倍程度に増加した。 一方、ひずみ率最小位置では残留雑音が2倍程度に増加するが、SPに耳を近づけても感知できないレベルであった。
 周波数特性では270KHZ以上で小さなディップやピークが発生している。 HW−25−5を使ったアンプでも同じような傾向を示していた。ハシモトトランス製OPTの特性ではないだろうか。 また、容量負荷時の矩形波応答では0.47μF並列時にリンギングが発生していが、どちらも影響はないと思われる。
 クロストーク特性ではR→Lのデータがほぼ−82dB、−85dBで一定となっているのは残留雑音の影響を受けているためである。

《 その他 》

 トランスの重量が大きく、1.5mmのシャーシーでは強度が不足したので、中央にアルミアングルを取り付けた。
また、B、P1、P2端子をシャーシー上に取り付け、バイアス調整、バランス調整用VR、ハムバランサーもシャーシー上部から調整できるように取り付けた。 これにより、テスターとマイナスドライバーがあればアンプをひっくり返さなくてもメンテナンスが可能となった。
 直熱管アンプの交流点火ではSWオン直後にハム音が出力されて不快である。 このアンプではタイムリレーを取り付け、SWオン後10秒間は22Ωを出力トランス2次側(16Ω−0Ω)に挿入し、 タイムリレーONで22Ωを切り離すと同時に出力トランス0Ω端子と出力端子COMが接続されるように設定した。



内部配線



背  面

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