5687PPアンプ    令和2年4月28日 


5687PPアンプ


《 はじめに 》

 このアンプは茨城県のT氏から小出力で電力感度の低いPPアンプが欲しいとのご希望に沿って製作した。

《 使用部品 》
 主要部品は右表のとおりである。
 シャーシーは奥澤のO−17にサンドペーパーを当て、アルミ用シルバーメタリック塗装し、両サイドには水性ニスで仕上げた木板を取り付けた。
 電源トランス、出力トランスともに少々オーバースペックである。

《 回路構成 》

 電力感度を低くするため、2段構成とする。初段は12AT7による差動型位相反転回路、出力段は5687による準差動型PPである。 PMC130Mにはヒーター巻き線として6.3V2Aが2組装備されているが、初段差動回路用マイナス電源の確保が問題である。
 そこで6.3V2A2組を初段と出力管に振り分け、出力管用の6.3Vを半波倍電圧整流とし、マイナス電源を確保する。
 出力段は自己バイアスとプラス電圧による固定バイアスの折衷型とする。 バランス調整はプラス電圧を加える変則的な回路とし、実質バイアス電圧は10.5V程度となった。
 出力トランスはP−P間8KΩではAB1級動作になり、ひずみが多くなる。そこで、4Ω端子に8Ω負荷を接続し、1次側16KΩとする。
 しかし、これでは4ΩSPが接続できないので、2次側端子の16ΩとCOMを入れ替える変則的な接続とする。 こうすれば6Ω−16Ω端子に4Ωを接続した時の1次インピーダンスは13.3KΩとなって都合がよい。
 8Ω、4Ω負荷時の最大出力は以下のとおりである。4Ω負荷時の方が少し出力が大きくなる。OPTの効率93%で計算。

  8Ω負荷 (228V−112V)× 0.04A ÷ 2 × 0.93 = 2.16W (P−P間16KΩ)

  4Ω負荷 (228V−95V)× 0.037A ÷ 2 × 0.93 = 2.28W (P−P間13.3KΩ)

ちなみに、P−P間8KΩ時の計算は以下の通りで、最大出力は大きくなるが、ひずみはかなり多くなる。

       (228V−118V) × 0.056A ÷ 2 × 0.93 = 2.86W (P−P間8KΩ)



《 最大出力、測定結果 》

 入力1.3Vで2.2Wの最大出力が得られた。 無信号時のプレート実効電圧は228V、プレート電流は13.5mA、プレート損失は3.08Wで最大定格3.5Wの88%となった。
 周波数特性は85KHZで−3dBであった。500KHZより上では少しあばれがあるが問題はない。 パワーバンドワイズは20HZ〜13KHZで2Wを超えている。余裕のある出力トランスを使用した結果、低域特性は優秀である。
 NFB8.7dB、残留雑音は0.05mV、DFは5.4であった。 雑音歪率は100HZ、1KHZ、10KHZで良く揃っている。

《 その他 》

 定電流ダイオードはE−452を使用したが、ピンチオフ電圧が約−3.7Vで少し大きい。 それに接続するマイナス電源が小さい場合、ひずみが増加するので注意が必要である。 このアンプでも最初は6.3Vの半波整流としていたが、ひずみが多く最大出力も1W強しか得られなかった。
 初段のプレート電圧に少しばらつきが発生しているが、出力管と直結にしていないので問題なく動作している。



内部配線



背  面

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