5998APPアンプ  平成20年11月22日  




  1. はじめに
     先日、千葉県のM本氏から中古パワートランスを頂いたので、このPTを利用したアンプを製作することにした。 しかし、このPTのB電源用としては195V巻き線(推定容量AC1A)1組のみである。 1個のみではOTLアンプは組めない。また、PPアンプとしても電流容量に不足はないが、ブリッジ整流では少し電圧が低すぎ、倍電圧整流では500V以上と高すぎる。
     そこで思いつたのが、5998APPである。これならばちょうど良い電圧(260V程度)であるが、今度はドライブ段が苦しい。 そこでドライブ段供給電圧をかさ上げすれば何とか使えるのではと考えた。
     なお、M本氏からは12AX7(T)松下製、6SN7(マツダ、RCA、シルバニア製)と年代物のUSソケットも頂いたので、すべて活用させていただくことにした。

  2. 回路構成
     ドライブ段へは別トランスから31Vを倍電圧整流してかさ上げする変則的電源となったが、この方式により5998Aのバイアス電源も確保可能となり一石二鳥である。 出力段B電圧262V、ドライブ段B電圧333Vとなった。しかし、ドライブ段の実効プレート電圧は240Vしか得られていないため、−45Vのバイアスである5998Aのドライブはぎりぎり状態である。 しかし、オシロで波形を観測した限りでは、出力クリップ開始がドライブ段クリップ開始よりも僅かに早いようである。
     回路方式は初段12AX7(T)SRPP、ドライブ段には6SN7カソード結合型位相反転、出力段の5998APPは自己固定折衷型バイアス方式である。 自己バイアスのみではバラツキの大きい5998Aの直流バランスが取れないため折衷型とした。自己バイアス分25V固定バイアス分20Vである。 なお、固定バイアスのみでの使用はあまりお勧めできない。

  3. シャーシー
    OPTにFW50−5を使用したため、シャーシーはSL−20を使用した。最大出力から考えてOPTはFE25−5で十分であるが、その時はもう少し小さくできる。
     例によってSL−20は新品ではなかったので、天板のみホームセンターで購入したアルミ板(t=1.5)にゴールドメタリック塗装を施して使用した。
     しかし、大型OPTを載せたステレオアンプは重く、OTLアンプの約3倍(20Kg)あるため、持ち上げるのが大変である。

  4. 測定結果
     NFBが14.5dBと多いので、100HZ、1KHZの歪率はかなり良好であるが、高域補償回路が効き過ぎている影響で10KHZ歪み率は良くない。それでも7.5W辺りまでは1%以内に収まっている。
     容量負荷時の10KHZ矩形波は、同じFW50−5であっても36LW6PPアンプよりは変化が少ない。0.1μFではほとんど変化なし、0.47μFで少しオーバーシュートが現れるのみである。 80KHZでマイナス3dBであるが、RCHのみ165KHZにディップが発生している。これはOPT特性のバラツキと思われる。
     なお、残留雑音はRch、Lchとも0.1mV未満、DFは17.4(ON−OFF法)であった。

  5. 最大出力
     クリップ開始出力は11W/8Ωである。最大出力の小さいアンプに大型OPTを使用した効果は大きく、低域10HZにおける最大出力は中域の84%に達している。

  6. その他
     5998Aは6080族と比較してバラツキは少ないようであるが、ドライブ電圧が低いことは大変有利である。 しかし、最高プレート電圧が275Vであるため、その制限内ではドライブ段出力電圧が不足する。 そのため、B電圧を嵩上げするか、高圧別電源を用意しなければならない。ドライブ段に6SN7ではなく12AU7を使用したのではドライブ不足となるところであった。
     なお、使用した容量不明のパワートランスは、長時間使用しても発熱が少ないので、もう少し余裕があるかも知れない。



内 部 写 真

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