6BQ5ULAB2級PPアンプ  平成28年11月11日 


 6BQ5ULAB2級PPアンプ


《 はじめに 》
 武末数馬氏の著書(真空管アンプの設計と製作下巻)に6BQ5ULPPで最大出力30Wが得られる製作例が掲載されている。 プレート電圧を388Vまで高めた設計で、6BQ5の最大定格を90V近く上回っている。
 この状態で5年間故障などもなく動作していたとのことであるが、果たして安全かどうか追試することにした。 部品配置はMQ‐60(KMQ−60)を参考にし、前面中央に電源トランス、左右の後部に出力トランスを配置する。

《 使用部品 》
 シャーシーは奥澤O−6(400×200×40)を使用する。 シルバーメタリック塗装し、左右には木製ニスを塗った板を内側からビス止めする。
 OPTはノグチトランスPMC−28P‐8K、電源トランスは山水PV−145、チョークコイルはラックス4BC−1.3を使用する。
 前段使用球はすべて12AU7(松下、NEC、JJ)で、手持ちの中から選別する。出力管の6BQ5(松下製)も手持ちの球から選別する。

《 回路構成 》
 初段は12AU7のSRPP、位相反転段は12AU7のカソード結合型とし、カソードフォロアー段も12AU7である。 今回はドライブ電圧が低いので、カソード抵抗に定電流ダイオード(E−202)を使用する。
 PV−145には32Vのバイアス用電源が用意されているが、少し不足すると思わる。 そこで余っている6.3Vを直列にした38.3Vをブリッジ整流する。 B電源は125Vの倍電圧整流とする。
 無信号時のプレート電圧345V、SG電圧347Vでプレート電流(SG電流を含む)が31mAになるようにバイアス電圧を調整した。 その時のバイアス電圧は−13.4V〜−13.8Vに収まり、中古品としては良くそろっている。
 プレート損失とSG損失を合わせて10.7W程度であるから、プレート損失12W、SG損失2Wである6BQ5としては安全領域と思われる。
 6BQ5の規格表によればプレート電圧300V時の最大出力は17Wであるが、UL接続時の最大出力は13W程度に低下すると思われる。 また、最大出力時のプレート電圧を330Vとすれば、最大出力は約30%増加する。
 さらにAB2級としたことによる最大出力の増加を25%、OPTの効率を90%とすれば、このアンプの推定最大出力は下記の通りとなる。

   13×1.3×1.25×0.9≒19W

《 最大出力、測定結果 》
 1KHZにおける最大出力は入力0.75Vで18Wが得られた。 上記計算値を少し下回ったが、グリッドプラス領域での出力が頭打ちとなっている影響と思われる。 しかし、小さな6BQ5で6L6GCのUL接続に匹敵する出力が得られた。さらにB電源タップを上げれば25Wまで最大出力が増加する。
 20HZにおける最大出力は中域の70%が得られ、まずまずの低域特性である。 NFBは11dB、残留雑音はLch0.25mV、Rch0.2mV、DFは5.4であった。
 周波数特性では110KHZと400KHZ付近に小さなピークが発生しているが、10KHZの矩形波応答にもその傾向が表れている。
 クロストーク特性は中域では90dB以上取れているので十分である。
 10KHZの歪率データが100HZ、1KHZと比較して悪いが、それでも1Wで0.06%、10Wで0.5%以下に収まっている。

《 その他 》
 VRから初段までの配線に2芯シールド線を使用し、外被を初段カソードに接続している。 これによりシールド線の長さが異なっていても同様の高域特性が得られる。
 チョークコイルは多数の傷や錆があったので、サンドペーパーで処理したあと、つや消し黒色スプレーで塗装して使用した。



内部配線



背  面

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