6CH6CSPPアンプ   平成24年12月25日 


6CH6CSPPアンプ


《 はじめに 》
 このアンプはARITO@伊吹南麓氏のHPに触発されて製作したマッキントッシュ型CSPPアンプである。

《 使用部品 》
 OPTは染谷電子製ASTR-20、電源トランスはノグチPMC-150M、CHコイルはタンゴ3H250とノグチPMC-1060を使用した。 シャーシーは奥澤O−8であるが、表面仕上げが奇麗なので塗装なしでも使用に耐える。 例によって両サイドに水性ニスで仕上げた木板を、底部には通風口を空けた1.5oアルミをゴム足とともに取り付けた。
 出力管には英Brimar製6CH6を使用する。CSPPではドライブ電圧が非常に大きくなるため、少しでも電力感度が高い球を使用した方が良い。 特に8KΩ負荷時は帰還電圧が高くなる。下表は6CH6PPの動作例である。

6CH6PPの動作例(カソードバイアス)
プレート電圧
250V 
スクリーン電圧
250V 
プレート電流
80mA
スクリーン電流
12mA
最大出力時スクリーン電流
17.5mA
カソード抵抗
50Ω 
P-P間負荷抵抗
9000Ω 
G-G間入力電圧
9V 
最 大 出力
8.0W 
歪    率
7.5% 

《 回路構成 》
 初段で12AX7による差動型位相反転し、ドライブ段は上段6AQ8、下段12BH7によるSRPPである。 CSPPではOPT1次側出力電圧の1/4がカソードに帰還されるため、ドライブ電圧が非常に高くなる。 最大出力を9Wと見積もった場合の帰還電圧は67Vとなる。(8000Ω×9Wの平方根の1/4) これに正味の入力電圧5Vを加算すればドライブ電圧は実効値で72V、ピーク値で102Vとなり、最大出力10Wのアンプにしてはとんでもない値である。 このドライブ電圧を供給するためには500V近いB電源を必要とする。
 PMC-150のB巻線には290V、320V、350Vのタップがあり、350Vタップを使用すれば500V近い電圧が得られる。 しかし、出力段用には290Vを使っても高すぎる。更に巻線電流容量も不足している。それを一挙に解決する方法が320VのCHインプット整流である。
 しかし、実際に組んでみると350Vをコンデンサー入力方式で整流した場合、整流直後の電圧が電解コンデンサーの耐圧(500V)を超えてしまった。 そこで、ダイオードと電解コンデンサーとの間に180Ω3Wを挿入し、490Vに下げた。 また、ドライブ段供給電圧はあまり下げたくないので10H60mACHコイルをフィルター回路に使用した。
 更に、320VをCH入力としても少し電圧が高すぎて6CH6の最大定格を10Vほど超えてしまった。 290Vタップを使用した方が規格表通りの電圧に近くなるが、少々の超過は眼をつぶり、最大出力の増加を期待することにした。
 初段と直結にする場合、初段プレート電圧は出来るだけ低い方がドライブ段の動作が楽になるため、デカップリング抵抗値などの回路定数は細かく設定しなければ十分なドライブ電圧は得られない。 また、SRPP下段(12BH7A)のプレートカソード間電圧は出来るだけ高くしなければ高いドライブ電圧は得られない。 そのためには共通カソード電圧を低くすればよいのであるが、初段はCRDで1ユニット当たり0.5mAに縛られているため、あまり低くすればバイアスが浅くなり、グリッド電流の影響を受ける。
 このSRPPでは実効値90V(ピーク値127V)以上の最大出力電圧が得られているが、6BQ5PPでは少し不足するようである。 その場合は電源の電解コンデンサーの耐圧を上げて対応するなどの対策が必要である。

《 最大出力、測定結果 》
 入力0.8Vで10Wの最大出力が得られたが、上記規格表のプレート電圧より35Vほど高いためと思われる。
 プレート電圧を250Vから285Vに上げた時の最大出力はプレート電圧比の2.5乗に比例することから下記計算式で求めることが出来る。

   8W×(285V/250V)^2.5=11.1W

 さらにOPTの効率を90%とすれば2次側最大出力は10Wとなり、実測値にほぼ一致する。
 また、プレート電圧が最大定格をオーバーしているため、無信号時のプレート損失を7.2W程度に抑えている。最大プレート損失12Wに対して60%である。
 使用したASTR20は非常に高域特性が優れていて、過度の高域補償にも関わらず周波数特性は60KHZで−3dBとなり、500KHZ付近のピークも小さい。高域はかなり素直に減衰している模様である。
 パワーバンドワイズは50HZ〜18KHZで10Wを超え、20HZでは中域の60%程度が得られている。カップリングコンデンサーを0.22μFに交換すればもう少し低域が伸びるであろう。 時定数10μF・KΩでは15.9HZで約70%のドライブ電圧(−3dB)しか得られない。そのため、ドライブ電圧が高い場合は出力段よりもドライブ段が先に飽和することになるので注意が必要である。
 NFBは10dB、残留雑音はLch0.11mV、Rch0.06mV、DFは16であった。5極管接続であっても強力なカソード帰還により大きなDF値が得られている。 また、歪率は概ね5W付近まで0.1%を下回り、良好である。

《 その他 》
 マッキントッシュ型CSPPではSG電源が反対側のプレートに接続されているので、対カソードSG電圧は一定に保たれて通常の5極管動作をしている。
 HK間耐圧の関係でSRPP上段に使用した6AQ8のヒーターはアースに接続してはならない。(このアンプでは1μFでアース) また、出力管6CH6のHK間耐圧が90Vであるため、これまた安全のためヒーター非接地で使用しているが、残留雑音の増加等は見られない。
 なお、CHコイルの3H250はコンデンサー入力用の製品であるため、電源投入直後に一瞬「うなり音」を発生するが、定常状態ではほとんど気にならないレベルに下がる。



内部配線



背  面

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