6FM7AB1級PPアンプ  平成30年3月29日 


 6FM7AB1級PPアンプ


《 はじめに 》

 家庭で使用するアンプの最大出力は5Wもあれば充分である。 出力5Wであれば2A3のA2級、300B、6CA7(T)シングルなどが候補に挙がるが、今回はPPアンプとする。

《 使用部品 》

 シャーシーは奥澤O−6(400×200×40)を使用し、配置はMQ−60スタイルとする。 本体はシルバーメタリック塗装を施し、側板と裏蓋(通風孔、ゴム足付)を取り付ける。
 OPTはタンゴCRD−5、電源トランスはラックス4A58Bを使用する。4A58Bは錆が浮いていたのでサンドペーパーで処理してから黒つや消し塗装を施して使用する。 チョークコイルはラックスC−1744(0.9H260mA)を使用する。
 初段にはRCA製6SJ7、ドライバー段と出力段にはシルバニア製3極複合管である6FM7を使用する。 6FM7はコンパクトロン12Pの小さな球で、初段の6SJ7よりも背丈が低い。 価格はペアーで@2000円と比較的安価である。

《 回路構成 》

 初段は6SJ7の3極管接続、位相反転段は6FM7第1ユニットによるカソード結合型とする。
 出力段の6FM7第2ユニットPPはプレート電圧300Vで使用すれば10W以上の出力が得られるが、許容プレート損失が10Wのためあまりプレート電圧を高くするとB級動作とせざるを得ない。 そこでB電源を工夫して低電圧PPで構成し、OPT2次側16Ω端子に8Ωを接続し1次2.5Kで製作する。
 4A58Bには136V0.7Aと45V−CT−45Vの巻き線が装備されている。 136Vは倍電圧整流用であるが、ブリッジ整流して出力段用とする。 その他は90Vブリッジ整流をかさ上げして供給する。バイアス電源はかさ上げ部分から分圧して供給する。 0.7Aをブリッジ整流したときの最大出力電流は440mAとなり、かなりのオーバースペックである。
 無信号時、6FM7(U2)の実質プレート電圧は174V、バイアス電圧−26V、プレート電流は40mAでプレート損失は約6.96Wとなる。 許容損失10Wの70%である。
 下図は6FM7第2ユニットのプレート特性図上に625Ω(P-P間2500Ω)のロードラインを記入したものである。



 最大出力時のプレート電圧が低下することを考慮して最大出力を計算すると

   (169−76)×0.145÷2 ≒ 6.74(W) と計算できる。

 さらに、OPTの効率を90%とすれば 6.74×0.9 ≒ 6.07 (W) となる。

《 最大出力、測定結果 》

 1KHZにおける最大出力は入力0.3Vで5.8Wが得られた。上記計算値を下回った原因は16Ω端子に8Ωを接続したときのOPT損失が思った以上に大きいのかもしれない。
 20HZにおける最大出力は中域の90%程度が得られたが、最大出力が小さいことと、低内部抵抗管(930Ω)による効果と思われる。 CRD−5の定格は15W(40HZ)23W(50HZ)となっている。 NFBは10dB、残留雑音は両ch共0.5mV、DFは6.6であった。
 高域遮断周波数は70KHZで、それ以上は比較的なだらかに減衰し、目立つようなピークやディップは発生していない。 10KHZ矩形波応答も良好である。クロストーク特性は−84dBと良好である。
 10KHZの歪率データが100HZ、1KHZと比較して悪いが、1Wでは0.2%未満に収まっている。

《 その他 》

 VRから初段までのシールド線外皮を初段カソードに接続しているため、出力ラインの配置により、高域のクロストークが悪化する場合があるので注意が必要である。 このアンプでは左CHのシールド線と右CHの出力ラインの位置関係が問題である。
 当初、初段へのデカップリング抵抗15KΩ、初段プレート負荷抵抗100KΩとしていたところ、ウォームアンプ直後に小さなポップノイズが発生していた。 そこで、デカップリング抵抗を68KΩ、プレート負荷抵抗を51KΩに交換したところ、ポップノイズは発生しなくなった。 初段のプレート電圧の立ち上がりを少し遅らせた結果と思われる。




背  面

内部配線



裏  面

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