UY−807(3結)AB1級PPアンプ
平成26年2月11日
UY−807(3結)AB1級PPアンプ
《 はじめに 》
平成25年に東芝製UY−807ペアーチューブを3セット入手していたので、PPアンプを製作することにした。
元々、UY−807はトッププレートのビーム管で送信管として製造されたものと思われるが、オーディオ用としての使用例も多い。
内部電極の形状は6L6Gとそっくりである上に高電圧以外の動作例もほぼ同じであることから、6L6(G)をトッププレートに変更したものではないかと想像できる。
UY−807はプレート電圧を750VのAB2級プッシュプルとすれば100W以上の最大出力が得られる球であるが、今回は3極管接続で最大出力12〜13Wで設計する。
3極管接続プッシュプルの動作規格は以下の通りである。
上の表によればプレート電圧400V、P−P間負荷抵抗3KΩで15Wの最大出力となっている。2A3プッシュプル固定バイアスとほぼ同じである。
《 使用部品 》
OPTはノグチトランス製PMF-28P-8K、電源トランスは松下製真空管カラーTV(昭和40年代)から取り外したものと手持ちのヒータートランス6.3V2.6A×2を使用した。
CHコイルはノグチトランスPMC-228Hを使用した。すべてUZ−42ULPPアンプからの流用である。
ヒータートランスは807が0.9A×2、EF−86が0.2A、12AU7が0.3A×2で丁度100%の負荷となっている。
ケースは奥澤製O−4の側面に水性ニスを塗った板を取り付けたものを使用したが、UZ−42ULPPアンプに使用していたものにシルバーメタリック塗装を行って再利用した。
《 回路構成 》
初段はEF−86の3極管接続、位相反転段は12AU7(パラ)によるカソード結合型である。
パラ接続としたのはシャーシーを流用したために20mmの穴が余ったため、12BH7A、6CG7等であればパラにする必要はない。
807の3極管接続はP−P間3KΩ負荷であるため、OPTの2次側16Ω端子に8Ω負荷を接続しP−P間4KΩ負荷とした。
3極管では負荷抵抗を大きくした方が低歪となって好都合である。
B電源は300Vをブリッジ整流してB電源電圧410Vを供給した。
バイアス用マイナス電源は11.3Vを両波4倍圧整流してマイナス70Vを供給した。
上図は807(T)のプレート特性図に最大出力時プレート電圧(394V)を基点にして1KΩ(P−P間4KΩ)のロードラインを記入したものである。
この図から最大出力を計算すれば以下の通りで、動作例を僅かに下回る。
(394−220)×0.17÷2=14.79(W)
さらに、16Ω端子に8Ωを接続する使用法では定損失が1.5倍に増加することを考慮すれば0.7dB(効率92%)程度と思われる。
その時のOPT2次側最大出力は13.6W程度と推定出来る。
14.79×0.92=13.6(W)
最大出力時のプレート電流が少し抑えられているので、無信号時のプレート電流は動作例よりも少し多く40mAに設定した。
《 最大出力、測定結果 》
入力0.65Vで12Wのノンクリップ最大出力が得られた。いずれも1KHZの値である。
上記計算値を少し下回っている原因はグリッド電流の影響を受けていると思われる。
20HZにおける最大出力はほぼ中域と同程度が得られ、低域特性はなかなか優秀である。
残留雑音はLRchとも0.25mV、DFは5.8であった。
周波数特性では高域のピークやディップは小さく、10KHZ矩形波応答も比較的良好である。
クロストーク特性はかなり良好で、残留雑音の影響を排除すれば中域では100dB以上は取れていると思われる。
10KHZの歪率データが100HZ、1KHZと比較して悪い原因は、初段に挿入した高域補償回路の影響と思われる。
《 その他 》
PMF−28P−8Kの添付文書にはOPT1次インダクタンス500Hと記載されているが、どうも信用できない。
1次インダクタンス値の測定条件、最大最少値、定損失などの記載もなく非常に不親切である。
必要があれば自分で測定しろと言うことだろうか。
このアンプは少し高感度アンプのため、プリを使用する場合はVRを少し絞った方が使い勝手が良い。
UY−807は東芝製新品のペアーチューブを使用したが、一度DCバランス調整を実施した後は気持がよいほど安定していた。
内部配線
背 面
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