12BH7AパラPPアンプ
平成22年3月20日
12BH7AパラPPアンプ
《 はじめに 》
昨年、40年前のコロンビア製セパレートステレオのアンプ部を譲り受けて分解した。出力段は6BM8PPでカバー付きバンド型OPT(一応分割巻き)が使用されていた。
1次インピーダンスは5KΩ、容量は10Wと思われるので、このOPTを使った小型PPアンプを製作することにした。
《 使用部品 》
シャーシーはリードのS−4に底板を加工して取り付けたもの、電源トランスはB電源容量が80mAのInstant P−504、CHコイルは小型100V/24V(1A)トランスを改造したものを使用する。
変圧器は単にコイルを直列にしてもCHコイルとしては使えないので、鉄芯を分解しコアーの継ぎ目に空隙を設けた。
インダクタンスは1H程度と思われるので、シングルアンプではインダクタンス不足であるが、PPアンプであれば十分使用できるであろう。
平滑用ブロック電解コンデンサー(40+80+10μF450V)は40年前のカラーTVに使用されていたものであるが、容量抜け等の症状もなく十分使用出る状態であった。
今回はダイオードではなく整流管(6CA4)を使用した。この球のヒーターカソード間耐圧は500Vあり、他球と共用することが出来るので便利である。
《 回路構成 》
6BM8PPも考えたが、面白くないので12BH7APPとした。単管PPも可能であるが、1次インピーダンス5KΩではロードラインが立ちすぎてしまうのでパラPPとする。(PP間10K相当)
また、出力段をA級自己バイアスとしたのではB電源容量が少し不足となる。やむなくAB級固定バイアスとし、1ユニット当りのプレート電流は7mA(プレート損失2.1W)に設定する。
初段は12AX7、位相反転段も同じく12AX7のPK分割方式と平凡な回路構成である。
最初、12AX7のロードラインの検討も行わないでPK分割回路の抵抗値を51KΩとしていたが、適正なバイアス(−1.5V程度)の時のカソード電圧が40V前後と低くなっていることに気がついた。
初段プレート電圧はそれより低くしなければならず、プレート供給電圧を100V付近まで下げなければ直結部分の電圧配分が上手く調整出来ない。
しかし、プレート供給電圧100Vでは初段出力電圧が低くなってドライブ電圧が不足する。
改めてロードラインを引いて検討した結果、100KΩに変更すればカソード電圧が90V程度まで上昇し、初段の供給電圧も150Vまで上げることが出来ることが判った。
簡単なPK分割位相反転回路と思っていたが、12AX7では意外と難しいものである。
12DW7、7247等の複合管(12AX7/2+12AU7/2)の存在意義はこの辺りにあるのかもしれないが、あまり出回っていないのが現状である。
PK分割回路ではプレート側とカソード側の出力イピーダンス異なるため、高域で歪が増加する。この状態を改善するためにカソードに20PFのコンデンサーを挿入した。
また、12BH7Aのマッチングをとるためにカソード側抵抗を大きくしている。
12BH7Aのグリッドの寄生発振防止用2.2KΩは必須である。この時、グリッド側リード線は5mm程度に短くしてソケットに半田付けしなければ意味がない。
《 最大出力、測定結果 》
最大出力は4.1W(クリップ開始)が得られた。NFBは11.5dBであるが、OPTの性能から見てこの程度が限界ではないだろうか。
残留雑音は0.1mVとかなり優秀であるが、歪は少し多い(特に10KHZ)アンプとなった。
小型OPTにも関わらず低域は思った以上に伸び、高域は120KHZで−3dBと良好である。周波数特性にほとんどピークは発生していない。
しかし、10KHZサイン波形の観測では2.5Wを過ぎた辺りからクリップではなく波形そのものが崩れ始める。これらはすべてOPTの性能によるものではないだろうか。
10KHZ矩形波応答はお世辞にも綺麗とは言えないが、容量負荷時の変化は比較的少ない。NFBを現状以上に増加すると盛大にリンギングを発生し、少々の位相補償では収まりがつかなくなる。
《 その他 》
今回使用したOPTで高域の歪が多い原因は巻き線構造によるものではなく、鉄芯材料による磁気歪ではないかと思われる。現在販売されている廉価OPTはどうであろうか?
また、1次インピーダンスが10KΩのOPTを使用すればもう少し低歪とすることが出来る。
ヘッドホンジャッグは過大入力を避けるため抵抗分圧式で取り付けた。
夜静かに聴くには丁度良いアンプに仕上がった。
内部配線
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