双ビーム管FU−29(829B)B級PPアンプ   平成28年6月15日 


双ビーム管FU−29(829B)B級PPアンプ

《 はじめに 》

 平成27年1月に自作した双ビーム送信管829BPPアンプは負荷抵抗6.6KΩではひずみが多く、低域のパワーが得られていなかった。 OPTを交換し、829B同等管である中国製FU−29を購入して製作した。
 この球の最大定格とAB級PP動作例は下記の通りである。最大プレート損失が30Wとなっているが、この値は両プレート損失の和であり、1ユニットでは15Wである。
 ここで問題となるのは最大スクリーン電圧が225Vであること、負荷抵抗が13.75KΩと大きいことである。
 1次14KΩ50WクラスのPP用OPTは販売されてなく、10KΩが最大である。1次14KΩはプレート電圧600V時の値であるから、プレート電圧を400V程度に下げれば8KΩ程度でも使用できると思われる。
 更に、各ユニットのスクリーン電極とカソード電極はそれぞれ管内で接続されているため、UL接続、カソード帰還も使用不可である。

《 使用部品 》

 OPTはタンゴCRD−8、パワートランスはタンゴMX−280、CHコイルはノグチPMF−228H、ケースは奥澤O−4を使用する。
 このOPTはオークションで落札したものである。FU−29(829B)用ソケットはフロービス、プレートキャップはアポロ電子で入手できる。 ただし、プレートキャップは真空管本体よりも高価である。

《 回路構成 》

 初段は12AU7AによるSRPP、位相反転段は6CG7(6FQ7)カソード結合型である。 出力段FU−29のスクリーングリッド電圧は6CH6(3結)とZDで206Vに安定化して供給する。
 下のFU−29(829B)のプレート特性図上にプレート電圧を410Vとして8/4=2KΩのロードライン(紫線)を引いてみた。
 Ec=0Vラインとロードラインの交点を元に最大出力を計算すれば、下記の計算式の通り約30Wが得られることになる。

   (410−66)×0.179/2≒30.8(W)

 バイアスは−20V〜−25V程度となるので、初段に12AU7を使用しても、かなりの高感度アンプになると思われる。
 また、前作はプレート電圧434V、プレート電流23mA、プレート損失10Wでもプレートが薄っすらとピンク色になっていたので、今回はプレート電流を20mAに下げ、ほぼB級動作とする。 



《 最大出力、測定結果 》

 入力0.62Vでほぼ計算通り30Wの最大出力が得られた。しかし、入力感度が高すぎて少々使い辛い状態である。
 しかし、20HZの最大出力が中域の20%程度しか得られていないことから、改造前と比較してあまり変化はない。 出力容量25W(50HZ)のCRD−8でこれ以上の低域特性は無理である。 ビーム管接続ではもっとインダクタンスの大きい大型OPTを使用しなければ低域特性が良くならないと思われる。 DF値は3.1、残留雑音はLCH0.13mV、RCH0.15mVであった。
 容量負荷時の10KHZ矩形波応答はまずまずの特性である。 クロストーク特性も良好で、歪率特性はかなり改善されたが、右CHの低出力時の歪率が少し悪い。これの改善には球の交換が必要と思われる。
 改造前の 回路図測定データ

《 その他 》

 FU−29(829B)の許容プレート損失は15Wであるが、10W程度のプレート損失でもプレートがほんのりピンク色に変わる。 RCA規格表のCCS(連続使用)では21W/本(10.5W/ユニット)となっているので、無信号時のプレート損失8.7Wでしばらく様子を見ることにした。今のところ赤熱は発生していない。



内部配線



背  面

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