ラックスキットKMQ−60改造アンプ   平成19年9月13日 


ラックスキットKMQ−60改造アンプ


《 はじめに 》

 今年8月にラックスキットKMQ−60の修理を行ったが、その時2台のKMQ−60が持ち込まれた。 1台はオイルコンデンサーの交換と一部回路の変更でほぼ完璧な状態に戻すことが出来た。 しかし、もう1台はOPT(OY15−5)2個と電源トランスが不良とひどい状態であった。 (写真参照)
 使用できるのはケースとCHコイルのみかと思われたが、電解コンデンサーが使用可能であった。 幸いにも50CA10を12本入手出来たので、このアンプを蘇らせることにした。

《 使用部品 》

 電源トランスは昭和39年製の真空管カラーTVに内蔵されていたものが使用出来そうである。 このトランスにはB電源用として300V(DC400mA)、ヒーター巻き線として6.3V(2A)と5V(1A)しか装備されていない。(電流は全て推定値) 30年近くお蔵入りしていたがようやく出番が回ってきた。 バンド型のかなり大きなものであり、取り付け金具を一部加工して取り付けた。
 以前、SQ−38FDのOY−15−5をFE−25−5に交換した時、位相補償回路を変更しなくてもそのまま使用できたので、今回もFE−25−5を採用することにした。

大量のピッチがもれ出たOPT

《 回路変更部分 》 (回路図参照)
  1. KMQ−60のパワートランスには70Vのバイアス用巻き線があったが、このトランスには無い。そこで、ブリッジ整流回路からダイオードに掛かる逆方向電圧をフィルムコンデンサーと抵抗で取り出してバイアス電源を確保した。(回路図参照)
  2. 元設計では初段のデカップリングコンデンサーは共通となっていたが、RL別々に改造する。それにより余った47μF500Vは出力段用に追加する。
  3. 50CA10の電流監視用としてカソードに1Ω2Wの抵抗を挿入する。
  4. 初段を6AQ8SRPPに、ドライバーは12BH7Aに変更した。元設計では初段は6267の3結、ドライバー段は6AQ8である。
  5. OPT1次側に接続されていた高域局部帰還回路は取り除き、初段プレートに積分型位相補償回路を挿入する。
  6. 一般に、カソード結合型位相反転回路では下段のプレート負荷抵抗を少し大きくして調整するが、元設計では同じ値(33KΩ)が使用されていた。 上段負荷抵抗並列に可変抵抗器を挿入し歪の最下点を探り、RCHは33KΩと168KΩ並列(27.6KΩ)、LCHは33KΩと130KΩ並列(26.3KΩ)とした。 これは球が変われば再調整の必要な箇所である。RLで値が異なっている理由は出力管のペアーマッチングが取れていないからである。
  7. KMQ−60(MQ−60)では、入力VRから初段グリッドまでの配線が少し変わっている。 一般に寄生発振防止のため、初段グリッドに直付けで抵抗を取り付けるが、このアンプはVRから33KΩを直列にし、2芯シールド線でグリッドまで配線されている。 しかも、シールド線外皮は初段カソードに接続されている。 今回もこの方式を採用したが、VRから初段までの距離に差があると高域特性に差が生じるため、シールド線を同じ長さに揃えた。

《 最終調整 》

 B電源電圧が410Vと少し低くなったので出力段のプレート電流を少し多く45mAに調整した。
 最終的な性能は1KHZに於けるクリップ開始出力28W、NFB17dB、残留雑音はRCH0.02mV、LCH 0.04mVと低レベルである。 初段とPTとの距離が2cmと少なく、雑音の増加を危惧していたが、まったく問題ない。 B電圧が少し低目にもかかわらず最大出力がほとんど低下していないが、OPTの損失が少ないこと、PTの電流容量が大きく最大出力時のB電圧が5V程度しか低下しないためである。 10KHZ矩形波の乱れは少ないが、高域位相補償による10KHZ歪み率悪化の影響が少し現れている。



背面


内部配線











LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

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