直結カソードフォロアードライブUZ−42ULPPアンプ  平成26年2月2日 


直結カソードフォロアードライブUZ−42ULPPアンプ


《 はじめに 》
 昨年、名古屋のY氏から7C5、UZ−42、6V6GT、6L6GCなどの多数の出力管を頂いた。UZ−42は10数本あったので、今回はそれを使ってPPアンプを製作した。 UZ−42のプッシュプル動作規格は以下の通りである。



 上の表によれば5極管接続A1級PPで11W、AB2級PPで18.5W、3極管接続AB2級PPで13W(いずれも固定バイアス時)となっている。
 5極管接続では内部抵抗が大きい。また、3極管接続AB2級PPでは61.5Vのピークドライブ電圧を必要とする等、なかなか使いこなしが難しい球である。 元来、UZ−42はトランスドライブを想定して設計されたのではないだろうか。

《 使用部品 》
 OPTはノグチトランス製PMF-28P-8K、電源トランスは松下製真空管カラーTV(昭和40年代)から取り外したものと手持ちのヒータートランス6.3V2.6A×2を使用した。 CHコイルはノグチトランスPMC-228Hを使用した。
 UZ−42は簡易バルブチェッカーにソケット変換アダプターを使用して選別し、松下製1本、マツダ製1本、ベスト真空管製2本で2ペアーを組むことができた。 ベスト真空管の底部にはそれぞれ昭和29年、昭和30年との印字があり、60年近く経過していることになる。 前段部の12AU7はNEC、松下、東芝等であるが、これらも頂き物である。
 ケースは奥澤製O−4を使用し、側面には水性ニスを塗った板を取り付けたが、シャーシー本体は無塗装である。
 なお、今回使用したオールタイト製UZソケット(中国製)はシャーシーに直付けするとスパークの危険性があるので、ホールカッターで38mmの穴を空け4mmナット1個分だけ下げて取り付けた。 右の写真のような構造であれば直付けが可能である。

今回使用したオールタイト製UZソケット
スペーサーが不要なUZソケット


《 回路構成 》
 初段は12AU7SRPP、位相反転段も12AU7によるカソード結合型、カソードフォロアー段にも12AU7を使用した。 出力段UZ−42は低域特性から考えて5極管接続は除外し、3極管接続かUL接続にするか迷ったが、UZ-42のUL接続製作例が見当たらないことから今回はUL接続とした。また、UL接続の方が3結接続よりドライブ電圧が低くなるはずである。 それでもピーク値で約50Vのドライブ電圧が必要である。
 B電源は300Vブリッジ整流を試みたが、プレート電圧が400Vオーバーとなり最大定格を超えてしまったので、PT1次側を110Vに接続変えして370Vまで下げることにした。
 そこで誤算が発生した。バイアス電源、カソードフォロアー段マイナス電源は11.3Vを6倍圧整流してマイナス80V以上供給出来る予定であったが−72Vに低下してしまった。
 これではマイナス電源に挿入したZD(36V×2)がほとんど意味をなしていない。電源オン直後のみ効果を発揮している状態であるが、今回はそのまま残している。
 また、カソードフォロアー段に使用した定電流ダイオード(E202)の最大使用電圧は100Vであることと定電流動作が保てる範囲で計算すれば、ドライブ電圧のピーク値は最大でプラス側50V、マイナス側44V程度に制限される。 その時、UZ−42のグリッドはプラス16V付近までスイング出来る計算である。
 プラス側は何とかカバーできるがマイナス側は不足している。しかし、マイナス77V(バイアス電圧34V+ドライブ電圧マイナスピーク値)に振られた出力管はほとんどカットオフしている状態であるからとりあえず使用してみることにした。
 このように、定電流ダイオードを使用した直結カソードフォロアー回路をドライブ電圧が高い出力管に使用する場合は窮屈な設計にならざるを得ない。

《 最大出力、測定結果 》
 Lchは入力2.1Vで16.5W、Rchは入力2.2Vで17.4Wの最大出力が得られた。いずれも1KHZの値であるが、右chの方が少し大きい。 少しプレート電圧が高いのでOPTの損失を考慮すれば5極管接続AB2級と同程度の最大出力となった。最大出力時のプレート電圧は350Vである。
 20HZにおける最大出力は中域の50%弱しか得られていないが、段間の時定数を0.022μF×220KΩと小さくした影響が考えられる。 しかし最低域からのカーブをそのまま延長すれば40HZ28W付近を通過していることから、このOPTの限界かもしれない。
 残留雑音はLRchとも0.1mV未満、DFは3.2であった。
 周波数特性で120HZ付近と400KHZ付近に小さなピークが発生しているが、少し過度とも思える位相補償回路の効果で容量負荷時の10KHZ矩形波応答は比較的良好である。
 クロストーク特性はかなり良好であるが、残留雑音の影響を排除すれば中域では100dB以上は取れていると思われる。
 10KHZの歪率データがあまり良くない原因は初段に挿入した高域補償回路の影響である。取り外せば改善されるがリンギングが非常に多くなってしまう。
 また、Rchの歪率(100HZ、1KHZ)が出力1W未満で盛り上がっている理由は良くわからない。

《 その他 》
 今回使用したOPTの1次インダクタンスは500Hと記載されている。OPT1次インダクタンスはV/f=0.1の時の値が示されているのが一般的である。 しかも、動作状態ではその値の1/3〜3倍の範囲を変動することを考慮すれば166〜1500Hとなる。これは明らかに間違っていると思われる。 この大きさのOPTでは最大500Hと考えた方が一般的である。
 そこでスタガー比を計算するに当たり、最少56H、最大500Hと推定した。最近のトランスメーカーが発表している1次インダクタンス値は測定条件、最大最少値などの記載もなく非常に不親切である。 必要があれば自分で測定しろと言うことかも知れない。
 このアンプはかなりの低感度アンプではあるが、実際の使用時はプリアンプを接続するので全く問題ない。0.5Vで最大出力が得られるアンプよりは遥かに使い勝手が良い。



内部配線



背  面

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