直結カソードフォロアードライブ10Y(VT−25)シングルアンプ       令和5年4月17日 


直結カソードフォロアードライブ10Y(VT−25)シングルアンプ


《 はじめに 》
 オークションで1次10KΩの出力トランスと10Y(VT−25)を入手できたので、このアンプを製作する。
10Yの動作例とプレート特性図は下の通りであるが、プレート電圧350Vにおける最大出力は0.9W、425Vで1.6W程度で少し小さい。 そこでプレート電圧350Vと仮定して図上に10KΩのロードラインを引き、A2級ドライブしたときの最大出力を計算してみた。

  (510−140)×0.0375÷8=1.71(W)

 プレート電圧350Vでは1.7W程度しか得られない。もう少しプレート電圧を高く設定しても2W程度となる模様。





《 使用部品 》
 電源トランスは7.5V巻き線が必要となるが市販品の中にはかなり容量の大きな製品しか見当たらない。 そこで西崎電機特注品を使用する。
 OPTはカットコアー製で京都のS氏手作りのものを使用する。写真参照。裸では具合が悪いので鉄製ケースを取り付ける。 CHコイルも100mAの容量で十分であることからゼネラルトランス製PMF−1010H(10H100mA)を使用する。
 出力管の10Y(VT−25)はSYLVANIA製を使用する。 初段とカソードフォロアー段は東芝製6U8A、整流管は松下製80Kを使用する。80Kは傍熱型両波整流管である。  ケースは奥澤O−8(350×250×60)を使用し、シルバーメタリック塗装を施して、両サイドに水性ニスを塗った木板を取り付ける。

《 回路構成 》
 初段の6U8Aの5極部で利得を稼ぎ、6U8Aの3極管部で10Yを直結カソードフォロアードライブする。 出力管10Yはカソード抵抗1.7KΩによる自己バイアスであるが、ドライブ段を固定バイアスとし、出力管のバラツキを調整可能とする。
 整流管以外はすべてDC点火とする。 前面にはNFBをOn-Off出来るロータリーSWを取り付ける。

《 最大出力、測定結果 》
 1KHZにおける最大出力は無帰還時では入力0.19V、NFB5.5dB時では0.3Vで約2.15Wが得られた。 実機のプレート電圧は371V程度となったので2.5乘特性で計算すれば約2Wとなる。 20HZにおける最大出力は中域の33%程度まで低下しているが、シングルアンプとしてはまずまずの低域特性が得られた。
 周波数特性は10HZ無帰還で−4dB、NFB5.5dBでー2dB、高域は無帰還で37KHZ、NFB5.5dBで55KHZ付近でー3dBとなった。
 ひずみは少し多めであるが、直熱管の特有の先端が丸くなるクリップ波形を示していた。上段波形のクリップが発生する原因はカットオフしている影響である。 もう少しプレート電圧を高くし、プレート電流を多くすれば避けられる現象と思われる。 1KHZの歪率が100HZ、10KHZと比較して良好な特性を示していた。
 無帰還時の残留雑音はLCH0.24mV、RCH0.18mV、NFB5.5dBではLCH0.13mV、RCH0.11mVで非常に良好であった。 初めOPTを写真右側の向きで取り付けていたが、右CH無帰還時の雑音が1mVを超えていた。そこで写真左側の向きに変更したところ十分満足できる値に低下した。 電源トランスコイルとOPTコイルの軸を直交させた結果である。
 無帰還時のDFは1.6、NFB5.5dB時は3.7(ON/OFF法)であった。

《 その他 》
 トリウムタングステンフィラメントは煌々と明るく輝き、とても美しい。 使用したOPTは少し高域にあばれが見られたが、2個の特性は非常に良く揃っていた。 特性は満足できるものであった。



内部配線


背  面


京都のS氏手作りの出力トランス 左の配置は雑音小 右の配置は雑音大






LCH 8Ω 1W 矩形波 無帰還
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波 無帰還
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

LCH 8Ω 1W 矩形波 NFB:5.5dB
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波 NFB:5.5dB
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)














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