直結カソードフォロアードライブ2A3シングルアンプ7号機
平成30年10月9日
直結カソードフォロアードライブ2A3シングルアンプ7号機
《 はじめに 》
これまで多くの2A3シングルアンプを自作してきた。今回で15台目となるが、すべて直結ドライブ方式である。
2A3は入力容量が大きいため低インピーダンスドライブが要求され、またグリッド電流が流れやすので直結ドライブ方式が適している。
直結カソードフォロアードライブ、あるいは直結カソードCHドライブは上記2条件を満たす方法と思われる。
一般に直結カソードフォロアードライブはマイナス電源を必要とするため、回路的に少し複雑とならざるを得ない。調整も少し面倒である。
その点、カソードチョークドライブは作りやすいが良質なカソードCHが少し高価であることが難点である。
今回は直結カソードフォロアードライブで進めることにする。
《 使用部品 》
電源トランスはタンゴ製MS−160、OPTはTANGO製U−808、CHコイルもタンゴ製515(5H150mA)を使用する。
出力管はジムテック製2A3、初段とカソードフォロアー段はフィリップス製6U8A、整流管はソブテック製5U4Gを使用する。
ケースは旧スズラン堂製SL−8の天板を交換し、水性ニスを塗ったサイドウッド、ゴム足付き鉄製底板(純正)を取り付けて使用する。
《 回路構成 》
初段は6U8Aの5極部で利得を上げ、3極部を直結カソードフォロアーとして2A3を低インピーダンスドライブする。
2A3の負荷抵抗は2.5KΩが標準であるが、A2級アンプでは3.5KΩとしたほうが低ひずみ大出力が得られる。
下表は2A3のプレート特性図上に2.5KΩロードライン(青色)と3.5KΩロードライン(赤色)を記入したものである。
実測による動作点はプレート電圧247V、グリッドバイアス−40V、プレート電流55mA付近となった。
図上の位置とすこしずれがあるが、プレート特性カーブがもう少し寝ている影響と思われる。
それに基づきグリッド+20V〜−100Vまでドライブしたと仮定した場合の最大出力は下の計算式の通りである。
(410−20) × (0.122−0.008) ÷ 8 ≒ 5.56(W)
出力段のカソード抵抗800Ω(実測797Ω)の自己バイアスと固定バイアスとの折衷型とする。
カソードフォロアー段のバイアス電圧を調整することにより2A3のプレート電流を増減することが出来る設定とする。
B電源は280Vを両波整流として約320Vを供給する。クロストークを改善するため、デカップリング回路は左右別とする。
カソードフォロアー段用のマイナス電源は70Vを半波倍電圧整流し、約150Vを供給する。
《 最大出力、測定結果 》
1KHZでは入力0.85V時にノンクリップ最大出力5.3Wが得られた。上記計算値にOPTの効率を乗ずればほぼ一致している。
周波数特性では200KHZまでに目立つピークやディップは発生していない。
高域遮断(−3dB)周波数は65KHZ付近となった。また、容量負荷時の10KHZ矩形波応答も良好な結果が得られた。
低出力時の右CH歪率が 10KHZ<1KHZ<100HZ となっている原因は不明である。
3.5W以上ではひずみ率が1%を超えているが、クリップではなく先端が丸くなる偶数次歪が増加するためと思われる。
NFBは6dB、DFは4.9、残留雑音はLCH 0.4mV、RCH 0.25mVであった。
左CHは電源トランスの漏洩磁束を拾っていると思われるが、SPに耳をくっつけても全くの無音であった。
無信号時の2A3のプレート損失は13.6Wで、最大定格内に収まっている。
《 その他 》
巨大なアルミ缶は120μF500VのMP(メタライズドペーパー)コンデンサーで、OPTのB端子と2A3ハムバランサー中点間に挿入している。
このアンプのクリップ波形は傍熱管アンプなどと異なり、先端が丸くなる形となる。これが直熱出力管の音が好まれる所以かもしれない。
背 面
内部配線
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