直結カソードCHドライブ300Bシングルアンプ3号機   平成29年2月5日 


直結カソードCHドライブ300Bシングルアンプ3号機


《 はじめに 》
 このアンプは岡山県倉敷市のK氏から依頼されて製作したものである。 依頼主からの要望を取り入れて設計したが、過去に自作した直熱管シングルアンプと同様の回路構成となった。

《 使用部品 》
 OPTはタンゴ製U−808、電源トランスはノグチ製PMC−170M、CHコイルはラックス製6BC10、カソードCHは春日無線製70H60mA(受注生産品)を使用する。 シャーシーはタカチ製SRDSL‐20HGを使用する。
 初段はシルバニア製6SJ7、カソードフォロアー段は松下製UZ‐42の3極管接続、出力管はプスバン製300B、整流管はスベトラーナ製5U4Gである。

《 回路構成 》
 基本はカソードCHドライブによるA2級シングルアンプとなっている。 300BをA2級ドライブするためにはピーク値85V程度が必要である。初段のみで利得を稼がねばならないので6SJ7への供給電圧はできるだけ高くしなければならない。  最終的にはプレート負荷抵抗200KΩ、カソード抵抗1.2KΩ(1.1KΩ+100Ω)に、SG抵抗は330KΩにブリーダー抵抗100KΩを接続した。 これにより十分な出力電圧がえられ、さらに300Bとの歪打消し動作を行わせることができた。
 今回採用したカソードCH(春日製70H60mA)の直流抵抗は550Ωである。 カソードフォロアー段UZ‐42のバイアス電圧は−28V程度になる見込みであるが、CHコイルの抵抗分のみではバイアス電圧が不足する。 そこで直列に2.2KΩ(2W)を挿入して−30Vとし、可変抵抗器にて必要なバイアス電圧に調整している。
 300Bの実効プレート電圧は332V程度しか得られていない。ダイオード整流とすれば350Vが確保できると思われる。
   下表は300Aのプレート電圧300V、350V時の動作例である。プレート電圧を300Vから332V上げたときの計算が左の式、350Vから332Vに下げたときの計算が右の式となる。 このことからプレート電圧332Vおける最大出力は7W程度と推定計算出来る。





 出力段を自己バイアスとした場合、プレート対カソード電圧が300V未満となり、最大出力が低下するため半固定バイアスとした。 カソード抵抗による自己バイアス分22.7Vと固定バイアス分−41Vを合わせた−63.7Vが正味のバイアス電圧である。 その時のプレート電流は69mA、プレート損失は23W弱となった。

《 最大出力、測定結果 》
 1KHZでは入力0.85V時に最大出力8.5Wが得られたが、低域では少し低下している。 それでも、60HZから50KHZまでは5Wをカバーしている。 OPTの効率を93.5%とすればOPT1次側での最大出力は9.1Wと計算できる。 動作例から計算した最大出力7Wと比較して30%程度増加している。
 残留雑音は左ch0.65mV、右ch0.7mVで少し多めであるが、この程度であれば問題ないと思われる。NFBは5.5dB、DFは4.8(ON/OFF法)であった。
 容量負荷時の矩形波応答は比較的良好である。OPTの高域特性にバラツキが見られ、高域周波数特性に差を生じている。 歪率のカーブは左右、各周波数とも同じような傾向を示している。 クリップ波形は高帰還アンプのようにすぱっと切り取ったような形ではなく丸みを帯びている。
 40HZにおけるノンクリップ最大出力は中域の約60%程度が得られている。 クロストークは低域で少し悪化しているが、概ね75dB以上とれているので問題ない。中域で平坦になっているのは残留雑音の影響である。

《 その他 》
 前作と比較して最大出力がわずかに小さくなった原因はB電源整流に5U4Gを使用したことが影響している。 シリコンダイオード整流に変更すればも少し増加すると思われる。



内部配線

背  面





LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)












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