300B3段CR結合シングルアンプ5号機
平成29年9月6日
300B3段CR結合シングルアンプ5号機
《 はじめに 》
安くて高性能トランスであるタムラトランス製900シリーズは残念ながら販売が終了し、後継の900Aシリーズは50%ほど価格が上昇している。
幸い、販売終了前に購入していた900シリーズの手持ちがあったので、これらのトランスを使用した300Bシングルアンプを製作することにした。
《 使用部品 》
トランス類はすべてタムラ製で揃え、F−913、PC−940、A825を使用する。
シャーシーは奥澤製O−4にシルバーメタリック塗装を施し水性ニスを塗った側板を取り付ける。
奥澤製のアルミ板は400×250で、底板に使用すると少しはみ出るため使い勝手が悪い。
そこで底板には特注品を使用する。寸法は398×248 t=1.5で通気口、プラ足を取り付けて使用する。
初段と次段には松下製と東芝製の6FQ7(6CG7)を使用する。
300BはEHGold、整流管は日立製5U4GBを使用する。
《 回路構成 》
今回のアンプは3段増幅とし、直結部分はないため、低域時定数3段のアンプである。
300Bは直流点火したかったが、PC−940では電流容量が不足し無理である。
B電源は400Vタップを使用し、5U4GBで両波整流した。
出力段はカソード抵抗1.2KΩの自己バイアスとした。プレート対カソード電圧は358Vとなった。
その時のプレート電流は63mA、プレート損失は22.6Wである。この条件での最大出力は8W程度が予想される。
《 最大出力、測定結果 》
1KHZでは入力0.78V時に最大出力8.2Wが得られたが、低域では少し低下している。
それでも、35HZから24KHZまでは5Wをカバーしている。
OPTの効率を93.5%とすればOPT1次側での最大出力は8.8Wと計算できる。
動作例から予測した値と比較して10%程度増加している。
残留雑音は左右とも2mVでかなり多い。無帰還では8mVに達する。
周波数を測定したところ120HZであった。ヒーターからの残留雑音はハムバランサーできれいに除去できているにも関わらずである。
オシロで波形を観測すると整流回路からの残留リップル波形(3角波)ではなくサインカーブを描いている。
原因はフィラメントエミッションの変動と思われる。つまりヒーターが毎秒120回オンオフを繰り返している影響である。
この120HZは整流管を抜いてもかなりのレベルで発生していた。
電源オンと同時に8mVが出力され動作状態に入ると2mVに低下するが、その10秒間は非常に耳障りである。
そこで、タイムリレーを組み込み、電源オンから12秒後にダミー抵抗からスピーカーに切り替える回路を組み込んだところ、全く気にならなくなった。
(回路図参照)
スピーカーから50cm離れたら聞こえないのでこれで良しとする。
残留雑音を抑えるためにNFBは少し多めで11.8dBとした。DFは11(ON/OFF法)であった。
容量負荷時の矩形波応答は比較的良好である。
周波数特性は10HZで+0.5dB、100KHZで−3dBとなった。
周波数特性上に大きなピークやディップはみられないが、超低域にピークが発生していること、高域のグラフが少し不規則な変化をしていることなどが少し気になる程度である。
歪率のカーブは左右、各周波数とも同じような傾向を示している。残留雑音が多いため、最低歪率は0.1%を少し下回る程度で0.8Wから下では上昇している。
クリップ波形はサインカーブ下部のカットオフが早く始まっている。
20HZにおけるノンクリップ最大出力は中域の約37%程度が得られているが、シングルアンプとしては標準的と思われる。
クロストークは低域、高域で少し悪化しているが概ね良好である。中域のクロストーク悪化は残留雑音の影響だけではないと思われるが、原因は良く分からない。
それでも65dB以上とれているので問題ないと思われる。
《 その他 》
巨大なアルミ缶製のコンデンサーは120μF500VのMPコンデンサーで、OPTB端子とカソードの間に挿入している。
整流管を5U4Gに交換した場合、プレート電圧が低下して最大出力が低下し、5AR4に交換した場合はプレート電圧が上昇して最大出力は10W近くまで増加する。
シリコンダイオード整流とすればさらにプレート電圧を高くすることが出来るが、今度は電解コンデンサーの耐圧が500Vでは不足する事態となるので改造が必要である。
内部配線
背 面
|