直結カソードフォロアー5998Aパラシングルアンプ3号機   平成23年8月22日


直結カソードフォロアー5998Aパラシングルアンプ3号機


《 はじめに 》
 これまで直結カソードフォロアー5998Aパラシングルアンプは2台自作したが、A級シングルアンプではほぼプレート損失一杯の状態で使用するため、単にパラレル接続しただけで使用できる球は限られている。 単純にパラレル接続で使用するためには多く中から選別しなければならない。それほど5998Aはバラツキの多い球である。
 カソード抵抗を別にする方法も検討したが、今回はカソードフォロアー段を個別に設置し、少々のバラツキは補正できるように考えたのがこのアンプである。
 また、完全に固定バイアスとすることは暴走しやすい球の特性上避けたいので、自己バイアス、固定バイアスの折衷型とする。

《 使用部品 》
 ケースはリードMK−400(サイズ400×250×50)を使用した。 電源トランス(三重の西崎電機特注品)、CHコイル(ノグチPMC−0350)、出力トランス(PMF-20W-600S)などのトランス類はすべて6336Bシングルアンプのものを流用した。
 初段は6267、カソードフォロアー段は12AU7Aを使用した。
 5998Aは手持ちの中から適当に選んだものを使用したが、個別バイアス調整回路の効果で内部ユニットのプレート電流差をほぼ2%未満とすることができた。

《 回路構成 》
 初段は6267を5極管接続にて使用する。プラス領域まで5998Aをドライブするためには、初段の出力電圧はピーク値で35V以上が必要となる。さらにカソードフォロアー段のロスを考慮すれば40V以上が望ましい。 そのためには初段への供給電圧はできるだけ高い必要がある。そこで出力段B電源に約60Vを嵩上げし265Vを供給する。 この嵩上げ電源は初段とカソードフォロアー段に供給し、出力段のバイアス電源も兼ねている。
 つまり、出力段カソード電圧とグリッド電圧はそれぞれ+75V、+45V、カソードフォロアー段カソード電圧とグリッド電圧はそれぞれ45V、41Vとなっている。 これにより出力段バイアス電圧は−30V程度、カソードフォロアー段バイアス電圧は−4Vを得ている。 なお、カソードフォロアー段の出力電圧はカソードとシャーシアース間に出力されるため、カソード抵抗のバイパスコンデンサー(470μF)のマイナス側はアースに落とした方が信号の流れがよりスムーズとなる。
 嵩上げ分は75V30mAをブリッジ整流して供給しているが、この部分のリップルは十分に除去しておかなければ残留雑音が増加するので注意が必要である。 ちなみに47μF+2.2KΩ+100μF程度のπ型では不十分である。
 例によって、初段スクリーングリッド電圧を調整して偶数次歪の打ち消し動作をおこなわせている。したがって、6267の動作例とはかなりかけ離れている。
 OPTは前回と同じで1次800Ω(5998A1ユニット当たり1.6KΩ)の接続とした。 今回も多重ループ帰還回路とし、5998Aプレートから初段カソードへ6dBのNFBを戻している。

《 最大出力、測定結果 》
 RLch共、入力電圧約1Vでクリップ開始出力9.7W(1KHZ)が得られた。無信号時における各ユニットのプレート損失は13.2W、最大損失15Wに対して88%である。
 NFBは内側ループに6dB、外側ループに9.3dB、計14.3dBがかかっている。 残留雑音はLCH0.15mV、RCH0.08mVで2号機よりも減少しているが、1号機より少し増加している。ほとんどが初段6267由来のフリッカー雑音と思われる。 一般に出力管プレートから前段にNFBをかけた場合、出力管内部抵抗が減少するが、残留雑音は増加傾向となる。 つまり、B電源残留リップルはOPT1次インピーダンスと出力管内部抵抗により按分されるわけであるが、出力管内部抵抗の低下により、2次側に現れる割合が大きくなるためである。
 内側ループ帰還の効果で5998Aの内部抵抗が低下し、ダンピングファクターは10.6(オンオフ法)となっている。
 高域の周波数特性では200KHZに小さなディップが発生しているが概ね良好である。

《 その他 》
 PMF−20W−600Sの1次インダクタンスは1.2Hと小さい。そのため、出力管内部抵抗を可能な限り低くしなければ低域特性が悪化する。 このアンプでは、5998Aパラで200Ω、さらにプレートからの負帰還により100Ω程度まで下がっていると思われる。

  低域遮断周波数=159×rp×RL/{L×(rp+RL)}

 上記式にL=1.2H、rp=100Ω、RL=800Ωを代入して計算すれば低域遮断周波数は約12HZとなる。 それでも20HZにおける最大出力は中域の40%まで低下する。



カバーを取り外した状態


背  面


内部配線





LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)









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