直結カソードフォロアー5998Aパラシングルアンプ 平成22年11月5日


直結カソードフォロアー5998Aパラシングルアンプ

このアンプは平成23年1月に分解し直結カソードフォロアー5998Aパラシングルアンプ2号機へ生まれ変わった。


《 はじめに 》
 平成22年に製作した5998Aシングルアンプ1号機5998Aシングルアンプ2号機は最大出力が4.5〜5W程度と少し物足りない。 そこで5998Aをパラ接続として出力増加を狙ったシングルアンプを試作した。目標は9W以上である。

《 使用部品 》
 5998Aパラ接続では出力トランス1次電流は150mA程度となる。 そのため、U−808(タンゴ)、PMF−15WSでは安全電流一杯となって少々苦しい。 また、1次インピーダンスが高すぎて、歪は低下傾向であるが最大出力が低下する。
 幸いに、ノグチトランスから1次側安全電流300mA、1次インピーダンス600Ω〜1.2KΩである PMF−20W600Sが販売されているので、今回はこれを採用した。
 しかし、市販されている電源トランスではB電源用として200VDC350mA程度の巻き線を供えたものが見当たらないので、 特注した。しかも、その方がはるかに安上がりである。 CHコイルは手持ちの中から3H350mA(タンゴ)を使用した。
 ケースは50CA10シングルアンプに使用していたリード製S−4にシルバーメタリック塗装を施し、 底板を取り付けて再利用したが、もう少し大きい方が組み立て易い。
 出力管の5998AはGE製、6267は松下、ムラード製、6AQ8は松下製である。 このうち、一番高価な球はムラード製6267である。NEC製の手持ちもあるが、シールドがメッシュではない。
 なお、5998Aは内部ユニットのバラツキが多い球であるため、どれでも使えるわけではない。 今回、パラシングルを製作するに当たり、5998A手持ち球10本の中から バルブチェッカー を使用して、プレート電圧170V、バイアス電圧−34V時の内部ユニット電流差が5mA以内に収まるもの2本を選別した。

《 回路構成 》
 カソードフォロアー回路のカソード抵抗には定電流ダイオードE−202(2mA)を使用したが、なかなか便利である。
 一般に直結カソードフォロアードライブではマイナス電源を必要とするので、専用巻き線(60V30mA)を用意し、 ブリッジ整流した後、ZDで−50Vに安定化して供給した。
 また、初段6267のスクリーングリッド電圧はブリーダー抵抗を変化させて歪率最良点に調整している。 こうすることによって、最終的歪率をかなり低下させることが出来る。 その結果、1KHZ1W時の歪率は0.07%まで低下したが、所謂、出力段と前段との歪打ち消し動作である。
 OPTは1次800Ω(5998A1ユニット当たり1.6KΩ)の接続とした。
 なお、出力トランス1次側から出力管カソードへ大容量電解コンデンサーで接続し、カソード抵抗並列の電解コンデンサーを取り外す方法もある。
 しかし、電源に残留リップル含まれていると、それが出力管グリッドに入力されていることとなり、残留雑音の増加を来たすので注意が必要である。
 このアンプの場合、残留雑音は0.6mVまで増加し、5HZ付近における弱い発振も観測された。

《 最大出力、測定結果 》
 最大出力は目標の9Wを超えRLch共10Wが得られた。プレート損失は13.4W、最大損失15Wに対して89%である。 ただし、内部ユニットのバラツキが大きい場合は、片側のプレート損失が定格を超える恐れが生じるので注意が必要である。 必ず、内部ユニットのバラツキが小さいものを選別して使用しなければならない。
 NFBは13.5dB、残留雑音は0.1mV未満、ダンピングファクターは10.7である。 高域のピークも270KHZ付近の小さなこぶだけで、かなり高性能に仕上がったと思われる。
 10KHZ矩形波の再現性も良好である。容量負荷時(0.47μF)の矩形波応答ではオーバーシュート、リンギングが発生しているが問題はないであろう。
 高域の暴れが少ない理由は内部抵抗の低い5998Aをパラにしたこと、OPTの性能に因るところが大きいと思われる。

《 その他 》
 5998Aパラシングルは、高々185V程度のプレート電圧で最大出力10Wが得られる。EL34(UL)を超えてEL−34(5結)に匹敵する実力である。 パラ接続時のプレート損失30W、ヒーター電力15.12WはどちらもEL−34を上回っているのであるから、当然の結果かもしれない。 また、内部抵抗が低いので高域特性も良好である。  
 今回使用したPMF−20W−600Sは1次インダクタンスが小さい(1.2H)ため、高内部抵抗出力管には不向きであるが、今回のような使用例では本領を発揮しているのではないだろうか。



背  面


内部配線





LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)







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