直結カソードフォロアードライブ6FM7シングルアンプ   令和3年1月7日 


直結カソードフォロアードライブ6FM7シングルアンプ


《 はじめに 》

 6FM7は高μ3極管と低Rp3極管で構成されたTV垂直発振出力用のコンパクトロン12Pベース複3極管である。
 下表は6FM7の設計最大値定格と動作例であるが、第2ユニットはプレート損失10W、内部抵抗920Ωとなっている。


《 使用部品 》

 電源トランスは菅野電機SD−2820、OPTはタンゴ製U−608、CHコイルはゼネラルトランス製PMC−518Hを使用する。 U−608は上部端子の構造であり、感電の恐れがある。そこでタカチ製アルミシャーシーに収めて使用する。
 使用球はRCA製6FM7、GE製6AU6、NEC製6CA4の5本である。
ケースは奥澤製O−9(350×200×60)にシルバーメタリック塗装を施し、両サイドに黒色スプレー塗装した木板を取り付ける。

《 回路構成 》

 B電源は6CA4とシリコンダイオードを使ったハイブリッド型ブリッジ整流する。6CA4は他の球とヒーターを共用できるので非常に便利である。 マイナス電源は少し変わった方法でマイナス75Vを取り出しているが、バイアス専用巻き線がない場合には便利な手法である。回路図参照。
 初段は6AU6で利得を上げ、6FM7の第1ユニットで直結カソードフォロアードライブとする。6AU6はSG電圧を調整することにより出力段との歪打ち消し動作を行わせる。
 6FM7は一応ペアーチューブを購入して使用したが、かなりバラツキが多い球であった。 そこで、カソードフォロアー段を固定バイアスとし、出力段のプレート電流を調整出来るようにする。
右の図は6FM7第2ユニットのプレート特性図である。
この図に3.5KΩのロードラインを引いて計算したところ、プラス5Vからマイナス73VまでのA2級ドライブで
約3.43Wの最大出力が得られる模様である。

(334−25)×(0.093−0.004)÷ 8 ≒ 3.43 W

 さらに、OPTの効率を87%と仮定すれば約2.98Wと計算できる。

 赤色楕円は誘導性負荷のロードラインを表している。
緑の矢印は回転方向。この場合、サイン波形で右肩のクリップが早く始まることを示している。


20HZ出力1.25W時の歪波形

 最大出力は負荷2.5KΩと3.5KΩでほとんど差は見られなかったので、より低歪となる3.5KΩを採用した。 クリッピングレベルグラフ参照。 U−608には3.5KΩタップが設けられていないので、1次側を7KΩに接続、2次側は16Ω端子に8Ω負荷を接続することで実現している。 この方法は定損失が増加する反面、OPTに遊び巻き線がなくなる影響で高域特性が良くなると思われる。

《 最大出力、測定結果 》

 1KHZでは入力0.55V時にノンクリップ最大出力3Wが得られ、上記計算結果とほぼ一致した。 しかし、20HZにおける最大出力は中域の33%まで低下していた。小型OPTの限界と思われるが、U−608はなかなか優秀である。 特に高域特性が優れているのではないだろうか。
 周波数特性では500〜600KHZ付近に小さなディップが発生しているが良好であった。 左CHの200KHZ付近小さな変化が見られたが、10KHZ矩形波にも変化が表れていた。 高域遮断(−3dB)周波数は110KHZ付近となった。また、容量負荷時の10KHZ矩形波応答もまずまずの結果が得られた。
 1KHZ、10KHZの歪率はシングルアンプとしては良好な結果が得られたが、100HZは良くない。 OPTの特性が影響していると思われる。クロストークもシングルアンプとしては優秀である。
 NFBはLCHが6.5dB、RCHが7.3dBと左右で異なっているのは、球のバラツキによる左右の利得差を調整した結果である。 残留雑音はLCH 0.24mV、RCH 0.15mVで優秀、LCHのDFは3.8、RCHは5.1であった。
 無信号時の出力管のプレート損失は9.28Wで、許容プレート損失内に収まっている。

《 その他 》

 こんな小さな複3極管で2A3シングルに匹敵する最大出力が得られ、もっと活用されるべきと思う。 直線性は悪いが、初段との歪打ち消し効果で十分低歪とすることができる。価格は2A3の1/6と廉価である。
 直結カソードフォロアードライブは最大出力増加のみでなく、低インピーダンスドライブによる高域特性改善に効果がみられ、入力容量の大きい3極管のドライブには適している。



ケースに収めたU−608


背  面


内部配線







LCH 8Ω 0.7W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 0.7W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)












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