直結カソードフォロアードライブ6L6GC(T)シングルアンプ 令和3年5月16日


直結カソードフォロアードライブ6L6GC(T)シングルアンプ


《 はじめに 》

 このアンプは6AC73結シングルアンプとして製作したのであるが、手持ちの6CA7は劣化していて特性が良くなかった。 そこで、手持ちの球に6L6GC(メーカー不明)が2本あったので試しに交換してみたところ、好結果が得られた。
 6L6GC3結シングルの規格表は下表のとおりであるが、最大出力1.4Wであまり魅力のない球と感じていた。



 この規格では最大プレート電圧450V、最大プレート損失30Wに対して非常に控えめの使用で、6L6GCの本領を発揮できていないと思われる。 そこでプレート電圧を300V以上に設定し、A2級動作ではどうなるか検討することにする。

《 使用部品 》

 OPTはU−808(タンゴ製)、電源トランスはPV−145(山水製)、CHコイルはC520(タンゴ製)を使用する。 ケースはメーカー不明のボンネットカバー付き既製品、サイズは410(W)×200(D)×50(H)の鉄製である。
 出力管の6L6GCはメーカー不明(ロシア製?)の中古品、6BL8はE I 製を使用する。

《 回路構成 》

 B電源は135Vの倍電圧整流、マイナス電源は38.3V(32V+6.3V)の倍電圧整流とする。 最初、6BL8を交流点火としていたが、ヒーターカソード間漏洩電流のため雑音電圧が1mV以上(主に60HZ)となっていた。 そこで直流点火に変更した。他のE I 製6BL8もヒーターカソード間漏洩電流が多い傾向であった。
 下の図は6L6GC3結のプレート特性上に3.5KΩのロードラインを引いたものである。 プレート電圧320V、プレート電流59mAを動作点とするA2級動作である。 


 上の図で約+20Vから−70VまでのA2級ドライブしたときの最大出力は

   (508−60)×(0.133−0.007)/8 = 7.056(W)

 さらにOPTの効率を93%とすれば

   7.056×0.93 ≒ 6.56(W)  と計算される。

 6L6GC無信号時のプレート損失は 18.88W で、6L6、6L6Gなどのプレート損失19Wの球でも使用できる設定である。
 回路図のカソード電圧は19.2Vであるがグリッドがマイナスのため実際のバイアス電圧はLCH−25.8V、RCH−24.2Vとなっている。

《 最大出力、測定結果 》

 1KHZでは入力約0.5Vで最大出力6.9Wが得られた。 上記計算値を少し上回った原因は出力管の動作領域が推定値よりも少し広くとれているためと思われる。
 歪率は100HZで少し悪いが、1KHZ、10KHZではまずまずの結果が得られ
 周波数特性は10HZで±0dB、75KHZ(RCHは83KHZ)で−3dBであった。 LCHでは200KHZ、RCHでは240KHZ付近にディップが発生していた。 高域特性の差はOPTのバラツキと思われる。
 NFBは8dB、残留雑音は0.2mV程度、DFは4.5であった。
 試作段階ではOPTにRW−20を使用していたが、20W型にしては低域の最大出力が得られなかったのでU−808に変更した。 クリッピングレベルのグラフ参照。中域の差はプレート電圧の高低が影響しているが、低域の差は明らかである。

《 その他 》

 6L6GCはグリッド電流に強い特性を示し、A2級動作に入っても波形の乱れが少ない。 しかし、最大出力付近ではグリッド電流の影響でカソードフォロアー段プレート電圧が低下し、動作点はかなり移動している模様である。
 カソードフォロアー段プレート回路に挿入しているZDは、最大出力付近での出力管グリッド電流増加に対応するためである。
 省略した場合、グリッド電流増加に伴いカソードフォロアー段のプレート電圧が200Vから100V付近まで低下した。 また、それに伴い6L6GCのバイアスが深くなり、息つき現象も発生していた。 ZDでグリッド電流増加を吸収させることにより、最大出力付近の動作を安定させることが出来た。
 6L6GC3結A2級動作は思った以上に良好な結果が得られたが、グリッド電流増加対策が不可欠と思われる。



ボンネットカバー付き


背     面


内 部 配 線





LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)









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