無帰還C−202A A2級シングルアンプ            令和4年10月24日 


無帰還C−202A A2級シングルアンプ


《 はじめに 》
 秋田県のS氏からC−202Aシングルアンプの製作を依頼された。令和4年4月の245シングルアンプに続いてである。
 送られてきたC−202Aの製造年は昭和19年と18年で私の生まれる前である。 川西機械製作所(川西真空管)製作の軍用球で、管璧には日本海軍のマークが残っていた。 また、試験票もあり、第十一号発振電球と記載されていた。
 C−202Aの規格は10、VT−25と同じとのこと、WEBで検索した規格は下表の通りである。



ヒーターはトリタンフィラメントで7.5V1.25Aの定格である。この球は送信管で、A2級動作にしなければ最大出力が小さい模様。

《 使用部品 》
 出力トランス、電源トランス、CHコイルはすべてハシモトトランス製H−20−14U、PT−165、C−30−80Wを使用する。  初段とカソードフォロアー段はGE製6SL7、整流管はRaytheon製280を使用する。  ケースは奥澤O−8を使用する。  真空管とトランス類はすべて支給品である。

《 回路構成 》
 初段は6SL7の1ユニットで通常増幅、もう一方のユニットで直結カソードフォロアーとする。出力管C−202Aはカソード抵抗1.52KΩによる自己バイアスとする。  今回は無帰還とすることから負荷抵抗は14KΩとする。 最大出力は少し低下するが、歪は少なくなるはずである。
 真空管ヒーターは整流管以外はすべてDC点火とする。無帰還アンプで低雑音に仕上げるためには妥協できないところである。
 B電源は380V端子から両波整流し440Vを供給する。CHコイルは電流が少ないので直列使用(30H80mA)とする。 電源SWオン直後のB電圧が500V以上に上昇するため、整流管直後と初段回路の電解コンデンサーは47μF400Vの2階建てとする。 500V耐圧を使用すれば問題ないと思われるが、500V耐圧の立型電解コンデンサーは販売されていない。
 C−202Aはプレート電圧395.8V、プレート電流18mAに設定する。無信号時のプレート損失は7.1W強で定格の60%である。
 カソードフォロアー段用マイナス電源は電源トランスの280Vを0.22μFと20KΩで分圧後半波整流し、マイナス73Vを供給する。
 この方法で問題となるのは秋田県は50HZ、当地は60HZであるため出力電圧が変わってしまうことである。 そこでツエナ−ダイオードを使用してマイナス電圧を安定化することにした。
 更に6SL7のヒーターカソード間耐圧問題も解消できる。6SL7のヒーターカソード間耐電圧は90Vのため注意が必要である。

《 最大出力、測定結果 》
 1KHZでは入力0.71V時に最大出力2.5Wが得られた。 20HZにおける最大出力は中域の32%程度まで低下しているが、無帰還シングルアンプとしては比較的良好な低域特性が得られた。
 周波数特性は10HZで−3.7dB、50KHZで−3dBであった。 100KHZより上ではピークやディップが発生していたが、かつての山水トランスによく見られた特性である。 ハシモトトランスに変わっても巻き線設計が同じであることの証ではないだろうか。
 ひずみは多めであるが、無帰還アンプとしては良好、クリップ波形は先端が丸くなる特徴を示していた。
 残留雑音はLCH0.09mV、RCH0.16mVで無帰還アンプとしては非常に優秀である。 ヒータのDC点火、ハムバランサーの使用、更にCHコイルを30Hとした結果ではないだろうか。 
 クロストーク特性は少しいびつな曲線を描いているが、おおむね60dBは確保できていた。
 DFは左右とも1.9(ON/OFF法)であった。

《 その他 》
 部品配置はS氏のご希望でSW、端子類はすべてシャーシー上面に配置し、前後左右の面には何もつけていない。  木製枠を自作して取り付ける予定とのことである。



背  面


内部配線






LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)












inserted by FC2 system