KT−88ウルトラリニアーシングルアンプ   平成29年3月16日 


KT−88ウルトラリニアーシングルアンプ


《 はじめに 》

 KT−88シングルは2台目であるが、前回は3極管接続で直結カソードフォロアーとしていた。 ウルトラリニアー接続ではA2級ドライブとしても3極管接続時のような最大出力増加はあまり期待できないので、今回はCR結合で製作することにする。

《 使用部品 》

 OPTはノグチ製PMF−20W‐600S、電源トランスはタンゴ製MS−250、CHコイルもタンゴ製MC−5−250を使用する。 シャーシーは奥澤O−8にアルミ用エナメル(シルバーメタリック)塗料を吹き付け、両サイドに水性ニスを塗った板を取り付ける。
 初段の12AX7は手持ち球から選別して使用、出力管KT−88はEH製新品を使用する。

《 回路構成 》

 初段はSRPPとし、段間はCR結合とする。 KT−88のシングル動作性は発表されていないが、同類管である6550では下表の動作例が見つかったので、これを参考にする。



 5極管接続ではプレート電圧、スクリーン電圧250V、バイアス電圧−14Vで12.5Wの最大出力となっている。 3極管接続では6W弱であることから、ウルトラリニアー接続では9W程度の最大出力と思われる。 
 PMF−20W−600Sは低内部抵抗管用に設計されているため、メーカー発表の動作例(下表)では1.2KΩが最大であるが、出来るだけ大きくした方が最大出力、ひずみ率の点からも有利である。 そこで黄線と黒線に8Ωを接続し、1次側1.6KΩの接続として使用する。



 無信号時のプレートカソード間電圧263.8V、プレート電流122mA、SG電流10mA、プレート損失32.2Wに設定する。
 この状態では左右で265mA程度のB電源容量が必要となり、MS−250では不足している。 しかし、交流電流許容値0.9Aから計算すれば、最大DC出力電流は270mA程度となることから、とりあえず様子を見ることにする。 全体の容量から見れば65%の負荷となるので問題ないと思われる。

《 最大出力、測定結果 》

 1KHZでは入力0.8V時に最大出力8Wが得られたが、25KHZ付近で最大出力9W以上となる不思議な現象が起きている。
 20HZにおける最大出力が中域の20%程度まで低下している原因はOPT1次インダクタンスが小さいことが影響していると思われる。
 0.7W出力時では10HZ−0.4dB、80KHZ−3dBとなった。3極管接続との比較では少し高域寄りの特性となった。 300KHZ付近にピークが発生しているが、高域補償回路定数を変更すれば少しは抑えることが出来るかも知れない。
 NFBは10dB、DFは4.5(ON/OFF法)、残留雑音は0.12〜0.17mV程度であった。 1W時の雑音歪率は1KHZと10KHZで0.6%、100HZでは0.8%程度と少し多いが、すべて同じようなカーブを描いている。 KT−88UL接続は直線性が悪く、偶数時の歪が多く発生していると思われる。

《 その他 》

 KT‐88などの大型ビーム管はPP接続を前提として設計されているため、直線性が少し犠牲にされているのかも知れない。 PPアンプでは偶数次歪は打ち消されるが、シングルアンプではその影響が顕著である。 しかし、その偶数次歪がKT‐88シングルの音となっているのではないだろうか。  



内部配線


背  面






LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)












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