12B4A×2SEPPOTLヘッドホンアンプ  平成18年1月2日  



   このアンプは平成22年1月に分解し、PT、CHコイルは直結カソードフォロアー5998Aシングルアンプに流用した。
  1. はじめに
       現在、真空管式ヘッドホンアンプの既製品はほとんど市販されていない。 また、マニアの自作品もネットで検索すれば見つかるが、ほとんどがインピーダンスマッチングのためのトランスが使用されている。 せっかくの広帯域ヘッドホンを使用するのであるから、出力トランスの使用は納得できない。 そこで真空管SEPPOTL方式のヘッドホンアンプの製作を思いついた。

  2. 出力管の選定
       ヘッドホンのインピーダンスは32Ω以上が一般的であるから、大型管を使用すれば出力数WのSEPPOTLアンプの製作は比較的容易である。 しかし、せいぜい1W有れば十分であるヘッドホンに大型管を使用するのも無駄と思う。 しかし、12AU7、6FQ7、12BH7Aクラスではたとえ32〜50Ω負荷であっても、多数並列使用しなければ最大出力1Wはとても取り出せない。 一番出力が大きくなると思われる12BH7Aをパラにしても0.1W程度(プレート電圧150V時)である。 そこでフッターマンOTLに使用されていた12B4Aを使用した場合の最大出力を検討したところ、プレート電圧150V、32Ω負荷で1.5W程度の最大出力が得られそうである。
     詳しくは「12B4ASEPPOTLの最大出力」 を参照されたい。

  3. 回路構成
       初段は12AX7による差動型位相反転回路、ブートストラップ方式、電源接地、出力コンデンサー方式を採用することにしたが、32Ω負荷であれば出力コンデンサーもあまり大きい容量は必要ない。 なお、このアンプは2段増幅であるから、打ち消し電圧の注入部位に注意しなければならない。 また、初段と出力段の間で上下の信号をクロスさせる必要がある。
     12AX7のプレート負荷抵抗がRLchで、また上下段でも異なっているが、歪率を見ながら交流バランスを調整した結果である。 これにより0.12W(2V/32Ω)時の歪率を半分程度まで低下させることが出来た。
     また、回路図上では12B4Aのプレート電流は25mAと記載してるが、グリッドバイアス回路を約1.5mA流れているので、実電流は23.5mA(P損失=3.76W)となる。 12B4Aの許容プレート損失5.5Wから考えればこの程度が限度かと思われる。
     上段12B4Aののカソード電位は+150V程度になり、H-K間電圧が定格(±100V)を超える。 そこでヒーターバイアスを80Vかけて、規格内に収まるようにした。

  4. 測定結果
       NFB12dB、入力電圧4V時の最大出力は約1.2Wが得られた。入力感度が低いようであるが、ヘッドホン使用時にはまったく問題ない。 VRの位置は最大でも14時方向である。
     周波数特性は高域まで非常によく伸びている。 また、高域位相補正を行わなくても、10KZの矩形波は良好であるが、コンデンサーを負荷並列にしたとき、少しオーバーシュートが現れたので、NFB抵抗並列に1800PFを取り付けた。
     1W時の歪率が1.0%強とあまり良好ではない。いくら32Ω負荷であっても最適負荷抵抗の10分の1以下の条件でB級に近い動作であるから致し方ないことである。

  5. シャーシー
       シャーシーはタカチのKB−5(300×200×55)を使用したが、この製品は真空管アンプ用として設計されていないため、板厚も薄く使い勝手は良くない。 トランスの重みで変形している。しかし、板厚が薄いことで、穴あけ作業は非常に楽に行えた。 ヘッドホンアンプとしては、操作部をすべて前部に並べた方が使い勝手が良いのであるが、もう少し大きいシャーシーを使用するか、配置をもっと検討すべきであったと反省している。 電解コンデンサー(H=45mm)は格安品を利用したため、取り付け金具が付属していない。 そこで小型アルミアングルとL=50mmのボルトで内部に固定した。長さ55mmのボルトが丁度良いのであるが、市販品には見当たらなかった。 しかし、60mmでは長すぎてシャーシー内に収まない。(右下の写真参照)

  6. その他注意点
     調整段階になって、VRをほとんど絞り切った位置で、超高域発振が発生していた。 出力コンデンサーとヘッドホンジャッグ間の配線位置を変更することで止まったが、コンデンサーの配置や、配線経路に問題があったと思われる。
     使用中にヘッドホンを抜いても出力端子が開放あるいは短絡状態になることはないが、そのときの出力はかなり増大するので、並列抵抗の容量が小さいと焼損する恐れがある。 いずれにしても、使用中の抜き差しは控えた方が良い。


内 部 写 真
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