12B4ASRPPヘッドホンアンプ   平成24年7月11日 


12B4ASRPPヘッドホンアンプ

《 はじめに 》
 平成18年に12B4ASEPPOTLヘッドホンアンプを製作していたが、今回は簡易型OTLアンプとして製作例があるSRPP回路を採用する。 SRPPは位相反転回路が不要であるため製作は容易である反面、低インピーダンス負荷ではひずみが多く、最大出力も小さくなってしまう。

《 使用部品 》
 シャーシーはリードS−4を使用し、表面をサンドペーパー(150番)でヘアーライン風に仕上げ、透明ラッカーを吹いて使用した。両サイドには水性ニスで仕上げた木板を内側からねじ止めした。 電源トランスはPH−100(タンゴ製)に防磁銅帯を巻いたものを使用した。CHコイルにはCH−3−250(タンゴ製)を使用したが、かなりのオーバースペックで5H〜10H100mA程度のもので十分である。

《 回路構成 》
 初段は12AX7SRPP、出力段は12B4ASRPP、上段は自己バイアス、下段は固定バイアスである。
 低負荷インピーダンスのSRPPでは制御抵抗(Rc)の設定が大切である。制御抵抗(Rc)は下記の計算式で求めることができる。
   Rc=(rp+RL)/(μ−1)
 上記計算式にrp=1000Ω、RL=420Ω、μ=6.5を代入すれば、最適制御抵抗値は260Ω前後となる。 RL=420Ωとした理由は特になく、たまたま直列抵抗が390Ωで負荷抵抗に30Ωを使用した結果である。 しかし、この抵抗は上段のバイアス抵抗も兼ねているので、プレート電圧が高い場合はプレート損失がオーバーしないように注意する必要がある。 制御抵抗よりもバイアス抵抗を大きくいする場合は右図のように結線する方法がある。 見かけの制御抵抗は適正なバイアス電圧が得られる値とし、大容量電解コンデンサーと抵抗(できれば可変抵抗)を直列とした回路を並列接続し、実質制御抵抗値を下げる方法である。
 今回はバイアス用として510Ωを使用したところ、歪の最良点の値とほぼ一致していたので、右図の回路は使用しなかった。 計算で求めた制御抵抗値の約2倍であるが、最大出力が得られる制御抵抗値と歪の最良点とは必ずしも一致しないと言うことかも知れない。
 このアンプでは高インピーダンス型ヘッドホンと低インピーダンス型ヘッドホンの両方を使用できるように、直列抵抗切り替えSW(390Ω/0)をフロントに取り付けた。 直列抵抗を挿入すればDF値が0.1未満まで低下する。
 最初、B電源整流回路は電圧調整を兼ねてCH入力方式としていたが残留雑音が大きいため、コンデンサー入力方式に変更した。 しかし、今度は電源電圧が高すぎてプレート損失がオーバーするため、470Ω10Wで30V下げて供給した。 その結果、無信号時のプレート損失は4.5W程度で許容損失5.5Wの80%に収まった。

《 最大出力、測定結果 》
 入力電圧2.2Vにて420Ω負荷時2.4W、390Ωを直列とした30Ω負荷に対して180mWのクリップ開始出力が得られた。常用出力の範囲では0.1%未満に収まっている。 高インピーダンス型ヘッドホンでテストしていないが、電力感度が高すぎて少々扱い辛いかも知れない。ヘッドホンは非常に能率が高く100mW程度の出力で十分である。
 周波数特性は10HZで−0.15dB、158KHZで−3dBと非常に広帯域に仕上がった。SRPPの2段構成が効いていると思われる。
なお、容量付加試験結果は掲載していないが、全く問題はなかった。しかしながら100KHZの矩形波観測では高域減衰の影響が顕著である。
 NFBは23dB、残留雑音は420Ω負荷で0.1mV、30Ω負荷では0.01mV未満(測定限界以下)と良好である。
 出力インピーダンスをON/OFF法で測定したところ10.5Ωであった。 その結果、420Ω負荷時のDF値は約40であるが、390Ω直列の30Ω負荷では0.075に低下する。 しかし、ヘッドホンはDF値にほとんど影響を受けないとの報告もある。
 ちなみに、直列抵抗をパスして低インピーダンス型(32Ω)を使用した場合のDF値は2〜3程度となる。 その時の歪率は0.5%程度まで増加し、NFBの減少に伴い雑音も増加しているが、歪成分のほとんどは偶数次であるためか、特に歪が多いとか雑音が気になるということはなかった。

《 その他 》
 このアンプはヘッドホン愛好家である知人に試聴をお願いする予定である。



内部配線



背  面

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