17KV6A×2マッチングトランス付SEPPアンプ  平成30年5月10日 




  1. はじめに
     平成25年に自作した「Philips型対称ドライブ6GB3ANEPPアンプ」に使っていた電源トランス、CHコイルなどを流用してこのアンプを製作する。
     電源トランスにはあらかじめ17KV6や21GY5にも対応できるように0−6.3−17−21V2Aのヒーター巻き線を設けていたのでこれを利用する。

  2. 使用部品
     シャーシーは奥澤製O−4を使用し、一つのシャーシーにモノラルアンプ2台を載せる形とする。 電源トランスは西崎電機特注品を2個、CHコイルはノグチ製PMC−115H(1H150mA)2個を使用する。
     マッチングトランスは業務用として製造された松下製W2−ST60(オークションで入手)を使用する。 このマッチングトランスの規格は1次側187Ω−84Ω−COM、2次側16Ω−8Ω−4Ω−COM、容量60Wとなっている。 リード線が上部引き出しとなっていたので取り付け金具を付け替えて下部引き出しに変更して使用する。 容量的にはW2−ST30で十分であるが、1次側インピーダンスを考慮してこのトランスとする。
     出力管はシルバニア製17KV6A、初段は松下製とNEC製の12AX7(ECC83)を各1本使用する。 ドライバー位相反転段には松下か東芝製12BH7Aを使用、共通カソードに接続する定電流回路には手持ちの関係でBrimar製6CH5(T)を使用する。

  3. 回路構成
     出力段用第1B電源は140V200mAを2組直列のブリッジ整流で±180V、最大DC125mAを供給する。 ドライバー段用第2B電源は175Vを倍電圧整流して供給する。 バイアス電源は2組の40V30mAをブリッジ整流して供給する。 どちらも左右別供給である。
     打ち消し回路はPNFB方式で、マッチングトランス1次側から6CH6(T)のカソードへ帰還電圧を注入する。
     NFBは1次側と2次側をSWで切り替えが出来るようにする。

  4. 測定結果
     高域はなだらかに減衰し、ピークやディップはない。通常のPPアンプではなかなか得られない特性となっている。 高域の遮断周波数は1次側から帰還した場合は約70KHZ、2次側から帰還した場合は約100KHZとなった。 周波数特性以外はNFBを1次側、2次側のいずれから掛けてもほとんど差は無かった。
     NFBは約11.7dBに設定、残留雑音は左右とも0.2mV程度であった。 DFは1次側から帰還した場合は6.2、2次側から帰還した場合は9となった。 1次側からの帰還では2次側巻き線抵抗値の影響を受けて少し低くなった。

  5. 最大出力
     最大出力は入力0.4Vでクリップ開始出力約11.5Wが得られた。 低域の最大出力は10HZでは中域の25%程度まで低下しているが、20HZでは中域の90%以上が得られている。 余裕のあるMTの効果と思われる。

  6. その他
     シャーシー上面にDCバランスとプレート電流測定用のテストピンを左右に取り付け、バイアス調整用VRは上面から調整できるように設置した。
     17KV6Aは6KV6A(6.3V1.6A)のヒーターを16.8V0.6Aに変更した水平出力管である。プレート損失は28Wまで許容されている。 ヒーター電力はEL−34を上回りKT−88と同じである。
     SG電圧を安定化してPPで使用すれば100W近い最大出力が得られる優れモノである。 ソケットがノーバル9Pとなっているが、良質なソケットの入手が難しいことが欠点である。 ヒーターが22V0.45Aの22KV6Aも入手可能であるが、6KV6Aは販売されていない模様。
     下段のカップリングコンデンサーの耐圧は630Vでは不足するので1000V耐圧以上のものを使用しなければならない。 入手できない場合は0.22μF(500V耐圧以上)を2個直列で代用できる。


内部配線


背  面  写  真


バランス調整用VRとテストピン

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