23JS6A×4SEPPOTLアンプとマッチングトランス(QSC OT−300)
  平成26年7月20日 



改造23JS6A×4SEPPOTLアンプ

《 はじめに 》
 平成24年1月製作した23JS6A×4SEPPOTLアンプを最近オークションで入手したマッチングトランス(QSC OT−300)が使用できるように改造した。

《 回路構成および改造箇所 》
 初段の12AX7A差動型位相反転回路に使用していた定電流ダイオードが1mA(E−102各ユニット0.5mA)ではプレート電圧を150V程度まで高くしてやらなければバイアスが浅くなり、過大入力時に息つき現象を起こしていた。 しかし、プレート電圧を150Vに上げればドライブ段カソード電圧も上昇し、十分なドライブ電圧の確保が難しくなる。また、H−K間耐圧問題も生じてくる。
 そこで0.7mA(E−701)に変更し、プレート電圧120V程度まで下げることにした。 その調整は当然デカップリング抵抗の増減で行うが、この調整がなかなか微妙で、12AX7A、定電流ダイオードのバラツキなどで左右CHでかなり異なる値となった。
 ドライブ段のSRPP上段球を12AU7から12AT7に変更し、上段カソード抵抗、共通カソード抵抗も変更した。 ドライブ段の実効負荷抵抗を増加させ、プレート電流も少し下げることにした。

マッチングトランス使用時の切り替えSW


《 マッチングトランスOT−300 》
 このマッチングトランスはオークションで入手したものであるが、70V300Wの表記は中域のパワーであり、コアーサイズから考えて最低域ではかなり低下し、30HZ50W程度が限度と思われる。 端子がむき出しであったので、金属ケースに収め、ターミナルの差し替えでタップ切り替えができるようにした。

ケースに収めたQSC製マッチングトランスOT−300
ケース内部

 このマッチングトランスにはインピーダンス表示はなく、電圧表示(70V、35V、28V、24V、COM)がされている。 これをインピーダンス表示に換算すれば下表の通り、各種負荷に対応可能でなかなか便利である。



《 最大出力、測定結果 》
 8Ω負荷では入力0.9V時11.5Wの最大出力であったものが、50ΩMT負荷では32Wの大出力アンプに変身した。 23JS6Aは6336、36LW6などと比較して少し内部抵抗が大きいため、32Ω負荷時は10%程度最大出力が低下する。
 周波数特性は50KHZで−3dBとなり、MTの特性が出てしまっているが、高域はかなり素直に低下している。
 NFBは8Ω負荷時9.5dB、50Ω負荷時16dBである。 残留雑音は8Ω負荷時0.15mVであったものが、50Ω負荷時は0.05mVに減少、同じくDFは3.5が11に増加した。
 全帰還方式の打ち消し回路では負荷を変えても歪率に変化はないものと考えていたが、RCHでは少し回路定数の変更が必要となった。 LCHは同じ抵抗値で問題なく、真空管のバラツキが影響していると思われる。
 10KHZの歪率には無視できないほどの差がみられたので、下段グリッドに挿入した小容量コンデンサーの容量をSWで切り替えるようにした。
 なお50Ω負荷時の出力電圧は40V(50Ω端子)に達し、負帰還抵抗(2.2KΩ)で消費される電力が大きくなるので容量に余裕を持たせる必要がある。 しかし、5Wは十分すぎる容量で2Wタイプで十分である。

《 その他 》
 QSC製OT−300はオークションで入手したもので、現在は市販されていない。OT−300Aが現行品である。 このようなマッチングトランスは巻き数が少なく、高域特性の優秀なものが製作可能ではないかと思われる。
 6336A(B)単管SEPPでもかなりの高出力が期待でき、消費電力も抑えることができる。 しかし、採算が取れないのか、現在国産品は見当たらなく、特注でなければ入手出来ないことは残念である。 サンバレー製SVT−1AFオートフォーマーも商品ページが消えている。
 QSCはアメリカのプロ用音響機器メーカーであり、日本でも取り扱っている会社があるので入手可能かも知れない。単価は32,184円。



内部配線



背  面

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