30KD6×2マッチングトランス付SEPPアンプ 平成26年11月3日 30KD6×2マッチングトランス付SEPPアンプ 30KD6の緑の袴が美しい
先日、オークションでイシノラボ製マッチングトランスH−1808を落札することが出来たので、これを使用してSEPPアンプを製作した。 H−1808はイシノラボがハシモトトランスに特注して販売されていたもので、現在は受注生産であるMASTERSシリーズマッチングトランスM−BF8030と同等と思われる。 シャーシーは奥澤製O−2(400×300×70)を使用し、両サイドには水性ニスを塗った木板を取り付けた。 電源トランスは36LW6全帰還型SEPPOTLアンプに使用していたもの流用した。このトランスは西崎電機に特注したもので、容量的には十分である。 CHは40年ほど前の真空管カラーTVに使われていたもので、規格は0.55H500mAである。 マッチングトランスはイシノラボH−1808(ハシモトトランス製)を使用した。 このトランスはバイファイラー巻で1次80Ω2次8Ω30HZ30Wのスペックである。 出力管は8本の東芝製30KD6から4本を選別して使用したが、流石東芝製と言えるもので、8本の内どれを組み合わせて使用しても問題ない状態であった。 初段は12AT7SRPP、次段は12BH7Aによるカソード結合型位相反転回路で共通カソードには6BQ5(3結)による定電流回路を取り付ける。 80Ω負荷の30KD6SEPP回路とした場合、最大出力は25W以上と見込まれる。 その時、マッチングトランス1次側の出力電圧は48V程度になると予想されるので、高いドライブ電圧が要求される。 使用したPTは6080SEPPOTLアンプ用に特注したもので、ドライブ段B電源は200Vの倍電圧整流で470Vを供給しているので充分である。 出力段用B電源も最大出力時のプレート電流が280mA程度であることから140V0.7Aでも十分と思われる。 バイアス電源は100Vのブリッジ整流であるが、これは6080用に設計しているためで、50Vのブリッジ整流で良い。 30KD6のヒーターは4本直列にしてDC120Vで点火している。AC100Vを整流した場合130V程度となるので抵抗で下げる必要が有る。 それには16Ω20W程度の容量が必要で発熱量が馬鹿にならない。 そこで6.3V4Aを逆相でAC100Vに接続し95Vに下げてブリッジ整流している。 更に、2.2Ω10Wを2本使用して丁度DC120Vに調整している。 NFBをマッチングトランス1次側、2次側から戻すことが出来るように切り替えSWを取り付けた。 NFB回路の定数が左右で異なっているのは、利得を合わせるためである。 周波数特性では900KHZ付近にディップが発生しているが、高域特性は非常に優秀である。 歪率特性も良好な結果が得られた。 30HZ30Wの容量のため低域の最大出力は低下しているが、20HZでも中域の80%以上が得られている。 クロストーク特性はデータ上は−90dB程度が得られているが、残留雑音の影響を排除すれば中域では−100dBになっていると思われる。R→Lの方がデータが悪い原因はLCHの残留雑音が少し多いことが影響している。 NFBは12〜13dB、残留雑音は左ch0.3mV、右ch0.25mV、DFは7.6(ON−OFF法)であった。 NFBをマッチングトランス1次側、2次側から戻した時、周波数特性に若干の相違があり、容量負荷時の10KHZに違いがみられたが、その他の特性に大きな違いは見られなかった。 それだけこのマッチングトランスの性能が優れているということかも知れない。 最大出力は入力0.85Vでクリップ開始27W/8Ωが得られた。「30KD6(6KD6)SEPPアンプの最大出力」のページからプレート電圧150V、80Ω負荷時の最大出力は19Wと見込まれる。 更に、プレート電圧を150Vから177Vに上げた時の最大出力に対する乗率は「3極管の1.5乗特性と2.5乗特性」のページの2.5乗特性図から1.5が求められる。 したがって、177V時の最大出力は 19×1.5=28.5W と計算できる。更にH−1808の定損失は0.25dBであることから、トランス効率は97%となる。 28.5×0.97=27.6W が計算上の最大出力となり、ほぼ本機の最大出力と一致している。 下段カップリングコンデンサーを直列にしている理由はSW投入直後の両端電圧が800V近くまで上昇するためで、1000V耐圧であれば0.1μF1個で足りる。 B電源に挿入したタイマーは突入電流でヒューズが切れることを防止するためで、電源の電解コンデンサーが大容量の場合は必需品である。 このアンプはテストポイント(TP1〜TP4)を設け、出力管バイアスがシャーシー上面から調整可能な構造にした。 更に、出力管のプレート電流監視が出来るように切り替えSWを取り付けた。 カソードに挿入した3Ωの両端電圧を3.3KΩと1.65KΩで分圧すれば電圧値をそのまま電流値に読み替え出来る。 DCバランス調整がシャーシー上面から出来ることは非常に便利である。 内部配線 背 面 写 真 |