Philips型対称ドライブ36LW6NEPPアンプ  平成26年6月26日 




  1. はじめに
     このアンプは、先日38本もの36LW6(GE)を入手した友人からの依頼で試作した。 平成25年7月に製作したPhilips型対称ドライブ6GB3ANEPPアンプが好結果を得られたのでほぼ同じ回路構成とする。
     「Philips型対称ドライブOTLアンプ」はあまり馴染みのない名称であるが「サークロトロン」は同じ原理である。詳しくは上記ページをご参照頂きたい。

  2. 使用部品
     シャーシーは奥澤製O−9(350×200×60)を使用し、両サイドには水性ニスを塗った木板を取り付けた。 奥澤製シャーシーは表面仕上げが綺麗なので、そのまま使用する。素人塗装よりは安心である。
     電源トランス、OPTは特殊なものを必要とするため、西崎電機に特注した。 CHはノグチトランスのPMC−0930H2個をシャーシー内に取り付けた。
     電源トランスには、将来40KG6Aに交換できるように40Vヒーター電源も確保しているが、その後、東芝製30KD6を8本入手したので30Vも使用出来るようにしておくべきであった。
     OPTは1次4分割(直列)、2次5分割(並列)のサンドイッチ構造で、オリエントコアーを使用したインピーダンス128Ω/8Ω、容量25Wのものである。 6DQ5SEPP、6C19PSEPPに使用したOPTは磁気飽和を起こして低域最大出力が激減していたので、今回はコアーを少し厚く(30o→40o)し、2次側巻き数も多くしてもらった。
     使用真空管の内12AT7と12BH7Aは手持ち品を使用し、36LW6は友人からの預かり品を使用した。

  3. 回路構成
     初段の12AT7差動で位相反転を行い、ドライブ段も準差動型SRPPである。 SRPPは上段12AT7、下段12BH7Aで構成した。 この時、上段球の対アースカソード電圧は290V前後となるため、ヒーター回路は単独、且つ非接地としなければならないので注意が必要である。
     回路の詳細はPhilips型対称ドライブ6GB3ANEPPアンプを参照されたい。
     OPT1次側出力電圧の50%が帰還されるので、ドライブ電圧はかなり高くなる。 SRPP回路はプレート供給電圧454V(実効電圧350V)でも実効値95V(ピーク値135V)程度が取り出すことが出来る。

  4. 測定結果
     周波数特性では130KHZ付近にディップが発生し、10KHZの矩形波応答にも影響が現れている。歪率はかなり良好な結果が得られた。
     NFBは15dB強、残留雑音は左右とも0.05mV程度と非常に優秀である。DFは12程度(ON−OFF法)であった。

  5. 最大出力
     最大出力は入力1.35Vでクリップ開始14.5W/8Ωが得られた。最大出力を超えるとクロスオーバー歪が発生することが少し気になる程度である。
     しかし、計算上の最大出力21W、OPTの効率を考慮しても19W程度が得られる予定であったが、かなり下回ってしまった。 試しに別メーカーの36LW6に交換した時は18W強の最大出力が得られた。どうもGEの36LW6はグリッド電流が流れやすいのかも知れない。
     しかし、OPTのコアーを少し厚くしただけで低域のパワーレスポンスは改善され、10HZにおける最大出力は中域の86%が得られている。
     今回使用したOPTは1次600T、2次150Tで巻き数が少し多すぎたのかもしれない。低域特性は改善されたが、高域特性が悪化している。 いずれにしても、OPTの特注は試作を重ねることが出来ないので、良い特性のトランスに辿り着くのは険しい道のりである。

  6. その他
     このアンプはテストポイント(TP1〜TP6)を設け、さらにVR1〜VR3をシャーシー上面からドライバーで調整可能とした。 MQ−36のようにメーターまでは装備していないが、これでも調整が裏蓋を外す必要なく簡単に行えるようになった。
     次回はイシノラボが橋本トランスに特注したマッチングトランス(80/8Ω30W30HZ)を使ったSEPPアンプに挑戦する予定である。



左CH内部配線


右CH内部配線


背  面  写  真

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