全帰還方式36LW6×4SEPPOTLアンプ6号機  平成23年7月21日



写真では電解コンデンサーの前に6CW5があるが、このアンプでは使用していない。

  1. はじめに
     このアンプは、以前制作した36LW6×4SEPPOTLアンプ5号機を全帰還方式の打消し回路に改造したものである。
     全帰還方式の打消し回路は無帰還時の出力インピーダンスが 1/(1+μ)となることが知られている。所謂、テクニクス方式と同等となる。
     しかし、出力インピーダンスはオーバーオール負帰還により大きく低下するため、打ち消し方法の違いによる差は小さくなることが予想される。 そこで、改造前、改造途中、改造後に3通りの打消し回路(正負帰還併用方式、正帰還方式、全帰還方式)について、無帰還、オーバーオール負帰還12.3dBにおける出力インピーダンスの測定を実施する。

  2. 使用部品
     部分的改造のため6CW5が1本不要になったのみである。

  3. 回路構成
     PK分割型全帰還方式では出力をフッターマン方式とは逆の接続にするため、オーバーオール負帰還を掛けるためには増幅段数を1段増加する必要がある。
     下図はフッターマン打ち消し回路と全帰還打ち消し回路の模式図である。 フッターマン方式では出力点から位相反転段カソードへ正帰還、全帰還方式では負帰還が掛かっている。

  4. 最大出力
     クリップ開始出力はRch20.4W/8Ω、Lch18.9W/8Ωが得られたが、少し最大出力が低下した原因は、出力端子に挿入した180Ωによる電力損失(4.4%)が大きいためである。

  5. 測定結果
     下の表は打ち消し回路別出力インピーダンス値(Ω)と8Ω負荷に対するダンピングファクター値である。


     無帰還時における全帰還方式出力インピーダンスは正帰還方式の約1/4に低下しているが、オーバーオール負帰還(12.3dB)により差が少なくなり約30%の低下となっている。
     上記データから36LW6(3結)の内部抵抗 rp と μ を計算すれば

        2本並列時の内部抵抗 rp ≒ 85Ω (1本当たりの内部抵抗に換算すれば170Ω) 
        増幅率  μ ≒ 2.6


     という結果が得られる。

     なお、実機のNFBは14.8dBであるため、出力インピーダンスは0.96Ω、DF値は8.3である。いずれもオンオフ法による測定。
     36LW6×4SEPPOTLアンプ5号機の測定データと比較して、1W時の歪率が少し悪化したが、100HZ、1KHZ,10KHZのカーブがほとんど一致している。 これは、打ち消し回路が低域から高域までバランス良く動作している結果と思われる。
     高域の周波数特性は185KHZで−3dB、1MHZでも−16dBと非常に広帯域に仕上がった。

  6. その他
     このアンプは低域時定数が3段であるため、時定数の配分が悪いと低域不安定になる場合があるので、注意が必要である。


内 部 写 真
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