全帰還方式36LW6×4SEPPOTLアンプ 7号機  平成25年1月24日



  1. はじめに
     このアンプは、以前制作した6080×2SEPPOTLアンプ2号機から取り外した電源トランスを使って製作したものである。

  2. 使用部品
     PTは西崎電機特注品、CHコイルは古い真空管カラーTVから取り外した0.55H500mAを使用した。 ケースは奥澤O−2にゴールドメタリック塗装を施し、両サイドには水性ニスを塗った板を内側からねじ止めした。

  3. 回路構成
     初段は12AX7による差動型位相反転、ドライブ段は上段に12AT7、下段に12AU7を使った変則SRPP回路である。 ドライブ段B電源供給電圧が500V近いこと、上下の球を変えたことなどにより、ドライブ段最大出力電圧は実効値90Vが得られている。 上下とも12AU7を使用した場合20%程度最大出力電圧が低下する。
     上段球は所謂真空管抵抗(下記計算式)として動作している。この場合、上段球はμの高い12AT7を使用した方が高負荷抵抗で動作していることになる。

       RL=Rk+Rk×μ+rp  (Rk、μ、rpはそれぞれ上段球のカソード抵抗、増幅率、内部抵抗)

     上式にRk=1KΩ、μ=45、rp=19KΩを代入すれば65KΩが得られる。それぞれは動作点付近の推定値である。
     したがって真空管抵抗でなく65KΩ程度の負荷抵抗を使用すれば同程度の最大出力電圧が得られるが、SRPPの最大の特徴は出力インピーダンスの低下である。 これにより、パラにした出力管の入力容量の影響軽減が期待できる。
     全帰還方式36LW6×4SEPPOTLアンプ6号機ではPK分割型位相反転出力を襷掛けにした回路を採用したが、増幅段数が一段増加するため、今回はテクニクス方式を採用した。

  4. 最大出力
     クリップ開始出力はLch24.5W/8Ω、Rch23.5W/8Ωが得られた。最大出力が増加した原因は、B電源電圧が高いためである。 最大出力が左右で異なっている原因は36LW6の劣化と思われる。手持ち球14本の中から選別したのではペアーマッチングが取れた組み合わせは2組しか得られなかったので、バイアス電圧に上下でかなりの開きが見られる。

  5. 測定結果
     歪率はあまり芳しいデータではなく、出力10W時の歪率は1%を少し超えている。 ペアーマッチングが取れた2組の球を同CHに使用すれば1/3に低下するが、今度は反対側の歪率は3倍以上に増加する。
     6080×2SEPPOTLアンプと同程度であること、クリップ開始は23Wを超えていることからこれで妥協することにした。
     NFBは10.5dB、DF値は4程度である。残留雑音は左右CHとも0.25mVであった。
     高域の周波数特性は130KHZで−3dB、1MHZでも−19dBと広帯域に仕上がっている。 しかし、100KHZにおける最大出力が8Wまで低下していることが残念である。 この原因はNFBが少し少ないこと、出力管下段グリッドと出力端子間に390PF+6.8KΩによる積分型補償回路を取り付けていることによるものと思われる。 この回路を取り外せば10KHZの歪率がかなり悪化する。また、6.8KΩ抵抗を取り外した場合は容量負荷時の10KHZ矩形波応答が上下で不揃いとなる。

  6. その他
     初段とドライブ段を直結にしているが、長期にわたる安定動作に問題がある。 ドライブ段出力点電圧のバランスが上下不揃いとなりやすいため、少なくとも半年に一度程度は再調整が必要である。 しかし、20V程度のアンバランスでは特に問題はないようである。
     気を付ける点はSRPP上段のヒーター回路をアースに接続してはならない。 カソード電位が290V前後と高いので12AT7のHK間耐圧を超えてしまうからである。 因みに12AT7のHK間最大電圧は90Vである。「ジー」音が発生する場合は1μFのコンデンサーを介して接続すればほとんどの場合解消できる。
     このアンプは大きなシャーシーに組んでいるが重量はシングルアンプ並みに軽いので、持ち運びは苦にならない。

背 面 写 真


内 部 写 真
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