6080単管マッチングトランス付SEPPアンプ
平成27年8月28日
- はじめに
レギュレーター管6080WCを使った低RL(8Ω)SEPPOTLアンプは過去に3台製作したが、往々にして熱暴走を起こし易い少し不安定なものであった。
そこで、マッチングトランスを使用して6080WC単管SEPPアンプを製作することにした。
- 使用部品
マッチングトランスにはパナソニック業務用として販売されているW2−ST60を使用する。
このマッチングトランスは1次側は167Ω−83Ω−COM、2次側は16Ω−8Ω−4Ω−COMとなっていて容量は60Wである。
現行品は2次側8Ω−6Ω−4Ω−COMに変更されている。
使用球は初段に12AT7(ECC82)、ドライバー位相反転段には6CL6(T)、共通カソードに接続する定電流回路には6CW5(T)を使用する。
電源トランスはSEL製SD−2820、ノグチトランス製PM−36050M、20V200mA×2(メーカー不明)の3個を使用する。
CHコイルはノグチトランス製PMC−0930H、ケースは旧スズラン堂製SL−8の天板を交換して使用する。
- 回路構成
出力段用第1B電源は280V200mAをブリッジ整流して最大DC120mA強を供給する。
167Ω負荷であれば最大出力時のプレート電流はあまり大きくないので十分である。
ドライバー段用第2B電源は360Vをブリッジ整流して供給する。
SW投入直後の第2B電源電圧は530V程度まで上昇するため、ダイオードマイナス側とアース間に220Ω抵抗を挿入してサージ電圧の上昇を少し下げることにする。
6080は非常に高いドライブ電圧を要する。
そこでドライバー段のB電圧を出来るだけ高くし、ドライバー管にも出力管である6CL6を3結で使用する。
また、初段との直結回路の電圧配分が悪いと最大出力が低下するので、細かく調整する必要がある。
バイアス電源は20V200mAを両波4倍圧整流して−117Vを得ている。
打ち消し回路はPNFB方式で、マッチングトランス1次側から6CW5のカソードへ帰還電圧を注入、NFBもマッチングトランス1次側から初段カソードへ戻している。
- 測定結果
周波数特性では目立ったピークやディップはなく、10KHZの矩形波応答も全く問題な無い。
マッチングトランス1次側からのNFBの効果で容量負荷時の安定性は非常に良い。
高域カットオフは72KHZ程度となった。
マッチングトランス2次側から戻せば高域遮断周波数が120KHZまで伸びるが、10KHZ矩形波で容量負荷時にリンギングが発生する。
750KHZ付近の小さなこぶは問題ないであろう。
NFBは左CH:16.3dB、右CH:15.3dBと少しアンバランスであるが、左右の利得を合わせた結果である。
残留雑音は左右とも0.1mV未満、DFは5.7〜5.8(ON−OFF法)程度であった。
1KHZと10KHZの歪率は良く揃っているが、100HZの歪率は低出力で少し悪化している。
また、10W付近で一旦歪率が低下してB級アンプの特性を示している
- 最大出力
最大出力は入力1.9VでLCHクリップ開始出力15.7W、RCH14.5Wが得られた。
左右で少し差があるが6080のバラツキと思われる。
少し低感度であるが、自作プリアンプを使用してちょうど良い感度となった。また、低域20HZにおける最大出力は中域の70%程度が得られた。
- その他
SEPPに適したオーディオ用マッチングトランスは、私の知る限りではイシノラボがハシモトトランスに特注して販売している製品(M−BF8030税込¥19,440)のみと思われる。
このマッチングトランスはバイファイラー巻で高性能である。
|