全帰還型6336B×2 MT付SEPPアンプ  平成26年8月17日   


  1. はじめに
     全帰還形6336B×2SEPPOTLアンプ(平成23年10月改造)にマッチングトランス(OT−300)を組み合わせたところ、少し動作が不安定となった。
     また、8Ωと50Ωでは打ち消し回路(出力端子から前段カソード)の定数を変更する必要があった。
     そこで、負荷インピーダンスが変わっても同じ定数で使用できる可能性を探るため改造することにした。

  2. 使用部品
     主要部品のほとんどは全帰還形6336B×2SEPPOTLアンプから流用したが、ドライバー段(位相反転段)の12BH7A、12AU7Aを6463、6414に変更した。
     マッチングトランス(QSC製OT−300)はオークションで入手したものを使用した。 23JS6A×4SEPPOTLアンプとマッチングトランス(OT−300) に使用したものと同じ製品であるが、別物である。 このトランスは端子がむき出し構造であるので自作木製ケースに収め、前面にターミナルを取り付けた。(右の写真参照)
     OT−300は高出力半導体アンプの出力電圧をステップアップし、電力を遠くまで送るために使用するものであるが、OTLアンプでは逆にステップダウンとして使用する。
     容量は70V300Wとあるが、サイズから考えて低域では75W程度が限度と思われる。サイズは 約95mm(W) x 約80mm(H) x 約98mm(D) 、重量約2.9kgである。
     タップは70V−35V−28V−24V−COMに出されている。 インピーダンスは電圧比の2乗に比例することから、各タップに4Ω、6Ω、8Ω負荷を接続したときの70V-COM間インピーダンスを計算すれば下表の通りである。
     このように、各種インピーダンスに対応出来るので便利である。


木製ケースに収めたQSC製マッチングトランスOT−300


  1. 回路構成
     初段は12AX7AによるSRPP、位相反転回路は6463によるカソード結合型である。この球は12BH7と類似であるが直線性はすぐれているようである。但し、ピン接続が異なっているので差し替えはできない。
     9PMTソケットが余ったので共通カソード抵抗を6414パラによる真空管抵抗とした。
     打ち消し回路はもっとも基本的な位相反転段の上段プレートに出力電圧を注入するブートストラップ方式を採用したが、位相反転回路のカソード抵抗を真空管抵抗としておけばPNFB型打ち消し回路に改造することも容易である。

  2. 測定結果
     50Ω負荷時、入力電圧2.1Vでクリップ開始出力50W(1KHZ)が得られた。流石に10HZにおける最大出力は20Wまで低下しているが、20HZでは45Wが得られている。 20KHZにおける最大出力も40Wが得られている。
     6336Bで最大出力が得られる負荷抵抗は40Ω前後であるが、32Ωでも50Ωでも最大出力に大差はない。 負荷抵抗が大きい方が最大出力時のプレート電圧低下が少ない(最大出力時のプレート電流が低下する)影響で最大出力は50Ωの方が僅かに大きくなる。 しかも、ロードラインの傾きが大きいこと、NFBが増加するなどの効果で歪率は低下するので、50Ω負荷とした。
     高域の減衰が少し早く、43KHZで−3dBとなったが、高域は素直に減衰している。これは容量負荷時の10KHZ矩形波応答でも明らかである。 左右で少し減衰カーブが異なっているのはマッチングトランスの特性である。
     50Ω負荷時の残留雑音はLCH0.08mV、RCH0.15mV、ダンピングファクターは13.2であった。 なお、8Ω負荷時はの残留雑音はLCH0.18mV、RCH0.35mV、ダンピングファクターは4であった。
     高帰還アンプのため、最大出力付近まではかなり低歪で推移している。50Ω負荷時のNFBは22.5dB、8Ω負荷時はロータリーSWで負帰還抵抗並列に6KΩと150PFを追加しても18.5dBである。
     クロストークはRCH→LCHが高域で少し悪化しているが、10KHZで−80dBが得られている。 中域で平坦になっているのは残留雑音による測定限界値の影響である。

  3. その他
     下の図はSW投入直後から30分経過するまでの6336Bの各プレート電流推移を記録したグラフである。 上段の片側ユニットが劣化している影響で、定常状態に至るまで30分近くを要するが、その後は安定している。 最低でも15分程度の余熱が必要である。



     PNFB型、あるいは全帰還型の打消し回路では10KHZの歪率が悪化し易く、下段出力管グリッドとプレート間にコンデンサーを挿入する等の対策が必要であるが、ブートストラップ型ではそういった傾向はみられない。
     底部にはφ80mmのDC24V低騒音型ファンを取り付けて、強制冷却を行っている。DC電源は約17V(12Vのブリッジ整流)を供給している。


背 面 写 真


内 部 写 真


電源トランス直下に取り付けた冷却ファン

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