マッチングトランス付平衡ドライブ6DQ5SEPPアンプ   平成25年9月21日 


マッチングトランス付平衡ドライブ6DQ5SEPPアンプ


《 はじめに 》
 平成25年7月に製作した6GB3ANEPP好結果が得られたので、今回は6DQ5を使ってマッチングトランス付平衡ドライブ6DQ5SEPPアンプを製作した。 6DQ5は名古屋のH田氏から頂いたものである。
 6DQ5は初期の大型水平出力管でプレート損失24W、スクリーングリッド損失3.2Wであるが、スクリーングリッド最大電圧が190Vで少し低い。
 プレート電圧180V、200Ω負荷時の最大出力は17.5W程度が得られる模様。 6DQ5(3結)SEPPアンプの最大出力参照。

《 使用部品 》
 OPTは西崎電機特注品で200Ω/8Ω、オリエントコアー使用、1次4分割直列、2次5分割並列のサンドイッチ巻線構造である。
 パワートランスは手持ちの関係でタンゴMX280を使用したが、かなりのオーバースペックである。 CHコイルはノグチトランスのPMC−0930(0.9H300mA)を使用した。 ケースはSL−8(旧スズラン堂)の天板を交換したものである。
 出力管はもちろん6DQ5(東芝製)である。 初段には5755、ドライブ段には6463とあまり馴染みのない球を選択した。

《 回路構成 》
 初段は5755による差動型位相反転回路、ドライブ段は6463による準差動回路である。 5755は内部抵抗が高くてバラツキも大きい球で、差動増幅には向いていない印象である。 購入した8本中使用できたのは2本のみであった。1本600円であるから、致し方ないとも思える。
 出力段は6DQ5SEPPにマッチングトランスを使用し、1次側中点を接地した平衡ドライブ型である。 この回路の特徴はSEPPの上下段に同量の負帰還が掛るため、打ち消し回路が不要になることである。しかし、ACバランス調整は必要。 200Ω負荷時の1次側出力電圧は約60V、その半分30Vが帰還電圧となる。 バイアス電圧が−40Vとすれば実効値で約58V、ピーク値では約82Vのドライブ電圧が要求される。 そこで前段のプレート供給電圧は出来るだけ高くする必要がある。 このアンプでは340Vをブリッジ整流して470Vを供給している。
 6GB3ANEPPではドライブ電圧を大きくするため、ドライブ段にSRPPを採用したが、今回は普通の準差動PPである。 そのため、ドライブ段最大出力電圧(実効値)は80V程度となっている。
 最初、6DQ5のグリッドリーク抵抗を100KΩ、カップリングコンデンサー0.1μF(時定数10μF・KΩ)にしていたが、低域(20HZ以下)ではドライブ電圧不足を生じていた。 そこで、グリッドリーク抵抗を220KΩ、カップリングコンデンサーを0.22μF(時定数48.4μF・KΩ)に変更した。
 規格表には6DQ5のグリッドリーク抵抗最大値は470KΩと記載されているが、固定バイアス時の記載はない。 一般的に固定バイアス時のグリッドリーク抵抗は自己バイアス時よりも低くする必要があるが、自家用で使用することに限定すれば220KΩは許される範囲内と考えられる。
 アイドリング時の所要電流は100mA、最大出力時の所要電流は155mA程度であることから、B電源にかなりの余裕がある。 その効果で最大出力時のプレート電圧は4V程度(上下段では8V)しか低下しない。

《 最大出力、測定結果 》
 入力0.78Vで18.6Wの最大出力が得られた。プレート電圧が少し高いため15%増加、OPTの効率を93%とすれば、ほぼ計算通りである。
 オーバーオール負帰還は12dB、DF値は13.2、残留雑音は0.45mVであった。
 周波数特性上に目立ったピークやディップは発生していないが、左右で超高域特性に差がみられる。これはOPTのバラツキと思われる。  20HZおける最大出力低下が大きい原因はOPTの限界と思われる。 
 使用したマッチングトランスが貧弱なため0.7W時の10HZ波形はかなり歪んでいる。そのため平均値指示型計器で測定した値はプラス誤差が発生している模様である。 ちなみに、0.2W程度で測定すればピークの発生はなく、僅かに減衰している。

《 その他 》
 6DQ5の手持ちは6本のみであることから、特にペアーマッチングは意識しないで適当に挿入した。後はDC、ACバランス調整で済ませている。
 B電源容量は150mAもあれば足りるのでPMC-150Mで十分であるが、高圧の第2B電源用として別途PTを用意する必要がある。 2個のトランスを購入するより特注した方が安上がりかも知れない。
 特注する場合に気を付けることは第1B電源全体が出力電圧の半分で充電されているため、トランス内部にシールドが必要となることである。 特にステレオ構成にする場合は両B電源巻き線間にも必要である。
 下段カップリングコンデンサーを0.47μF2個直列とした理由は、SWオン直後にカップリングコンデンサー両端電圧が730V程度まで上昇するので安全のためである。 ウォーミングアップ後は563V程度に落ち着く。



内部配線



背  面

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