6RA3×2マッチングトランス付SEPPアンプ  平成31年4月13日 


6RA3×2マッチングトランス付SEPPアンプ

  1. はじめに
     先日オークションでNEC製レギュレーター管6RA3を10本入手することができた。 そこでこの球を使ったSEPPアンプを製作することにした。 6RA3は内部抵抗が低いのでOTLアンプにも使用することが可能な球であるが、今回はMT付SEPPアンプとして製作する。
     設計に取り掛かる前に、6RA3を使ったSEPPアンプの負荷抵抗対最大出力の関係を計算した。 その結果は6RA3SEPPアンプの最大出力の通りで、プレート電圧±150V、 100〜200Ω負荷で11W程度が得られる模様。
  1. 使用部品
     シャーシーは旧スズラン堂製SL−10を使用し、天板は1.5oアルミ板を加工する。 両サイドには不要な穴が開いていたので、目隠しを兼ねて水性ニスを塗った側板を取り付ける。
     電源トランスは西崎電機特注品、CHコイルは春日製4B015A(1H150mA)を2個使用する。 マッチングトランスは業務用として製造された松下製W2−ST30を使用する。 このマッチングトランスの規格は1次側330Ω-167Ω-COM、2次側8Ω-6Ω-COM、容量30Wとなっている。 容量的にはW2-ST15で十分であるが、1次側インピーダンスを考慮してこのトランスとする。
     リード線が側面引き出しとなっていたのでタカチ製MB-12Sに収めて取り付ける。 また、CHコイル1個と220μF450V電解コンデンサー4個はリード製PL−4に収めて取り付ける。
     出力管は6RA3、初段は12AX7A、ドライバー段は12BH7Aを使用する。 共通カソードに接続する定電流回路には6BQ5や6CW5を3極管接続として使用すれば好結果が得られるのであるが、 ヒーター容量に余裕がなく12AU7(パラ)を採用する。

  2. 回路構成
     出力段用第1B電源は左右別とし、それぞれ250V200mAをブリッジ整流して±166V、最大DC125mAを供給する。 ドライバー段用第2B電源は160Vを倍電圧整流して供給する。 バイアス電源は4組の50V30mAをブリッジ整流して供給する。 無信号時のプレート電流は47mAに設定、その時のプレート損失は7.89W、最大定格15Wに対して53%となっている。
     打ち消し回路はPNFB方式で、マッチングトランス1次側から12AU7のカソードへ帰還電圧を注入する。
     NFBは1次側と2次側をSWで切り替えが出来るようにする。

  3. 測定結果
     100KHZ以上では小さなピークやディップが観測され、高域の遮断周波数は1次側から帰還した場合は約50KHZ、 2次側から帰還した場合は約90KHZとなった。 6FM7×2MT付SEPPアンプとほぼ同じである。
     周波数特性以外はNFBを1次側、2次側のいずれから掛けてもほとんど差は無かった。
     NFBは約12dBに設定、残留雑音は左右CH共0.3mV程度であった。 DFは1次側から帰還した場合は6、2次側から帰還した場合は10.6であった。 1次側からの帰還では2次側巻き線抵抗値の影響を受けて少し低くなった。

  4. 最大出力
     入力0.45Vでクリップ開始出力7W(1KHZ)が得られたが、負荷を330Ωにした影響で予想を少し下回った。 167Ω負荷とすれば約10Wまで増加させることができるが、高域にあばれが発生した。 また、330Ωの方が低ひずみとなるので330Ωとした。
     10HZにおける最大出力は中域の28%程度まで低下していたが、20HZでは中域の約87%が得られた。 余裕のあるMTの効果ではないだろうか。
  1. その他
     シャーシー上面にテストピンを左右に取り付け、DCバランスとプレート電流測定の切り替えSWを取り付けた。 また、出力段のバイアス調整はMQ−36と同方式で10KΩ2連VRを4個使用している。 この方式は単連VR4個を使用した場合と比較して調整時の利便性が向上する。 難点は2連VRの価格が高いことである。
     6RA3のドライブ電圧が高いため、前段供給電圧400Vでは出力段より前にドライブ段出力が飽和している模様である。 DC供給電圧を450V程度まで上げればもう少し最大出力が増加するのではないだろうか。
     下段のカップリングコンデンサーの耐圧は630Vでは不足するので必ず750V以上のものを使用しなければならない。 入手できない場合は0.22μF(400V耐圧以上)を2個直列で代用できる。
     市販品電源トランスの中にはSEPPアンプ用の製品は見当たらなく、特注せざるを得ないことがネックである。

バイアス調整、PPバランス調整用VRとテストピン、W2−ST30、電解コンデンサーとCHコイル


内部配線


背  面  写  真

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