レーンオイルとボールの不思議      
  1. レーンのオイル

     レーンには表面保護のためのオイルが塗布されていますが、これが曲者なのです。 レーンのメンテナンス直後は、ファールラインから30〜40フィート辺りまで、レーン中央部を厚めに、両サイドは薄くオイルが塗られています。 そこから先、ピンデッキまでは乾いた状態です。
     その状態がいつまでも維持されていればハイスコア−を続けることも可能ですが、投球数に従いオイルのコンディションは変化します。 その変化を読みながら投球コースを変えるなどの対策(ストレートボールの場合は必要ありません)が必要になります。 時には曲がり方の違うボールに替える場合もあります。
     ピンデッキまでオイルが伸びてしまえば、たとえプロボウラーであっても高い点数を出すことは難しいでしょう。
     一般に右投げのボウラーが多いため、右側手前のオイルがボール表面に付いてピンの方へ延びて行き、手前のオイルが次第に薄くなってゆきます。 この状態を、俗にオイルのキャリーダウンと呼んでいます。 この状態まで変化すると、ピンの手前でボールが滑って曲がらなくなり、ボールの威力が減少します。
     スプリット(ピンが離れた状態に残ること)、あるいは右投げの場合は10番ピン(右奥のピン)、左投げの場合は7番ピン(左奥のピン)が残る確率が高くなります。 試合中にレーンのメンテナンスを行うことはありません。 したがって、ボウリングはレーンコンディションとの戦いであると言えます。
     このとき、サウスポーは少ないので有利になります。 レーンの右半分はコンディション変化が激しいく、左半分は変化が少なく、ボールの曲がりが安定した状態が長続きします。 たまたま、サウスポーの割合が高い場合は、逆に右投げが有利となる場合もあります。
     また、右投げでありながら、左投げと同じコースを使用して投げる(レーンの左側から投げて右へ曲げる)ボウラーも見かけます。
     また、ボウリング場によっては、レーンの両側(5インチ程度)は全くオイルを塗っていないことがありますが、これはトリックレーン、あるいはハイスコア−レーンと呼ばれて正しい方法ではありません。 つまりハイスコア−を出すためのオイルの塗布方法です。 オイルの境目を投げれば、ストライクの確率が非常に高くなります。 したがって、公式戦では認められていません。
     下図は、レーンコンディションが良いときのストライクコースでです。 ボールの曲がり方により無数のストライクコースが存在します。 色の濃い部分はオイル量が多く、薄い部分は少ない。白い部分はまったくオイルがないか、非常に少ない状態を表しています。


    レーンコンディションが良好な状態


    少しオイルが伸びてヘッドピン右へボールがずれ始めた状態


     投球数にしたがってレーンのオイルコンディションは変化してゆきます。 (オイルのキャリーリダウン)始めは、オイルにボールが乗って滑っり、ヘッドピン(1番ピン)の右側へはずれるようになってきます。(上図)
     さらに手前のオイルが無くなると、下図のように、ボールが手前から曲がり始め、ストライクコースから左側にはずれてきます。 いずれにしても、そのままではストライクが出なくなります。
     そのため常にレーンコンディションを考えて、微調整を必要とします。 ボールが1番ピンの左側まで曲がった場所に意外とストライクの確率が高くなる場所があります。 そのときのストライクを「ブルックリンストライク」と呼んでいます。 ニューヨークマンハッタンのイーストリバー対岸がブルックリンであることから名前が付けられたそうです。


    手前のオイルが薄くなり、手前からボールが曲がり始めた状態


  2. ボールの重心について

     ボールの断面図を見ると、内部はいろいろな形をしていますが、全てに共通していることは、重心がボールの中心に位置していないことです。 つまり、指穴を開ける側に重心が片寄って作られていて、指穴を開ければほぼ中心に重心が来るようになります。 しかし、人により指の太さも違えば、穴の位置もちがっていますから、重心の位置も微妙に異なっています。
     公式戦で使用されるボールにはその重心の位置に関する規格があります。 規格外のボールを使用した場合は失格となります。
     その検査にはバランサー(下の写真)と呼ばれるはかりが使用されます。 ボールの指穴の中心を求め、その点から、前後、左右、上下についてバランスを測定します。 前後、左右は1オンス(28g)以内、上下は3オンス(84g)以内と定められています。
     その場合、重心の位置によってボールの曲がりが変化しますが、かなり難しい理論ですから、一般には、ボウリング場のドリラー(穴を開けることが出来る有資格者)にお願いして、自分の希望する曲がりになるように穴を開けてもらいます。
     しかし、ボールの曲がりに対する影響度は、表面の材質が80%、重心位置が20%程度ですから、ボールの選択がまず大事です。 曲がるボール、曲がらないボール、レーン手前から曲がり始めるボール、レーン奥まで滑り、最後に鋭く曲がるボール等が製造販売され、その数はおよそ数千種類です。


    バランサーにてボール検査中


  3. 球質(回転の具合)について

     ボールの円周とレーンの長さから計算すればボウラーの手から離れてヘッドピンに到達するまで転がれば26.7回転することになりますが、実際にはそこまでは回転しなくてオイル上を滑走します。
     普通は15〜20回転する程度ですが、その回転方向が問題です。 進行方向と回転方向が同じ場合は、ほとんど曲がることはなく、ボールに威力がありません。 進行方向と回転方向が違っているほどピンを倒す力が強くなる傾向があるようです。
     45度方向に回転する場合を「セミローリング」、横方向に近い回転をする場合を「スピナー」と呼びます。 台湾や香港の選手が投げる、真横に回転するボールを「ユーフォーボール」と呼びます。 この球質は軽いボールであっても非常に威力がありますが、投球方法、特に手首の使い方が難しく、私にはとても投げられません。



  4. なぜボールを曲げるか?

     ボウリングメーカーの実験によれば、ボールの進入角度により、ストライクの確率が変化します。 およそ3度から6度の範囲で1番ピンと3番ピンの間(左投げの場合は1番ピンと2番ピンの間)にボールが進入すれば、ほぼ100%の確率でストライクになります。しかも、その幅が約3cm程度あります。 つまり少しのコントロールミスはカバーできるわけです。それに対してストレートボールの場合、レーンの端から1番ピンめがけて真っ直ぐ投げても1.5度の進入角度しか得られません。
     このとき、100%の確率でストライクになる位置の幅は僅か数mmしか存在しません。 そのため、少し上達したボウラーはボールを曲げようとするわけです。 それだけコントロールも要求され、レーンコンディションを読むことが必要になります。
     ストライクになる時、ボールが直接当たって倒すピンは4本(右投げの場合は1、3、5、9番ピン、左投げの場合は1、2、5、8番ピン)だけです。 残りのピンは将棋倒しになります。
     多くのボウラーたちが苦労することは、100%ストライクになるボールコース(ポケット)の僅か右側に10番ピンが残ってしまうコースがあることです。 この現象を10ピンタップと呼びますが、これは避けて通れません。
     つまり、オイルのキャリーダウンによりボールの曲がる位置が少しだけピンに近くなると起きる現象です。 10番ピンを確実にスペアーにするためには、ボールの投球方法を変える、スピードを早くして曲がりにくいボールを投げる。 あるいは、曲がらないボールに変えて投球します。 10ピンスペアーの確率を上げれば、10点以上アベレージが上がります。


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