屋内配線の極性について  平成17年12月2日 

 屋内配線の片側はなぜ接地してあるのであろうか? 普段は特別気にかけていないことであるがそれなりの理由がある。 また、コンセントの差込口の大きさが左右で異なっているのはなぜだろうか?  オーディオとはまったく関係ない内容であるが、これらの理由について考えてみることにする。


  1. 屋内配線の片側を接地する理由

     正確には単相2線式105V配線の片側、単相3線式210/105V配線の中性線の接地である。 電気は発電所、あるいは変電所からは3相6,600Vで送電され、近くの柱上(地中配線の場合は地下)に設置された変圧器により単相3線式210/105Vに変換して各家庭に送電されている。 この場合、正常であれば家庭における屋内配線の対地電圧は105Vを越えない。(第1図参照)
     なお、一般に動力配線(3相3線式)の対地電圧220V(V型結線方式の場合は約182V)であるが、原則として一般家庭には使用できないこととなっている。 V型結線方式はこのページの最後。
     一方、2次側の接地が施されていない場合はどうなるであろうか。変圧器1次側の3相6,600V配電線路は非接地であるため、屋内配線の対地電圧が上限規制値(150V)をはるかに越える事態となる。 つまり、1次側の6,600Vが配電線路の対地静電容量と変圧器1次2次巻線間の静電容量により分圧され、2次側(屋内)配線の対地電圧として現れる。
     また、変圧器内で高低圧混触事故等が発生した場合、2次側に接地が施されていなければ屋内配線の対地電圧が非常に高くなり危険である。 しかし、2次側に接地が施されていれば、変圧器2次側から地絡電流が流れても2次側の対地電圧はあまり上昇しない。(第2図参照)

       2次側(屋内)配線の対地電圧=1線地絡電流(A)×接地抵抗値(Ω)

     たとえば地絡電流値が5A、接地抵抗値が50Ωであれば屋内配線の対地電圧は250Vになる計算であるから、実際にはあまり低い接地抵抗値は要求されない。 これは架空電線路の場合、対地静電容量が小さいため地絡電流値があまり大きくならないからである。 1線地絡電流値は2〜10A程度であるが、配電線路の総延長距離によりその値が変化し、長いほど大きい値となる。 一方、地中電線路の場合は対地静電容量が大きいので、地絡電流値も大きくなり変圧器2次側の接地抵抗値も低くしなければならない。

     以上のように変圧器2次側の接地は安全面からみて非常に大切であり、省略することは出来ない。 屋内配線の対地電圧上限値は150Vであるが、最近では変圧器の事故が減少しているため、1秒以内に遮断すれば600Vまで、1秒を越えて2秒以内に遮断すれば300Vまでと対地電圧の上限値が緩和されている。
     その他にも電気工事の際、検電器(ネオン管内蔵で対地電圧の検出に用いられるもの)1本で極性が見分け易いという利点もある。つまり誤結線が少なくなる。

  1. コンセントの接地側が非接地側よりも縦長になっている理由

     一般に100V用2P(3P)15Aコンセントは向かって左側が縦長の差込口となっているが、単に接地側であることを示す目印と思われる。安全のため、「接地側が一瞬でも早く接触するようになっているのではないか?」とも考えたが、少し考えすぎかも知れない。
     なお、接地側は必ず向かって左側と決められている。もし右側になっていたら、施工業者の良識を疑わねばならない。 その時、コンセント本体に刻印されている文字も上下がさかさまになっているはずである。 また、実際に左側が縦長となる正常な向きに取り付けられていても、時として裏側の結線が逆の場合がある。 このような仕事をする職人は、「電気屋の風上にも置けない!」と言わざるを得ない。(第3図参照)



     一方、コンセントの差込口の大きさが同じである製品も存在する。これらは一般的にコンセントに差し込んで使用するテーブルタップの類である。 つまり、プラグの差込方向により極性が入れ替わるため、接地側が確定しないからである。
     また、どちら側も非接地である単相200V用のコンセントや差込方向を変更できないタイプにも差込穴の寸法が同じものが製造されているが、誤って100V用の機器が接続されないように、形状や大きさが異なっている。(第4図参照)

  1. V型結線方式

     下図がV型結線方式であるが、単相変圧器2台で3相210Vと単相210/105Vを送ることが出来る結線方法である。 ただし、使用できる容量は2台の変圧器容量の合計よりも小さくなる。 一般に単相210/105V用(Tr1)の変圧器容量を大きくして使用される。 Tr2の容量は接続される3相210V負荷の大きさにより決定され、Tr1はその容量に単相210/105V負荷を加えたものが使用される。 工事費(変圧器代)を安くするために使われる方法である。 電力会社の電柱に大きな変圧器と小さな変圧器が並んで取り付けられている状態を良く見かけるが、住宅街には3相210Vが不要であるためほとんど見られない。
     この時、単相210/105V回路の対地電圧は105Vであるが、三相210V回路は182/105Vと変則的である。 (182Vは105V×√3)これは三角定規の辺の比(1:2:√3)を思い浮かべれば理解していただけると思う。


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