内部配線 依頼主からの情報では電解コンデンサーの頭部が膨張しているので点検して欲しいとのことであったが、実物を見ると、頭部のプラスチックの部分が変形しているのみで、アルミ缶体は異常ないように思われた。 とりあえず電解コンデンサーを全て取り外し、容量チェックとリーク電流測定を実施したが、容量もリーク電流まったく問題なかった。 しかし、頭部が膨らんだ状態では見た目も良くなく、絶縁カバーが一部破れて感電の恐れがある状態であった。 そこで膨らんだプラスチック板を取り外し、円形の絶縁カバーを接着してアルミ缶が露出しないように補修した。 プラスチックが変形した原因は6336からの熱の影響と思われるが、電解コンデンサーと6336間に設けた熱遮蔽板により、動作中の電解コンデンサー温度上昇をかなり抑えることが出来ると思う。 《 内部のチェック 》 次にシャーシ内部の点検を実施した。数点の抵抗が変色し過電流が流れた形跡があり、バイアス調整用のVRにも不良品が1個見つかったので交換した。 6336のプレートに挿入されている5.1Ω抵抗は、プレート電流の測定に利用するので正確なものが要求されるが、あまり正確な値ではなかったので全て交換した。 また、出力段の調整にはプラスマイナス電源中間点のテストポイントを設けた方が調整時に便利であることから、100KΩ抵抗2個を直列にしてプラスマイナス電源に接続した。(回路図参照) ここまで来てやっとSWを入れることが出来る状態となった。 調整の手順は以下の通りである。なお、安全のため調整しないCHの電源ヒューズは抜いおく。 《 調整の手順 》
以上の調整は、少なくとも電源を入れてから最低でも20分以上経過し、温度が安定してから行わなければならない。 上の4と5の調整中、VR3を一杯に回さなければならない状態が発生した。しかも最低歪率が1%(1W時)以下に下がらない。 初段6072のカソード抵抗を少し大きくすると歪率が下がることが判明したので1.1KΩ抵抗を2.2KΩに変更したところ、1W時の歪率は劇的(0.25%)に下がった。 しかし、最大出力は10Wに届かない。打ち消し動作のバランスが崩れた状態と思われる。 そこで6072のカソード抵抗を1.4KΩに、次段12AU7の下側プレート抵抗を33KΩから43KΩに変更した。 再度調整した結果、歪率は0.5%以下に減少し、最大出力が16Wまで増加した。歪みは正弦波の片側が少し丸くなる形であるから、主に偶数次の歪が発生していると思われる。 NFBは10dB、入力1.2Vで最大出力16Wが得られた。残留雑音が約2mVと少し大きいが、耳をスピーカーから10cmまで近づけて聞こえる程度である。 ヒーターがフローティングの影響ではないかと考えて、V1とV2のヒーター巻き線センタータップをアース接続したが、残留雑音に変化は見られなかった。 |
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最大出力16Wは、8Ω負荷であること、球が劣化していることを考慮すれば、まずまずの結果が得られたと思っている。
以下に最終の回路図と測定結果を示す。歪は少し多いが、歪率のカーブは各周波数で良く一致している。
また、周波数特性も高域まで良く伸びている。
回路図に記入してある電圧はあくまでも目安であり、電源電圧に影響を受けて変動するので参考程度に。 また、赤色の配線は追加した配線と部品を表している。 矩形波応答 RCH 8Ω1W |
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