MQ−60改造6CA7(T)PPアンプ      平成29年1月8日   

前面写真(ボンネットを外した状態)


《 はじめに 》

 昨年末、岡山のF氏からMQ−60の改造を依頼された。 清掃中に50CA10が壊れたので、入手の心配がないEL‐34PPアンプに改造して欲しいとのことであった。 内部を点検したところすでに自己バイアス方式に変更されていた。 改造前の内部写真、回路図を参照。 また、右CHのOPTがHPタイプに交換され、左CHはオリジナルのままであった。 これでは左右の特性が異なる可能性があるが、とりあえず現状で改造することにした。
 改造に際して一番の問題点は電源トランスである。 他の出力管を採用するにはヒーター電源を確保しなければならないが、ヒータートランスの取り付けスペースはない。 そこで、電源トランスを特注することで解決した。価格は送料込みで12000円弱であった。

  電源トランススペック
   1次電圧   100V
   2次電圧   0‐280V‐300VAC450mA(DC280mA)
           6.3V3.2A×2(6CA7用)
           6.3V2A(前段用)
           50V30mA(バイアス電源用)

《 回路構成 》

 内部配線はすべて交換されていたので、基本的には自己バイアスのままで改造することにした。 回路定数は一部を除いて現状のままとした。
 変更箇所は以下の通り。
  1. 電源トランスを上記特注品に交換
  2. 出力管を6CA7(松下製)の3極管接続に変更
  3. 出力段カソード抵抗を330Ωと470Ωの並列に変更
  4. 初段カソード抵抗が2.2KΩ+270Ωとなっていたところを2.2KΩ+100Ωに変更
  5. それに伴いNFB抵抗値も4.7KΩと150PFに変更
  6. 位相反転回路の共通カソード抵抗を10.8KΩ(15KΩと39KΩ並列)から18KΩに変更
  7. 初段のデカップリング回路の抵抗を120KΩから51KΩに変更
  8. 入力VRを東京光音製プラスチック抵抗2連VRに交換し、前面に取り付け。VRの前面への取り付けスペースはLuxmanMQ‐60の銘板のところしかないので、残念ながら撤去
  9. スピーカーインピーダンス変更用ロータリーSWは問題が多いので8Ω固定にして撤去
  10. VRから初段グリッドまでを2芯シールド線に変更
  11. OPT2次側に18Ω+0.22μFのゾベル回路を追加
  12. 前段ヒーター回路にハムバランサーを取り付け、40Vのヒーターバイアスを加える
  13. 出力端子を交換するため、電解コンデンサー取り付けバンドの位置をシャーシー上部に変更

《 測定結果 》

 OPTが左右で異なるため右CH(HPタイプ)の方が最大出力が大きい結果となった。 また、電力感度も右CHの方が高い状態であったので、NFB量を変えて左右の電力感度を揃えた。
 歪率は左右同じような傾向を示し、周波数特性も特性のバラツキ程度であり、HPタイプとの差は心配するほどではなかった。 10KHZ矩形波応答では右CH(HPタイプ)のオーバーシュートがわずかに大きい結果となった。 クロストーク特性ではL→Rの高域が悪化している原因は、VRを左CH側前面に取り付けた影響と思われる。
 残留雑音は左右とも0.2mV未満、NFBは左CH10dB、右CH11.5dB、DF値は左CH5.5、右CH6.3であった。 この程度の差であれば全く問題ないと思われる。

《 その他 》

 左CHのOPTをOY15‐5KHPに交換すれば長期安定動作が望めるが、OY−15−5KHPはオークションでも入手が難しいと思われる。



ボンネット付き


背面写真(出力端子交換済み)


内部配線



矩形波 LCH 8Ω 1W
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

矩形波 RCH 8Ω 1W
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)







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