中国製6L6GCシングルアンプのメンテナンス   平成27年11月3日 

前面写真                                背面写真

改造前の内部配線                           改造後の内部配線

《 はじめに 》

 先日、中国製6L6GCシングルアンプを入手したのでメンテナンスを兼ねて検証実験を行った。 このアンプの初段には6B8P(5極、双2極管)というトップグリッドの珍しい球が使用されていた。
 初めに各部の電圧測定を実施したが、片CHの6L6GCが少し劣化していたので、両CHとも手持ちの6L6GCに交換後、測定した。
 下の回路図は実機に基づいて作成したものである。記入電圧は6L6GC交換後の値。



《 点検結果 》
  1. 出力段は自己バイアスであるが、カソード抵抗300Ωでは最適動作点から外れ、1W時の歪率は1%を超えていた。
    カソード抵抗を180Ω程度に下げた方が良さそうである。
  2. 高域位相補償回路は何もなされていないため、高域に大きなディップ、ピークが発生していた。
  3. 矩形波応答はOPTの特性がそのまま出ている状態であるが、容量負荷でも安定はしていた。
  4. 入力端子からVRまでの配線に2芯シールド線が使用されていた影響で高域クロストーク特性はあまり良好ではなかった。
  5. 残留雑音が1〜1.5mV程度発生、6L6GCのヒーター配線がアースから浮いていたこと、初段球6B8Pの不良が原因と思われる。LCHは電源トランスの影響を受けている模様である。
  6. DFは2.2程度で、NFBが掛っているにしては少し低い。
  7. パワートランスの締め付けネジに絶縁ワッシャーが使用されていなかったのでとりつけた。
  8. 下表は6L6GCの自己バイアス動作例であるが、負荷抵抗5KΩに適合させるためにはスクリーングリッド電圧を200V程度まで下げた方が良さそうである。


《 改造内容 》

 下図は改造後の回路図である。赤記号の部分が追加変更した個所を示している。 6L6GCのカソード抵抗を183Ωにした結果、プレート電流が少し増加してB電源電圧が低下した。 しかし、最大出力の低下はほとんどなく、動作点が最適化された結果ではないだろうか。
 初段のカソード抵抗を2.2KΩ+100Ωに変更し、NFBは100Ω上段に戻した。NFB抵抗も10KΩから1KΩに変更した。 これにより少し初段の利得が上がり、NFBが増加してDF値も2.2から2.8に増加した。
 6B8Pのスクリーングリッドとアース間に151KΩを挿入してSG電圧を下げ、歪の打消し動作を行わせた結果、歪率は1/5以下に低下した。
 矩形波応答はオーバーシュートが少し改善されたのみであまり変化はない。周波数特性では高域の減衰が少し穏やかになった。
 OPTの特性が少し見劣りするが、通常の使用では全く問題ない状態に仕上がったと思っている。



《 改造後の測定結果 》  改造前の測定データはここ

改造後矩形波 LCH 8Ω 1W
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

改造後矩形波 RCH 8Ω 1W
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)







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