ラックスキットA3600改造記   平成18年9月24日 
《 はじめに 》
 ラックスキットA3600の修理を依頼されたが、出力管8045Gの1本に不良が見つかり大改造を行った。以下はそのレポートである。

《 故障内容 》
 A3600は8045GPP50W×2の性能であるが、電源SWを入れて真空管が温まると1本の8045Gのプレートが赤熱しヒューズが切れることがあるとのことであった。
 まず最初にOPT(OY15−5)の点検を行ったが、LCHの片側BP間の直流抵抗が異常に低い状態であり、この回路に接続されている8045Gのプレートが赤熱していた。 OPT1次側巻き線間絶縁破壊がおきていると思われる。
 また、赤熱していた8045Gの内部電極を点検したところ、内部電極支持材が熱で変形していた。 この球が熱暴走を起こし、過電流が流れてOPT内で層間短絡を起こしたと推測される。

《 改造箇所 》
 2個のOY−15−5の内、1個は使用可能状態であったが、片側のみOPTを交換したのでは見た目が良くないので2個とも山水SW30−6交換する。
 シャーシーの前後幅が188mmの中に幅91mmのOPT2個を取り付けるためには、取り付け穴の修正を行って、両側3mmのスペースが確保出来る計算である。
 出力管8045Gは予備球がなく、入手もほとんど不可能であるため、EL−34に交換する。

《 問題点 》
 使用されている電源トランスのB電源は370Vのタップのみであるため、ブリッジ整流したのではB電圧が500V以上に達する。EL−34プレート電圧は許容値以下で問題ないが、スクリーングリッド電圧が定格をオーバーする。
 抵抗でドロップしたのではスクリーングリッド電流の変動幅が大きく(8〜50mA)最大出力の低下は免れない。
 そこで、真空管(6GA4)による定電圧電源を組み込む事にしたが、取り付けスペースがないので100μ×3(200V)のブロック電解コンデンサーを取り外して確保した。 ブロックコンデンサーの代わりはチューブラ型をシャーシー内部に取り付けた。
 また、6GA4のヒーター回路はフローティングにしなければならないので、前段のヒーター巻き線(6.3V2A)を使用し、前段部のヒーターは分割して出力段と共用にしたが、巻き線電流容量はそれぞれ5.5Aであるからまったく問題ない。
 6GA4ではなく6EM7などの複合管を使用すれば電圧変動率をもっと少なくすることも可能であるが、今回はZDを多数直列にして基準電圧を取り出した。

《 最大出力他 》
 最大出力は60W近くまで伸びている。OPTの効率を85%とすれば1次側出力は70Wになる計算である。 (片CH動作時。両CH同時の場合は60W)ほぼ、メーカー発表のB1級PP高Eb(500V)動作規格の出力が得られているが、これは、スクリーングリッドに定電圧回路を挿入した効果と思われる。 最大出力時にプレート電圧が30V近く低下しても、スクリーングリッド電圧の低下は5V程度(510Ωの前)である。
 OPTの容量が30Wであるため、30HZ以下では最大出力がかなり低下しているが、これ以上大きなOPTは取り付け不可能であるから致し方ないことである。
 なお、出力管とOPTを交換したので、高域補正回路は全て取り外して新たに取り付けた。 また、元設計のままではNFBが20dB以上になり、高域が不安定であったので、NFBを12dBに減じた。 そのため最大出力に要する入力電圧は0.22Vと、少し高感度になりすぎたようである。
 10KHZ矩形波応答はお世辞にもきれいとはいえない状態である。

《 カバーの取り付け 》

カバーを取りつけた完成写真


前面写真


背面写真(手前右がスクリーングリッド用6GA4)


内部配線


やすりで加工した上部カバー
 最後にカバーを取り付ける段になって大失敗に気づいた。上部カバーがOPTの幅より狭く、取り付け出来ない。 カバー下部が内側に折り返してあるためである。仕方なく、やすりで加工したが、(右下写真参照)それでも完全に入らない。 よく見るとカバーの上部が5mmほど狭くなっていた。もはや板金加工しか残された方法はなく、金槌で内側から叩いて何とか収めることが出来た。 しかし、無残にもOPTに擦り傷が付いてしまった。カバーを取り付ければ見えない状態であったので、一応満足しているところである。

 以下に、改造後の回路図、周波数特性、クリッピングレベル周波数特性、雑音歪率、入出力特性、矩形波写真を示す。














RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.47μF)

LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.47μF)

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