商用電源のインピーダンスについて  平成16年 4月19日  
 電源コード、コンセント、商用電源のノイズ等々について、あちこちのオーディオ掲示板で取り沙汰されているようであるが、商用電源のインピーダンスについてはあまり議論されていない。 そこで、我が家の現状について調べることにした。

《投入堂》
 左の写真は国宝に指定されている鳥取県三徳山三佛寺奥の院「投入堂」(なげいれどう)である。 慶雲3年(706年)に役行者が法力により投げ込んだと伝えられている。大変険しい山道(修験道)を登った山腹の断崖絶壁に投げ込まれたように建っている。


電源インピーダンスの値

 発電所からコンセントまでの電源インピーダンスはどれくらいであろうか。正しくはインピーダンスを計算すべきであるが、面倒なので直流抵抗で試算した我が家の結果は下表の通りである。 電源インピーダンスの殆どは屋内配線に依存していると判断できる。特に問題となる部分は分電盤とコンセント間である。 約50%を占めている。なお、特別高圧配線と高圧配線の部分については少し距離が延びても影響は少ないと思われる。
 話題となっているアンプの電源コードの部分は0.75平方mmの場合は13%程度を占めているが、この部分をサイズアップすれば5%強に減少可能である。 しかし、どの程度の効果が期待できるか疑問である。なお、電源のインピーダンスは次の方法で簡単に測定でる。

  (1)800W程度の電気ストーブを用意する。
  (2)上記の器具をコンセントに接続する前の電圧(V0)を測定する。
  (3)次に器具をコンセントに接続した場合の電圧(V1)を測定する。
  (4)電源のインピーダンス=(V0−V1)÷負荷電流 で計算できる。

 一般に、0.2Ω〜0.5Ω程度と推測される。



電源改修工事

 第1図程度の改修工事を実施すれば、電源のインピーダンスを50%以下まで低下させることが可能である。 しかも電圧降下は4分の1まで改善される計算である。
 これから住宅の新築、あるいは改築工事を実施する場合は、少ない費用で可能であるが、単に電源のみの改修工事を行うとなれば、かなりの出費を覚悟しなければならない。 我が家の改修後の予測データを下表にまとめてみた。第1図、及び第2図の改修計画図参照のこと。 なお、以下の計算は負荷を完全に2等分した場合であるから、負荷がアンバランスになれば単相3線式の中性線に電流が流れ、少し換算抵抗値が大きくなる。


アンプの電源コードサイズアップ

 メインアンプの消費電流から考えて、コードのサイズアップによる効果はあまり期待出来ないと思われる。 我が家の場合、たとえば消費電流が1Aから2Aへ増加すれば0.416V低下するが、そのうち電源コードによる電圧降下は0.055V(13%)を占めているに過ぎない。 2.0平方mmのコードに交換しても、全体で0.382Vの電圧降下、内電源コードによる降下は0.021V(5%)に改善される程度である。 全体からみれば、ほんのわずかな効果しか得られない。



コンセントとプラグの接触抵抗

 コンセントとプラグの接触抵抗に関するデータを持ち合わせていないが、意外にコンセントとプラグとの接触抵抗が増加している可能性がある。 したがって、コードの材質、構造、あるいはエージングなどを云々する前に、コンセント、プラグの点検、あるいは交換を実施することが重要である。 何回もプラグを抜き差ししていると、少しゆるくなり、接触抵抗が増している場合がある。 当然のことであるが、コンセントやプラグが熱を持つ状態(少し温かい状態も含めて)は良くない。 メッキを施されていない部分の表面酸化が加速度的に進行する。コードを交換して音が変わる現象は、接触不良の改善による変化である場合がほとんどではないかと想像する。
 コンセントとプラグをなくすれば一番効果があるが、屋内配線と機器のコード類の直接接続を禁止した電気設備技術基準に違反することになる。
 なお、プラグの交換は無資格でも出来るが、壁コンセントの交換には資格が必要であるので、電気工事業者に依頼しなければならない。


まとめ

 アンプの動作に対する電源電圧の影響は、電圧降下より電圧変動率の方が重要と思うが、音声信号のピークが電源電圧に与える影響は微々たるものである。 たとえ大金を投じて電源の低インピーダンス化工事を実施しても、アンプ内の平滑コンデンサーが大容量であれば再生音に対する影響はほとんどないかもしれない。
 平滑コンデンサーの大容量化は自作アンプでは可能であるが、既製品では難しい。 しかし、高級アンプでは、その点について十分に考慮されているはずである。そうでなくては大金を投じる意味がない。
 そんな訳で我が家は工事計画のみで、工事施工の見込みは立っていない。しかも、大蔵省の同意も難しい状況である。
 電源コードを交換すれば音が変わるとの意見に対して否定はしないが、私はまったく交換する気はない。 高額なコードに投資する意味はない、効果は期待できないと考えている。また、ピンケーブルやスピーカーケーブルについても同様の考えである。

 平成16年11月に、ほぼ上記の計画書通りに電源改修工事を実施した。オーディオのためだけでは大蔵省の許可が得られない状況であったが、「30年近く前に建てた住宅であり、その当時と比べて電気の使用量がはるかに増加しているので改修の必要有り」と説得して実施することが出来た。
 その結果、電圧降下は0.9Vで収まった。工事施工前の約4Vから、4分の1まで改善されたことになり、ほぼ予測計算通りの結果である。 しかしながら、私の耳は再生音の変化をまったく感知することが出来ない。ただ、最大出力については1割弱増加していると思い、自己満足している状況である。 (平成16年11月17日)


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