トリオトライアンプAF−10のメンテナンス
平成23年1月12日
トリオトライアンプAF−10
《 はじめに 》
先日、名古屋のHM氏からトリオ製トライアンプAF−10のメンテナンスを依頼された。
AF−10は1958年発売のAM、FM、SWの3バンドチューナー内蔵のアンプである。メインアンプ部は6BM8PPが採用され、最大出力8W程度である。
しかしながら、すでに50年以上経過し、部品の劣化がかなり進んでいると思われる。
《 点検結果 》
まずは、裏蓋を取り外して内部を点検した結果、気が付いたことは次の通りである。なお、一部のコンデンサーはすでに交換されていた。
- 昔懐かしいペーパーコンデンサーが使用されていたが、絶縁不良のためすべて交換
- 電源部に使用されているブロック型電解コンデンサーは絶縁状態も良く、使用可能
- チューブラ型電解コンデンサーは絶縁不良のためすべて交換
- 中間周波増幅段へB電源を供給している抵抗が焼損半断線状態のため交換 抵抗値は不明
- チューナーを使用しない場合に使用するB電源ブリーダー抵抗12KΩ3Wが劣化していたので交換
- 出力管の劣化が進んでいると思われるので、それぞれのカソードにプレート電流測定用として抵抗(1Ω2W)を挿入
《 真空管ソケット調整 》
上記コンデンサー、抵抗などを交換の後、小型スピーカーを接続してSWを入れた。
真空管が温まるのを待って振動を与えるとガリガリと雑音が発生する。やはり真空管ソケットの接触不良がある。
ソケットにCRCを吹いて真空管を抜き差ししたのち、SWを入れたところ雑音は消えた。念のためソケットの受け金具の間隔を調整した。
敢えてソケットの交換は行わなかったが、これでほぼ万全である。
古い真空管アンプでは、同様に真空管ソケットの接触不良がよく見られるが、CRCはなかなか便利である。
《 改造箇所 》
普通は中間周波増幅段に100〜300Ωのカソード抵抗が挿入されているが、このアンプでは直接アースされている。
そのため電波が弱い場合はAVC電圧が低く、プレート電流が20mA以上に達していた。抵抗が焼損したのはそのためであろう。
そこで僅かに感度低下を招くが、カソードに100Ωとバイパスコンデンサー0.1μFを挿入した結果、プレート電流は15mAまで低下した。
《 出力段のDCバランス調整 》
各カソードに挿入した抵抗の両端電圧は0.038V、0.032Vである。電流値にして38mA、32mAである。
しかし、このアンプは自己バイアス方式のため個別にプレート電流の調整は出来ない。
そこで電流値の少ない側のグリッドリーク抵抗とアース間にプラス電圧を注入して調整することにした。
プラス電圧は出力管カソードから取り出す。
この方法では僅かにDC正帰還が掛かってプレート電流の安定性に欠ける可能性があったが、しばらく様子を見ても異常はなく、アンバランス電流も2mA以内に収まっている。
《 ダイヤル指針と周波数調整 》
ダイヤル指針の調整から始める。周波数が判っている放送を受信し、指針の位置を確認する。低い周波数は発振コイルの調整ネジで、高い周波数はバリコン上部のトリマーコンデンサーで調整する。
この作業を繰返して、ダイヤル指針と受信周波数を一致させる。糸に取り付けられている指針本体を移動することが必要になる場合もある。
《 AM中間周波トランス(IFT)調整 》
IFTの調整はテスターを使用した方が便利である。AM放送を受信した状態でAVC電圧が最も高くなるようにIFTの調整ネジ(上下4ヶ所)を回せば良い。
なお、調整用マイナスドライバーは非磁性体のものがあればベストである。
AVCとは電波の強弱によって変化する検波出力マイナス電圧を周波数変換管、中間周波増幅段(リモートカットオフ管)のグリッドに注入して受信感度を調整する方法である。
AVC電圧は1段目IFTのE端子側とアース間を測定する。マジックアイもこの電圧の強弱を利用している。
《 FM中間周波トランス調整 》
これが最大の難関である。正確に調整するためには高周波発振器が必要である。
まず、FM放送電波を受信しながら最大感度となる位置にあわせる。
AMの場合はこれで終了であるがFMの場合、そのままでは歪が多くなるので、上下の調整ネジを僅かにまわしながら音を聴き、最良点を探さねばならない。
この時、上下の調整ネジは逆方向に半回転程度回すことで共振の幅が広がり、歪みが改善される。
以上でメンテナンスは無事終了した。
上部写真
内部写真
交換した部品
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