KMQ−60のメンテナンス
平成27年11月25日
前面写真(ボンネットを外した状態)
《 はじめに 》
先日、KMQ−60を知人から入手し、メンテナンス改造を行った。
各部の電圧に異常は見られなかったが、左CHの最大出力が10W程度に下がっていた。左CHは30Wで異常ない。
《 点検結果 》
- 左CHのOY−15−5K1次側巻線抵抗を測定した結果、片側が半断線状態であることが判明。
- 内部配線、特に高圧部分の電線が細く、耐圧が不十分と思われる。また、交流回路の配線が撚り合されていない。
- チューブラ型電解コンデンサーは交換されていたが、フィルムコンデンサーは1部しか交換されていなかった。
- 右CHの50CA10が劣化している模様。
- 右CH初段の6267がエミ減を起こしていた。6AQ8はまだ大丈夫と思われる。
- 初段B電源のデカップリング回路が共通になっているため、低域のクロストークが悪化している模様。
- ドライバー段のプレート抵抗に上下段とも33KΩが使用されているため、ACバランスが取れていないと思われる。
- DCバランス調整用半固定抵抗は交換されていない。
《 改造内容 》
- OY−15−5Kはオークションで購入して交換した。
- 内部配線はほとんど交換して再配線し、AC100V回路、ヒーター回路の配線を撚り合せた。高圧部分は600V耐圧の電線に交換した。
- フィルムコンデンサーは4個(0.47μF2個、0.22μF2個)を交換した。
- 右CHの50CA10は手持ちの中から選別して交換した。ブラックプレートではなくグレープレート(後期の製品)である。
- 初段の6267は手持ちの日立製に交換した。
- 初段B電源のデカップリング回路を別にし450V22μF2個を取り付けた。余った47μF500Vは出力段の33μFと並列とした。
- ドライバー段のプレート抵抗に上下段とも33KΩが使用されていたので下段にLch5.5KΩ、RCH3.3KΩを挿入した。
- DCバランス調整用の半固定抵抗4個を交換した。
- バイアス電源整流回路を半波整流からブリッジ整流に変更した。
《 測定結果 》
最大出力は32Wとなり、初期の性能を取り戻した。
また、ACバランス調整により1KHZ10W時の歪率は0.1%を下回っている。
10KHZの歪率が悪化している原因は高域の位相補償(クロス帰還回路)と思われるが、原設計通りとした。
10KHZの歪率は他のKMQ−60と同じ傾向を示している。
高域補償回路が効いているのか、容量負荷時の矩形波応答は問題ない。やはりOY15型OPTは優秀である。
残留雑音はLCH0.35mV、RCH0.25mVで良好、NFBは19dB程度、DF値は左右とも約10である。
これで当分の間は正常に動作すると思われる。
背面写真(出力端子交換済み)
内部配線
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