マックトンOTLアンプM−7S改造記    平成27年4月22日   


マックトンOTLアンプM−7S


《 はじめに 》

 このアンプは50CA10×4SEPPアンプと同じ、滋賀県のK氏所有のものである。 SWを入れてしばらくすると歪が多くなるとのことで、回路図を送って頂いた。このアンプは6C19Pを左右で20本使用したSEPPOTLアンプである。
 問題点は、バイアス調整回路が5本同時に行う構造となっていること、出力段B電源が左右共用となっていることである。 そのため、球の劣化が進行すればDCバランスに狂いが生じて都合が悪い。これでは長期安定動作は望めない。
 つまり、左右の出力管とそれらの出力点でブリッジを構成しているため、DCバランスが狂ってくるとスピーカー回路に直流が流れる可能性がある。
 この電流値が多くなればスピーカー(ウーハー)の停止位置がずれて、歪が多く発生することがある。 このアンプはそういった現象を起こしていたと思われる。

《 回路の検討 》

 5球のバイアス回路を共通とする方式は、多数の球から選別可能なメーカと違って、メンテナンスを行うには非常に不便なバイアス方式である。
 そこで、全ての球を個別バイアス調整法とすることにした。
 個別バイアス方式とするには、すべての出力管にカップリングコンデンサーとグリッドリーク抵抗が必要となる。 原設計では0.25μFと50KΩが使用されていたので、0.047μFと250KΩとすれば時定数に変わりはなく、ドライバー段の交流負荷も同じとすることが出来る。

 出力段B電源を中点接地方式からマイナス接地方式に変更し、出力コンデンサーを取り付けることにした。
 ブロック電解コンデンサーを取り付けるスペースがどこかに確保できないか尋ねたところ、小さいサイズであれば4個取り付け可能とのこと、これでマイナス接地、出力コンデンサー方式に改造可能である。 出力コンデンサーには1200μF250V4個を取り付けることにした。
 ここまではK氏の手によって改造が進んだが、測定器が無いため、最後の詰めが出来ないとのことである。 幸い、滋賀県に出かける便があったので持ち帰ることにした。

《 メンテナンス 》

 ほとんどの改造は終わっていたので、メンテナンスと言っても、各部電圧と歪のチェック程度である。 各プレートに挿入された10Ω抵抗の両端電圧をロータリーSWで切り替えて6C19Pのプレート電流を測定できるように改造されていたので、調整は非常に楽であった。
 最初に気が付いたのは、初段のプレート電圧が異常に高く180Vであった。 プレート電流が非常に少ない状態であったが、チェックしたところ球に異常はない。 点検したところ、初段のカソード抵抗が規定よりも大きいものが取り付けられていた。 これを規定値(2.2KΩ)に交換し、デカップリング抵抗を調整したところ、初段プレート電圧は100V程度まで下がって正常となった。
 このアンプにはプレゼンス調整(NFB量調整)用のVRが付属していたが、かなり劣化していたので交換することにした。 2連B型VRの新品はかなり高価なので、2回路6接点のロータリーSWと抵抗を使うことにした。回路図参照。
 ハムバランサー用に100Ωのφ24のVRが取り付けられていたが(未接続)、6.3Vでは消費される電力が定格をオーバーするので、両側直列に100Ω2個を挿入した。

《 まとめ 》

 以下の回路図、測定データは最終調整後のものである。メンテナンスで交換した部品を赤色で表示している。 DF等は測定していないが、容量負荷時の矩形波応答は全く問題はなかった。 しかし、8Ω負荷では最大出力は18W程度で、歪率も余り良くない。MQ−36とほぼ同等の性能である。 16Ω〜32Ω負荷とすればかなりの出力と低歪化が図れると思われる。 50Ω程度のマッチングトランスを使うことを考えた方が良いかも知れない。




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