YAQIN MC−10Tのメンテナンスと測定             平成25年12月24日 

YAQIN MC−10Tアンプ


上部カバーを外した状態(トランスカバーと一体になっている)


手前がPT、奥がOPT
 先日、YAQIN MC−10T(EL−34PPアンプ)の修理を依頼された。
 音が出ないとのことであったがLCHは異常なく、RCHのみ音が出ない状態であった。
 原因は初段12AX7Aのヒーター断線であったので、手持ち球と交換して正常となった。 その際、そのスペックを測定した。以下はそのレポートである。


《 MC−10Tのメーカー発表スペック 》

 使用球    EL−34B×4
         12AX7×2
         12AU7×2
 出 力     52W+52W(8Ω)
 周波数特性  5HZ〜80KHZ(−2dB)
 歪 率     2.0%以下(40W)
 S/N比    85dB以上
 価 格     57,750円

 しかし、このアンプの価格57,750円は驚異である。
 日本製部品で自作しようとすれば出力トランス2個と電源トランスで軽くオーバーする金額である。 某メーカーの高級出力トランスであれば1個でもオーバーする。

《 最大出力 》

 1KHZでも40Wからクリップが始まっていることから見て52W+52Wは過大表示と思われる。
 10KHZでは38W、20KHZでは30Wの最大出力である。20HZでも38W程度が得られているのは立派である。

《 周波数特性 》

 5HZ〜80KHZ(−2dB)はクリアーしている。200KHZ付近以上でピークが発生しているが、概ね良好である。


《 歪率 》

 100HZ、1KHZ、10KHZでは40W2%以下の歪率はクリアーしているが、1W未満はあまり良くない。 ACバランスが少し狂っていると思われるが、この程度であれば問題ない。


《 S/N比 》

 残留雑音は左CH0.6mV、右CH0.4mVでCHコイルが使用されていないにも関わらずかなり優秀である。
 S/N比85dBはクリアーしている。


《 その他 》

 ダンピングファクターは4.5で、UL接続としては標準的な値と思われる。
 電力感度は0.23V程度で最大出力となり、少し高感度すぎると思われる。
 矩形波応答は200KHZ付近のピークが影響してか、容量並列負荷時のリンギングが少し大きい。
 また、100HZではサグが大きいことは10HZにおける減衰が−1.5dBからも読み取れる。
 クロストークは−70dB程度は取れているのでまずまず良好である。


《 まとめ 》

 修理完了後、使用してみたが、私の耳では他の自作アンプとの差は判別できなかった。 しかし、非常にパワフルなアンプであることに違いはない。この価格でこれだけの性能は立派だと思う。
 デザインは好みの問題ではあるが、少々派手な外装である。また、出力段のDCバランスが外から調整できる構造は便利である。
 家庭用として最大出力40Wは過大で、10Wもあれば問題なく使用できると思われる。 3極管接続に改造しても十分な出力が得られ、特性も改善できるのではないだろうか。
 しかし、取り扱い説明書が中国語と英語のみであり、プリント配線で回路図も開示されていないため改造は少し難しいかも知れない。


LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)







inserted by FC2 system