ラックスマンMQ−60C修理   平成17年8月28日 


修理前の外観写真 少々傷ありと言ったところ

 往年の名機「ラックスマンMQ−60C」の修理を依頼された。今から30年前に製造された 50CA10PP25+25W 無帰還アンプである。 かつて憧れていた50CA10を手にするのは初めてであるが、意外と小さいことに驚いた。 しかし、3極管として最後に開発されたものかと思えば、感激もひとしおである。
 上の写真は修理前の外観である。外から見た限りでは少々傷がある程度であったが、裏蓋を取り外して驚いた。 LCHOPTの真下の部分に、「石筍」ならぬ「ピッチ筍」が出来ていた。そして、RCHOPTはリード線が切断されていた。 テスターでチェックしたところ、どちらもP−P間の抵抗値が5KΩを示した。ほぼ断線状態である。 その上、LCHOPTは1次、2次巻線間の絶縁破壊を生じていた。折角の「OY−15−5」であるが2個とも使用不可である。 このアンプの以前の所有者はどのような使い方をしていたのであろうか。負荷を接続しないで過大入力でも加えたのであろうか、かなりの重症である。
 OPTの交換用として手持ちが6個(3種類)あったが、スペース的に取りつけ可能なものは「CRD−8」しかない。 しかも、1次側インピーダンスは8KΩである。16Ω端子に8Ωを接続し、1次インピーダンス4KΩとして使用するしかないようである。 50CA10の標準負荷抵抗はP-P間5KΩであるから、ひずみの点では不利となるが、出力は多目になると思われる。 無理な使い方をしなければ大丈夫であろう。
 ここまできて、50CA10が大丈夫か心配になり、チェックしたが、プレート電圧140V、バイアス電圧−8Vの状態でプレート電流が67、68、70、78mAであったので、この程度ならばバイアス調整で使用出来そうである。 50CA10は非常に高価であるから、一安心である。 もし使用できない場合はEL−34(6CA7)も考えたが、電源トランスに6.3V巻き線が無く、ヒータートランスが必要となる。しかし、その取りつけスペースの確保は大改造を行わねば不可能である。
 ダイオードをチェックしたが異常なし。次に、0.22μFのカップリングコンデンサー(1973年製のOILコンデンサー)6個をチェックしたが、絶縁抵抗が低下していて使用不可。 また、ドライバー段の電圧微調整用可変抵抗器4個のうち3個が焼き切れていた。 5KΩのVRであるが手持ちが無いので、調整後、固定抵抗に置き換えることにした。 バイアス調整用の4個のVRは使用できそうである。OPT2次側にインピーダンス切替用ロータリーSWが設置されているが、こんな小さなもの(接点容量はAC100V0.25A)で大丈夫かと少し不安である。 最大出力時の負荷電流(2A)に耐えられるだろうか。しかし、ラックスが設計したアンプであるから、そのまま使用することにした。
 50CA10のプレート電流は40mA(プレート損失18W)に調整した。球の寿命を考慮すれば、30〜35mAにするべきかもしれない。 なお、プレート電流の測定には、プレートかカソード(負帰還が掛かる)に低抵抗を挿入し、その両端電圧を利用する方法が便利である。
 このアンプは無帰還アンプであるため、歪率は良好とは言えない。しかし、ドライブ段に直線性の良くないことで定評のある12BH7Aが使用されているのは、歪みの打消しを狙った設計ではないだろうか。 1KHZのみ25W時の歪み率がぎりぎり1%を下回っている。25Wを越えると、普通のNFBアンプのように先端を鋭く切り取ったような形ではなく、波形の頭が丸く変化し、35W以上でクリップ波形に変化する。 残留雑音は0.5mVであったが、無帰還アンプとしては優秀である。高域特性は、10KHZ以上はなだらかに減衰しているが、60KHZでおよそ−3dBである。 これまた無帰還アンプとしては優秀である。もちろん、200KHZまでにピークやディップは存在しない。
 ご参考までに、改造後の配線図は下記の通りである。赤○の部分が、交換、あるいは追加した部品である。 OPT2次側に挿入してある1KΩは原設計には無かったものである。

OPT内部から漏れ出たピッチ
一番大きいもので高さは約10mm


取り外した不良品







修理完了した「ラックスマンMQ−60C」










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