ピンケーブルの自作と測定  平成16年12月31日  

自作ピンケーブル 


 最近のオーディオ誌広告等を見ると、ピンケーブル、電源アクセサリー、あるいはスピーカー用の電線等の高騰にはあきれるばかりである。 私のような自作マニアから見れば、ケーブル類に数10万円投資することはとても考えられないことである。 高価なケーブルを製造、あるいは販売する業者、また、それらを推薦する人達により、オーディオマニアが翻弄されているのではないかと思う。
 また、私は「ピュアーオーディオ」とか「ハイエンドオーディオ」等の言葉も好きになれない。 私が趣味とするオーディオとは、まったくの別世界と思えてならないからである。
 ピンケーブルは、半田付けの技術さえあれば、簡単に製作出来る。ぜひ、自作に挑戦してほしい。
 上の写真は、2本で原価720円足らずの自作ピンケーブルであるが、性能的には十分満足できるものと自負している。 材料は、ピンプラグ2組(1組単価262円)、同軸ケーブル(3C2V)3m(単価63円/m)である。 ご参考までに、製作過程と測定データを次に示す。 残念なことに、高価なピンケーブルを所持していないので、それとは比較できないが、CDプレーヤー付属ケーブル(一応名の通った機種)、安物のカセットレコーダー付属ケーブル等と比較した。 とは言っても音を聞き比べたわけではない。私の駄耳では聞き分けることが出来ないため、静電容量と、直流抵抗を測定し、1mに換算したデータを示す。



《製作過程》

(1)


3C−2Vの被覆を切り取った状態。
ナイフで外被に切り込みを入れ、取り除く。カッターナイフ等、あまり切れ味の鋭いものでは、シールド被覆に傷が付くので注意が必要である。 同じ同軸ケーブルであっても、メーカーにより太さに若干の相違が見られるが、外径の細いものはシールドの網目が荒い等、品質があまりよくないと思われる。
(2)
3C−2Vの端末処理後
外側のシールドに細い導線(30芯ビニールコードの銅線数本)を巻き、半田付けを行う。 このとき、手早く行わないと、ポリエチレン絶縁体が溶けてしまうので、注意が必要である。 そのあと、余分のシールドを切断する。
(3)
ピンプラグに半田付け
半田付けを行う前にピンプラグと突き合わせ、芯線、シールド被覆長を確認しておく。 反対側の作業を行う場合は、本体のカバー、スプリング、絶縁チューブ(付属している場合)、赤黒のリング(付属している場合)等をケーブルに順序、向きを確認して差し込んでおく。
(4)
完成
続いて、反対側についても同じように取り付けて、立派なピンケーブルの完成である。製作所要時間は両側で30分程度である。


《測定方法》

 続いて測定を行った。測定方法は下図ような、簡単なブリッジを製作し、静電容量測定には10KHZの信号、直流抵抗測定にはDC6Vを使用した。 デジタルテスターを用いた場合、1Ω以下の値はリード線の直流抵抗の影響を受けて、正確な測定が出来ない。


測定に使用した自作交流ブリッジ(ケーブルの先端は開放状態で測定)
交流mV計の値が最小値を示すVRの値を読み取る。そのときのVRの抵抗値をRo(KΩ)とし、ケーブル長をL(m)すれば、ピンケーブルの静電容量C(PF/m)は
   C=(10000×1/Ro)/L (PF/m) で求められる。




同じく直流ブリッジ(ケーブルの先端は短絡状態にてループ抵抗を測定)
上記と同じくデジタルテスターが最小値(この場合は0mV)となるVRの値を読み取る。 そのときのVRの抵抗値をRo(KΩ)とし、ケーブル長をL(m)すれば、ピンケーブルのループ抵抗R(Ω/m)は
   R=(100×0.5/Ro)/L (Ω/m) で求められる。



《測定結果》

 以上の測定結果をまとめたものが下表である。自作ピンケーブル(1)が今回製作したもので、同(2)は以前に製作したものである。 比較のため、市販オーディオ機器に付属していたピンケーブル2組についても測定した。
 CDP付属のピンケーブルと比較して、3C2Vを使用した自作ピンケーブルは少し静電容量が大きい値を示しているが、直流抵抗は低くなっている。 これは、CDO付属のケーブルの芯線に少し細い銅線が使用されているためと思われる。 さすがに安物のピンケーブルはデータ的には少し悪いが、接続する機器の出力インピーダンスはかなり低いので、高域の減衰は無視してかまわないと思われる。 たとえば出力インピーダンス500Ωの機器に2mのケーブル(90PF/m)を接続した場合でも高域は1.7MHZまで伸びている計算である。 その他の条件を加味しても1MHZ程度であろうか。 アンプやSPの上限周波数よりもはるかに高く、まったく問題とならないデータである。 たとえ、出力インピーダンスが高くて10KΩであっても(現実にはほとんどありえない)88KHZから減衰が始まるだけである。 この場合、高域の減衰よりも誘導雑音増加の方が問題であろう。 最近のオーディオ機器(CDP、あるいはプリアンプ等)の出力インピーダンスは100Ω前後に設定されているので、高域の減衰はまったく無視出来ると思う。
 以上の結果から、ピンケーブルはそれほど気にしなくても良い、よほどの粗悪品でない限り再生音に影響を与えることはないと考える。 しかし、ピンプラグとピンジャックの接触抵抗には気を付ける必要がある。 たまに差込がゆるく、接触が良くないものが見受けられる。その場合、メス側の径を微調整する必要がある。



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