QUADU型アンプのメンテナンス 平成23年3月10日 ![]() ![]() ![]() 前面写真 |
《 はじめに 》 イギリス製でかの有名なビンテージアンプQUADU型のメンテナンスを依頼された。 このアンプは初段と位相反転回路が2本のEF86で構成され、出力段はKT66PP(ビーム管接続、カソード帰還)である。 このアンプの電源は200V仕様であるため、調整するにも100V/200Vのトランス(300VA程度)が必要である。 下の回路図はQUADU型アンプである。電源の平滑コンデンサーが16μFであるが、25μFとなっている回路図も存在する。 ![]() 1台のメインアンプがSWオンと同時に整流管(GZ32)内部で放電し、ヒューズが切れる状態であった。内部電極タッチの模様。 整流管GZ32の入手は難しく、代替品としてヒーター電流1.9AであるGZ34(5AR4)が使用出来る。 とりあえず、手持ちの5AR4を挿入する。5U4Gはヒーター電流が3Aのため使用不可である。 OPT、PT、CHコイルの点検を行ったが、製造からすでに50年近く経過しているにも関わらず、異常はみられない。 SWオンの後、出力管カソードバイアス抵抗180Ωの両端電圧を測定した。真空管が温まるに従って徐々に増加し、23V程度を示した。 その状態で20分ほど放置すると180Ω両端電圧が30Vを超えるまで上昇していた。明らかに異常である。 暗くしてみると片側のKT66プレートが赤熱を始めていた。 その時のグリッド電圧を測定すると+3V程度を示していた。しかも、時間とともにさらに上昇傾向が見られた。 これは交換する以外に方法はない。もう一方は+0.2V程度で変化はない。 1台のB電源電解コンデンサーは初期のものが使用されていた。 WEBで見つけた回路図では25μF450Vであるが、実機では16μFであった。 実測容量は16〜17μFを示していたが、すでに50年近く経過している。もう1台はすでに交換されていたが、350V仕様のものである。 また、出力管カソードバイパスコンデンサーも絶縁が低下していた。結局、電解コンデンサーはすべて交換することにした。 カソード抵抗は180Ω3Wであるが、1台は190Ω程度に増加し、温度上昇と共にさらに増加する状態であった。 カソード電流値144mAから計算した容量は3.73Wであり、3Wでは明らかに不足している。 なお、カップリングコンデンサーはすでにオレンジドロップに交換され、絶縁状態も良好であった。 不良のKT66を除いた残り3本をバルブチェッカーで測定したところ、幸いなことに、元とは違う組み合わせでマッチングが取れたペアーが見つかった。 《 修理内容 》
ここまで作業を実施した後、周波数特性、歪率、矩形波応答などの測定データ取って見た。以下がそのデータである。 歪率は問題ないが、周波数特性、矩形波応答を見れば、明らかに高域補償不足と思われる。と言うか、回路上では何も対策が施されていない。 しかし、この特性がQUADアンプの特徴かもしれないので、大幅な変更は差し控えることにする。 ![]() ![]() ![]() |
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《 改造後の測定結果 》 高域補償回路として負帰還抵抗並列に1000PF、EF86両プレート間に15PFと22KΩを挿入した。(改造後の回路図参照) 以下は改造後の周波数特性、歪率、矩形波応答である。 100HZ、1KHZの歪率にはほとんど変化が無かったので10KHZのみ測定した。 10KHZの歪率は若干悪化したが、矩形波応答はかなり改善された。 また、周波数特性の凸凹が少し小さくなり、0dB以上に上昇するピークはなくなった。 ![]() ![]() |
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![]() ![]() 内部配線 |
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