オーディオ機器の漏洩電流測定      平成17年7月31日        

《 漏洩電流測定 》

 オーディオ機器にかかわらず、AC電源を使用する機器に大地アースを接続すれば、配線、トランス等の分布 (浮遊)容量(ほとんどがトランス巻線と鉄心間の静電容量)の影響で微弱な漏洩電流が大地へ流れる。 この現象は異常ではなく、通常発生している現象である。そこで、オーディオ機器に大地アースを接続した場合、 どの程度の電流が流れるか測定した。測定にはJIS T1002-1992に規定されている漏洩電流測定器(第1− 1図)を、一部簡略化した第1−2図の装置を製作して使用した。1KΩ抵抗の両端電圧をmV単位で測定すれ ば、そのままμAに読み替えることが出来る。
 なお、デジタルテスター交流レンジでは、リード線を短絡しても指示値は0Vとならない。したがって、10mV以 下の値は信頼できないが、それ以上であれば、誤差はかなり多いが、何とか測定可能と思う。
 それぞれの機器について測定を実施した結果を第1表に示す。


 上の第1表で「正」は漏洩電流の少ない極性での測定値を表している。すべて「正」接続とした場合、装置 全体からの漏洩電流は41μAであるが、すべて「逆」に接続すれば115μAと3倍近い値となる。LCHを すべて「正」に、RCHをすべて「逆」に接続した場合、223μAへと増加するが、この原因は以下の通りである。
 私は、AC電源の電圧降下の影響を最小限に留めるため、単相3線式にてオーディオルームまで配線し、 負荷を半分にしてR相とS相が均等になるように接続している。(第2図参照)そのため、システム全体から 大地へ流れる漏洩電流は、RCH、LCHからの電流は逆位相となって打ち消される。したがって、LCHとRCH からの漏洩電流の差が大きいと打ち消される部分が少なくなり、結果的に大きくなる。ただし、同じコンセン トから複数の機器へ電源を供給している場合は、1台のみ電源の極性を変えても、漏洩電流の位相は変わ らないので、常に和となり、打ち消されることはない。
 なお、CDPはAC電源の極性を替えてもほとんど変化を生じていないが、その他の機器はかなり変化 している。測定した機器はCDP以外はすべて自作モノラルSEPPOTLアンプである。CDPで変化が ほとんど無いということはメーカーは何か対策を施しているのであろうか。  いずれにしても、アースを接続しなければ漏洩電流は流れないのであるが、ACプラグの極性は漏洩電流 の少ない側にすべて合せた方が、気休め程度ではあるが安心である。




《 各機器間の漏洩電流測定 》

 次に、各機器間の漏洩電流を第3図の方法で測定した。その測定を第2表、第3表に示す。
 第2表は、全ての機器を漏洩電流値の小さい側の極性に接続して測定したデータを示す。第1表の「正」 の接続である。第3表は、相手側の極性を「逆」にした場合の測定データを示す。全体でみれば、すべて 極性を合わせた方が機器間の漏洩電流は少なくなっている。R相からS相へ流れる漏洩電流は意外と少ない。





《 まとめ 》

 以上の測定結果から、アンバランス接続の場合、各機器間には10〜50μAの漏洩電流が流れている ことになる。この影響はどの程度であろうか。ピンケーブルのシールド側の直流抵抗値は0.04Ω程度で あることから、漏洩電流を50μAと仮定すれば機器間交流電位差(雑音電圧)として

  50μA×0.04Ω=2μV

程度が発生することになる。1Vに対して−114dBであるが、この程度の雑音はまったく感知できない レベルであり、問題ではない。しかし、これはケーブルがしっかりと接続されている場合であり、ジャッグと プラグ間の接触抵抗が大きくなっていれば感知可能なレベルとなることがある。特に、接触抵抗値が変動 していると良くない。接触不良が発生しないように気をつけねばならない。

 次に、オーディオ機器へのアースの問題であるが、マニアの間でも大地アースの接続はまちまちである。 一般に、日本製のオーディオ機器の仕様では、アースを接続しない(接続端子すらない)ものが多いが、 外国製の機器は法律の規制もあり、電源に3Pコンセントを必要とするものが多い。(輸入段階でプラグの み2Pに交換されている場合もある。)
 信号ラインがバランス接続であれば、それらの機器に大地アースを接続しても問題はない。しかし、アン バランス接続の場合は大地アースの接続場所、漏洩電流の大きさ等により、信号ラインに混入する雑音 が増加する場合があるので注意が必要である。また、複数の機器にアースを接続した場合も、アースライ ンを経由してループが形成され、雑音が増加することがあるが、信号ラインがバランス接続であれば問題 はない。
   大掛かりな機器の場合は大地アースに流れる漏洩電流が大きくなり、安全のためにも大地アースが必要 となる場合もあるが、家庭用オーディオ機器からの漏洩電流値は小さく、一般的に感電防止の目的以外で 大地アースを接続する必要はないと思われる。


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